こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

業とトラウマに飲み込まれる@ミュージカルNINE

12/5(土)・12(土)17:00~ 梅田芸術劇場

f:id:morton:20201221145840j:image

脚本アーサー・コピット
作詞・作曲モーリー・イェストン
演出藤田俊太郎

キャスト
グイド 城田 優
ルイザ 咲妃みゆ
クラウディア すみれ
カルラ 土井ケイト
サラギーナ 屋比久知奈
ネクロフォラス エリアンナ
スパのマリア 原田 薫
春野寿美礼
ラ・フルール 前田美波里
 
アンサンブル DAZZLE

原作はこちら

 

8 1/2 (字幕版)

8 1/2 (字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 フェデリコ・フェリーニ監督の自叙伝的映画らしいのですが、残念ながら未見です。

しかしながら、これを元にしたミュージカルを15年以上前に見たことがありました。

演出はデヴィット・ルヴォー氏。

シンプルで贅沢なセットとカラーレスで豪華な衣装は今でも目に焼き付いています。

しかしながら内容はあまり理解できず、難しかったというのが当時の感想でした。

その後ミュージカル映画化されたときは、そのエンターテインメントぶりに逆に度肝を抜かれたものです。

(ちなみに今回気づいたのですが、映画にある「シネマ・イタリアーノ」はこの舞台版には登場しません。)

stok0101.hatenablog.com

 

NINE (字幕版)

NINE (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 さて、そんな作品を新進気鋭の演出家が演出するということで、今度はどんな舞台が見られるのかと楽しみでした。

 

あらすじ、なのですけれど、今回2回この作品を見て、あらすじさえも演出によって異なるのだなと思いました。

ルヴォー版が「苦悩する男の現実と妄想の曖昧さ」ならば、映画版は「ダメ男を取り巻く魅力的な女性たち」の話しでした。

そして今回はタイトルにつけたように「業とトラウマに飲み込まれる男」の話しでした。

 

そんなラテン男を城田優が好演。

今の日本ミュージカル界で城田優以上にラテン男の雰囲気を漂わせながらグイドを演じられる役者はいないと思います。

何より途中オペラっぽい歌い方をするシーンがあるのですが、そこの声の響き方が本当にいいんです。胸骨で響かせてそのまま声帯を通って伸びてくるような歌声にうっとり。本当、ずるいです。

その他キャストもインターナショナル的要素を持った役者が多く、言語もイタリア語、英語、日本語とごちゃまぜで上演されました。

その訳を「映画監督がカメラを回している」という設定を活かして、スクリーンに映し出すという手法を取ったのは大変面白い部分だったと思います。

またセットも、ローマのコロセウム的なイメージで大枠を組んであり、それをダンスアンサンブルのDAZZLEが回していたり、ローマの街の彫刻的にその間に入り込んでいたりしたのも、さすがでした。

ただやはり訳が出ると役者よりも文字を見てしまうし、文字を見ると役者がそのセリフを言っている途中なのに、最後まで何を言うかわかってしまうというデメリットも大きかったことは否めないと思います。

言語のごちゃまぜ感はフェリーニの映画っぽい、というような感想を見かけたので、そこを狙ったものだとは思うのですが、それならばいっそ最低限の字幕、少なくとも「カメラの向こうにあるスクリーン」が意味をなしているシーンのみでよかったのでは、と個人的には感じました。原語のままでも感じ取れるものはあると思うし、それが逆に歌と踊りが一体化したミュージカルの魅力でもあると思うのです。

女性キャストはそれぞれに魅力的でしたが、個人的には衣装にもう一工夫あるといいなと思ってしまいました。

特にグイドの妻・ルイザ。もともと小柄で華やかなタイプではない咲妃みゆちゃんが、Aラインのフード付きコートを着て、城田くんの隣に並ぶとまるで子どものように見えてしまったのが残念でした。うまいんですけどね、歌も芝居も抜群に。

逆にセリフはたどたどしかったのですが、すみれちゃんが、やはりスタイル抜群で城田くんの隣に立っても見劣りせず「ミューズ感」を出してきたのは正解だと思います。

リリアン・ラ・フルールの前田美波里さんもさすが、なのですが、ショーシーンに羽扇が登場したらもっとよかったのになあと思わずにはいられませんでした。

羽扇のあのふわふわっとした存在が、香りを、レビューの香りを運んでくれると感じるのです。そしてそのレビューの香りは、グイドの混乱をさらにかき乱すものとして必要だったのではないかなと。

むしろそういうメイン女性キャストよりも、ネクロフォラスのエリアンナさんと、スパのマリア 原田 薫さんの存在感が際立っていたのが面白く不思議でした。

そう思うと全体に凝っているのにヴィジュアル面で惜しいな、という印象で、いかに映画版が役者も含めてヴィジュアルとして素晴らしく整えられていたか、ルヴォー版がそぎ落とした美しいものを見せていたかを実感。

 

とはいえ、紗幕がビニール的な素材になっていて、舞台セットとカーテンに反射する劇場が溶け合ったものが映し出されたオープン前の演出は素晴らしく美しかったですし、各劇場によって違う景色なんだろうなと思うと、それぞれの劇場でみたいなと思ってしまいました。

 

いろいろと思うことがありましたが、今回の演出で、この「NINE」という作品への理解と面白みが増えたことは確かです。

なので、ぜひとも城田くんには10年後、ルヴォー版の「NINE」を再演してほしいな、と思います。グイドを演じるには年齢も今よりももっと合っているはず。

そしてそのとき、今回と比べるためにもDVDは予約しました笑

ミュージカル『NINE』2020年公演|梅田芸術劇場

1階席と2階席で見たのですが、映像で見るとどんな感じか、またそれも楽しみです。