こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

アラフィフ負け犬がビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

アナ雪にまぎれたメリー・ポピンズ@ウォルト・ディズニーの約束

本日のトニー賞はやはりミュージカル部門はみごとな「ハミルトン」旋風が巻き起こってましたね。
残念ながら私はWOWWOW見れないので、親友が字幕付きの録画を見せてくれるのを静かに待ちたいと思います
待ってます!(←私信)

ところで、ミュージカルとか見に行かれる皆さんの「ミュージカル」の入り口ってなんでしたか?
私はミュージカル映画でした。
もちろん「サウンド・オブ・ミュージック」も好きでした。
けれど、憑りつかれたように何度も見返したのはメリー・ポピンズでした。

大学生の頃、レンタルビデオ屋(ビデオです!VHSです!DVDでもブルーレイでもありません!)でアルバイトしていた時、同じビデオを何度も借りたいと駄々をこねる子供に、違うものを見なさいと怒る母親、という光景を何度も見たんですけど、あれを見るたびに、そんなこと言わなかったわが母の寛容さに感謝します。

だって好きなものは好きなんですよ!
何度見たって楽しいんですよ!
鳥恐怖のため、2ペンスを鳩に(Feed the Birds (Tuppence a Bag))で顔を背けたって、好きなものは好きなのです。
(そりゃあこのシーンがなかったら個人的にはもっと心軽く見られますが、この曲は名曲なんですよねえ)

そんなわけで、子供の頃の私はやたらと「メリー・ポピンズ」を見ていた気がします。
その割に原作本に手を出さなかったというか、ちょっと読んでやめたのは、この映画が好きすぎるせいだったからと信じて疑っておりません、ええ。

だから、「ウォルト・ディズニーの約束」という映画が「メリー・ポピンズ」をどうやって映画化したか、を描いている、と聞いて、これは「私が見ずに誰が見る!」と思って見に行きました。期待を上回る、すごく良い映画でした。

 

けれど、残念ながら、公開当時、同じくディズニーのアナと雪の女王旋風が、それこそエルサの吹雪のごとく、巻き起こっておりました。

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アナと雪の女王」ももちろん見に行きましたとも!
だって、我らがイディナ・メンゼルが声を演じておられるんですよ。
さらにそのパワフルな歌声を披露なさっているんですよ。
そして、作曲は大好きな「アベニューQ」の作詞・作曲家のロバート・ロペスなんですよ!

Avenue Q
RCA Victor Broadway
RCA Victor Broadway


ブロードウェイ・ミュージカルファン的に行かざるをえないじゃないですか。
私は「姉妹」の「姉」ですからね、エルサに共感し、アナがかわゆーて、イディナの歌声とともに堪能しました。

だけど、その陰で「ウォルト・ディズニーの約束」という映画が注目を浴びず、消え去られていったのは残念です。
邦題は「ウォルト・ディズニーの約束」となっていますが、原題は「Saving Mr.Banks」です。この原題が映画の全てを物語っています。

誰だ、ミスター・バンクスって?
と思われた方、まず、いますぐ「メリー・ポピンズ」を見てください!

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メリー・ポピンズがナニー(乳母兼家庭教師)をすることになった家が「バンクス家」。
その「バンクス家」のがっちがちの銀行マンで家長がミスター・バンクスです。
バンクス氏は子供に関心がありません。
銀行の仕事が命です。
さらに母親も「女性選挙権獲得」の会で頑張っていて、
子供たちはほおっておかれた存在です。
そんな子供たちの前に空から現れるのが「メリー・ポピンズ」です。
彼女はあらゆるものを吹き飛ばして、バンクス氏を解放し、幸せな家庭を取り戻して旅立つのです。

この物語の中で「バンクス氏を解放する」ことが、原作者のトラヴァースにとって、「メリー・ポピンズ」を生み出した原動力だった、ことをこの「ウォルト・ディズニーの約束」は描いています。

物語はディズニーがトラヴァースの「メリー・ポピンズ」を映画化したい、と依頼を何度もかけているところからはじまります。
でもトラヴァースにとって「メリー・ポピンズ」は、大切な存在、ディズニーになんて渡せないのです。
なぜそんなに「メリー・ポピンズ」が大切なのか、それを、映画化に向かって必死に口説くディズニーとの経過の中でトラヴァースの少女時代を振り返りながら映画は描き出します。
そこには、哀しくて、辛くて、疲れ果てた、彼女の心がありました。
バンクス氏と違って、トラヴァースの父親は、いつまでも少年のような子供に優しい父親です。
けれども、社会には適合できなくて、彼は苦しみ続けます。
父親のことを愛している少女のトラヴァースは、そんな父親を見て、また苦しむのです。
だから、彼女は「メリー・ポピンズ」を必要としたのです。
自分や家庭を救うために、そして、何より父親を救うために。

