こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

彼の「罪」はなんだったのか@イミテーション・ゲーム-エニグマと天才数学者の秘密

まず、言い訳をします。
私はあんまり映画を見ません。

そんなわけで、トニー賞はここ数年特に、地上波以外の電波を受信できる友人に
「え、私のために録画して見せてくれるよね、そうだよね」
と友情を確認しあって、見せてもらっています。
決して脅していません。もちろんです。
もつべきものは同じ趣味で、かつ地上波以外の電波を受信できる友人です。
快く見せてくれる友人、本当に毎年ありがとう!
それやっぱり、脅してない?と思われた方、誤解です。

でも、アカデミー賞はスルーしています。
アカデミー賞トニー賞とは比較にならないくらいビッグイベントですので、
スルーしていても、最低限の情報は入ってきます。
でも、脚本賞をとった人は知りませんでした。しかも昨年の脚本賞となればなおさらです。
さらに、その方がこんなスピーチをされていたとは全く知りませんでした。
「人と違っていると感じていて、
自分にフィットする場所がどこにもないと思っている子供たちのために捧げます。
変わり者のままでいてください、違ったままでいてください」

意訳しているので、全文は下記↓よりどうぞ。
http://mashable.com/2015/02/23/graham-moore-oscars-speech/#7ZO69lOMNEqh
そして、英語が堪能な方、どうぞ私にこの「I promise you do」のニュアンスを教えてください。

そんな心を打ちまくってくるスピーチすら知らなかった私。
もちろん、この映画も知りませんでした。
なんなら、カンバーバッチもアラン・チューリングもはじめて知りました。

そんな私がなぜこの映画をDVD借りて見たか。
下記のコラムを偶然読んだからです。
田中泰延エンタメ新党
http://www.machikado-creative.jp/planning/5742/
この田中泰延さんのコラムが、たいそう面白く、見てみたくなったのです。

ナチスドイツの暗号マシーン「エニグマ」を解読する機械を開発し、
第二次世界大戦終戦に貢献した天才数学者アラン・チューリングの物語を。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(字幕版)
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上記リンクのコラムでも

「この映画は、あまりにも構成が緊密で、多くのテーマを詰め込みすぎた感もあります。
●天才の生涯●アスペルガー的な人間と世界との関わり●裏から見た戦争の真実●暗号解読ミステリー●マシーン萌え●戦隊萌え●スパイもの●女性蔑視●マイノリティー迫害●国家と個人●人間と機械●そして、一途な愛とは…」

と述べられているように、
要素がたくさんありすぎて、
私の脳みそは完全に容量をオーバーしました。
見にくいとか難しいとかはなかったです。
ただ、私がこの映画から「受信した」ものがありすぎたのです。

まず、アランが婚約者であり、
天才的な数学者でもあるジューンに、
同性愛者であることを告白すると、
「だから何?あなたは普通の夫になれない。
私もパイを焼いて夫の帰りを待つような妻になれない。」
と言い放つジューンの格好良さにしびれます。

もちろん、「エニグマ」の解読に成功して、
喜びを分かちあう仲間たちの姿にもうるっとさせられます。
その後のアランの「戦争」への対応が冷静沈着すぎて、怖くもなります。
一方で、アランの「クリストファー」への思いにも、そうか、そういうことなのか、と
泣きたくなるぐらいの気持ちにもなります。

けれども、一番、「え!」と言ってしまったのは、
ラストでアランが自殺をした、と流れる文章。

そうです。コラムで読んでいた内容をすっかり忘れていたのです。
同性愛が罪だった時代。
同性愛行為を行ったとして、アランは逮捕され、
投獄かホルモン投与かを選択させられ、
ホルモン投与を選ぶのです。
きっとアランは「クリストファー」と離れたくなかったのでしょう。
なのに、自殺してしまう。
どんなホルモン投与が行われたのでしょう。
そして、同時に湧きあがる「同性愛」への疑問。

だって、アランは「仕事」を優秀に果たしました。
戦争を終結にみちびいたのです。
アランが「同性愛者」であることが誰かに迷惑かけたでしょうか?

同性愛が非難されるときに、
「子孫」を残さないことがあげられますが、
アランのおかげで、多くの人が「子孫」を残せる環境に身を置くことができるようになったのです。
しかも、アランは、大学教授で、子供へ「知識」を与えているのです。
もう十分じゃないですか。
なぜ、アランは罰せられなきゃいけなかったのでしょう。
ましてや、死ななきゃ、いや、殺されなければいけなかったのでしょう。

私は昔から、個々のセクシュアリティーが
「仕事をする」上
どうして差別されるのか、ずっと疑問でした。
そして、アランの人生はその疑問を再び大きく私に投げかけてくるのです。
それが、哀しくてやりきれない。
人と違っていても、幸せに生きられる世の中。
今がそれに少しでも近づいていることを願ってやみません。

以下は個人的に気になったどうでもいい感想です。

ロンドンの地下鉄はもともと防空壕だったから、深いんだ(都営大江戸線六本木駅レベル)とは
知ってはいましたが、
本当に「防空壕」として使われている様子を見るのは初めてでした。
作り物であれ、一聞は一見にしかず、ですね。

首相としてチャーチルの名前が出てきて、
第2次世界大戦中ということで、
思わず宝塚月組エドワード8世」と映画「英国王のスピーチ」を思い出しました。
特に宝塚月組エドワード8世」のガイの設定が、うまいなと改めて。
しかし、あんな時代からエリザベス2世は生きていらっしゃるのか。
女王陛下の瞳には今がどのように映っているのかも気になるところです。