こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

好きか嫌いかくらいは言ってもいいよね?@ 宝塚月組『BADDY-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』

2/25(日)15:00〜 宝塚大劇場

(写真は宝塚歌劇団ホームページより)
上田久美子先生の初めてのショー作品ということで、ファンの間ではじまる前から話題ではありました。
そして初日に私のTwitter上には概ね好意的な感想があがってまいりました。

ところで、その昔、児玉明子さんという演出家が「仮面の男」という作品を宝塚で上演したとき、大問題になりました。
観客のほとんどが嫌悪感を示し、チケットが売れず、東京宝塚劇場のときには別の演出家先生が手直しをする、という事態が起こったのです。
そして映像に残っているのも東京宝塚劇場版。
宝塚大劇場で上演されたものはなかったものとして封印されています。
でも私は宝塚大劇場版がすごく面白くて、こんな感想すら残しています。

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たまたま東京宝塚劇場版も見ているのですが、つまんなくしちゃったなあと思ったものです。

なんでこんな昔のことを持ち出したかというと、少し前に、大劇場で「仮面の男」を見て面白いと思ったけどそれを口に出すのもはばかられる雰囲気だった、というツイートを拝見したのです。
みんなが良くないと怒っているものに対して、いい、すら言えないということはめったにないとは思いますが、その反対はよくあります。

面白いと思っている人もたくさんいるのだから、つまらないと思っても劇場出るまでは口に出さないのがマナーだとも言われます。
そうかもしれません。

でも「黒蜥蜴」のアフタートークショーで成河さんが「つまらなければ席を立ったっていいんですよ」みたいなことをおっしゃっていて、すごく腑に落ちました。
(私が見に行ったのがとある会社の貸切公演でして、普段宝塚をご覧にならない方も多かったらしく、実際、途中で席を立たれる方もいらっしゃいました)
お金と時間を使ってその作品を見に行く限り、少なくとも私たちは好きか嫌いかくらいは言ってもいいんじゃないか、と。

もちろんせっかくお金を払って見ているのだから、楽しんだ方が勝ちというのもよーく分かるし、私だって費やした時間とお金分は楽しみたいです。
だけど演出家や作品との相性とかはあるんですよね。

長々とこういうことを書いたのは、今、上田久美子先生は多くの宝塚ファンから支持を得ていて、だから逆に上田久美子先生作品を「好きじゃない」と言いにくいムードがあるのです。
しかしながら私は「星逢一夜」がどうにも苦手で、なぜみんながそんなに泣いたりいいと言ったりするのか、理解できずにとまどってしまいました。

とは言え、今回はショー。
新しいものが見れるかもしれない、と若干の期待を抱いていったのですが、ダメだったのです。

ショーと言っても今回はストーリー仕立てだったので、「悪人は月に流刑にして、清らかで平和な街だったTAKARAZUKA Cityに、月からBaddyがやってきてかき乱す」という大枠の物語がありました。
これ自体は「清らかで正しいだけの世の中ってどうなの?悪いものと決めつけて排除していく世の中でいいの?」というようなメッセージを伝えるもので、まあそういうショーもあってもいいんじゃないかとは思うんです。

ただ私がショーに求めるものとは違っただけなんです。
だから本当に少数派だとは思うのですが、このショー合わないと思った方がこれを読んで、こんなこと思ってるの自分だけじゃなかった、と安心してもらえたらいいなと思っています。
逆に大多数のこのショーが楽しかった!って方は、その楽しい思い出を胸に、どうかこのページを閉じてくださいませ。

私はショーに「物語」はいりません。
あってもいいけど、音楽と踊りと歌をただ楽しむことを邪魔するものはいらないのです。
何も考えず、ただそこにある音楽と踊りと歌を感じたいのです。
その踊りに、その歌に説明はいらない。
自由に感じて、楽しみたい。

そしてそれが出来るショーが好きなのです。

そう思うとノバ・ボサ・ノバは素晴らしかった。
ストーリーはあったけれど、言葉で説明されることは少なく、さらにラストはストーリーとは関係かく、ひたすらリズムを刻み、そこに踊りと歌を乗せて、DNAレベルで盛り上がらせていく、あの感じ。

衣装やセットがダサいなと思ったのは他のショーも対して変わらないので許容範囲内として、Baddyにはそういう意味なく興奮させる音楽や歌や踊りがなかったんです。
そう思うと前の「Super Voyager!」は少なくとも「海の見える街」のダンスシーンだけは、ダンスそのものを堪能させてくれたのですよね。
そういうシーンが一つでもあること、これが私のショーの最低条件なんだなと思いました。

近頃の宝塚ショーに、毎回燕尾服の群舞もデュエットダンスもあることが不満だったりもしていたのですが、今回に限っては、あのテンプレートだけど何も考えないで格好良さや美しさに酔えることが良かったんだなと思いました。
そこにまで意味を付けられるとかなりしんどかったです。

あとは役があるので、常にその設定なのがつまらい。
ショーはスターさんたちの色んな面を見たいんです。
特に美弥るりかさんが、お芝居の方でも長髪の美男子みたいな役だったのに、ショーでもほぼほぼ同じイメージで、違う面が見れなかったのが残念すぎる
もっとピュアで可愛い感じとか、スマートで紳士な感じとかも見たかったです。
そして、何より愛希れいかさんの圧巻のダンスシーンを見たかった。一度でいいからブライアント先生の振り付けで踊るちゃぴ(愛希れいかさん)が見たかった。もうちゃぴバウショーを期待するしかないんでしょうか

ところで、フィナーレのシャンシャンが話題になっていて、ここまで読んでくださる方もそういないだろうし、ネタバレしてもいいかなと思うんですけど、まだ東京公演があるので一応伏せておきますね。
あのシャンシャンのアイデアは面白いです。
で、あのアイデアを相談された小道具さんとかが、必死に考えてあれを作り上げたんだろうなあと思うと、ちょっと胸が熱くなりました