だから、彼女がディズニーに対して拒絶を繰り返すのが良く分かります。
でも、ディズニーも必死です。
ディズニーの娘たちが「メリー・ポピンズ」ファンであったこともあるけれど、
エンターティナーとして、「メリー・ポピンズ」の持っている可能性にも確信を抱いていたことでしょう。

あの手この手でトラヴァースを口説くシーンが大変面白いです。
特にトラヴァースのために用意した部屋に、ボンとでっかいミッキーマウスのぬいぐるみが鎮座してお出迎えしている様子が傑作でした。
ディズニーの子供向けの甘い戦法が嫌いだという、今や頭ガチガチのおばさんのトラヴァースに向かって、この歓待方法。
わざとなのか、天然なのか分かりません。
嫌悪感露わにミッキーマウスを追いやって、反省させるトラヴァースに思わず笑ってしまいました。
今や世界のスーパースター、ミッキーマウスに対して、こんな嫌悪感を見せるシーンを見ることなんて滅多にないですもん。

でも、ディズニーにとっても「ミッキーマウス」は大切な存在で、少しずつトラヴァースの心を和らげていきます。
それはほんのちょっとだけ。結局ディズニーの「メリー・ポピンズ」はトラヴァースの納得のいくものにはなり得ないのですが、それでも、少なくとも、ディズニーは映画の中でバンクス氏を救いました。
子供の私を虜にした、大好きな曲の数々、見事な「チムチムチェリー」のダンスシーンにもトラヴァースは心動かされません。でも、トラヴァースが生み出して、ディズニーが子供のために作ったこの映画が、ミュージカルの原体験な人たちが、少なからず私はいると思います。これで、ミュージカルが大好きになって人たちにとって、この映画はトラヴァースにもディズニーにも心から感謝したい気持ちになるものでした。

そして、この映画を見てから、もう一度「メリー・ポピンズ」を見ると、バンクス氏の銀行をやめるシーンと「凧をあげよう(Let's Go Fly a Kite)」が、もう様々な思いが絡みあい襲いかかってきて、涙をとめられません。バンクス氏は救われたのです。
現実は現実で、魔法はありません。
だからこそ、物語の中で、バンクス氏を救いたかったのです。
そうすることで、少女のトラヴァースも救われたのだと思います。

物語も、映画も、ミュージカルも全部なくても何も困らないものです。
生きる上で不可欠なものではありません。
けれども、こうやって、誰かの心を救えることがあるのです。
書くことによって、作ることによって、そして、それを受け取ることによって。

メリー・ポピンズ」の映画が作られたのが1964年。
アカデミー賞のいくつかの賞を受賞したのが1965年。
「ミスター・バンクス」と言っても、「メリー・ポピンズ」のことにつながらないくらいの時が過ぎたので、「ウォルト・ディズニーの約束」という邦題がついたのは仕方ないことだと思います。
でも、原題が「Saving Mr.Banks」ということは、少なくともアメリカではまだ「バンクス氏」と「メリー・ポピンズ」は名が知られているということでしょうか。
まあ、舞台版ミュージカルが上演された関係もあるかとも思いますが。
ただ、こんなに「アナ雪」に押されてしまうくらいなら、もうコアな「メリー・ポピンズ」ファンに向けて、メリー・ポピンズとミスター・バンクス」くらいの邦題にしておいたら良かったのに、と思います。

ということで、子供のころ「メリー・ポピンズ」が大好きだった、今、大人のアナタ、
ぜひ見てください。

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そして、「メリー・ポピンズ」を見ていないミュージカルファンの方、「メリー・ポピンズ」と合わせて良かったら「Saving Mr.Banks」もぜひ見てください。
ディズニーミュージカルってなんか合わないのよね、と仰る方はなんなら「Saving Mr.Banks」の方だけでも見てください。
ミュージカルではなく、ヒューマンドラマなのでご安心ください。
「何かを作りだす」というその意味を、作られたものを見てあーだこーだ言って楽しませてもらっている立場として、見る意義があると思うのです。