こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

りんごの香りのファムファタール@宝塚雪組「凱旋門」「Gato Bonito!!」

6/30(土)宝塚大劇場 15:00〜
ラヴィック 轟 悠
ボリス・モロゾフ 望海 風斗
ジョアン・マヅー 真彩 希帆
アンリ・ジャルダン 彩風 咲奈
マルクス・マイヤー 煌羽 レオ
ハイメ・アルヴァレス 朝美 絢

脚本/柴田 侑宏 演出・振付/謝 珠栄


(写真は宝塚歌劇団ホームページより)
1989年宝塚初観劇のおとい〜ぬです。
しかしながら、そこからずっと宝塚を見続けたかというとそういうわけではなくて、1993年くらいまではまあコンスタントに、1994年は受験勉強で自粛しているうちに1995年の震災があったり、大学生になってアルバイトで小金を貯めてロンドンやニューヨークでミュージカルを見るようになったりして、だんだんと宝塚から足が遠のいていったのです。
それでもまあ、輸入ミュージカル(エリザベート、ファントム)が上演されたときとかは見に行ったりしていたのですが、それでもザクッと10年くらいほぼ見ていない時期があります。
そんなわけで初演の「凱旋門」も見ていないのですが、あえて初演映像などを見ずに真っ白な状態で見に行きました。

凱旋門とはこんな話しでした。
第二次世界大戦前のパリ。反ナチスを疑われ、ひどい仕打ちを受けて心に傷を負い、ドイツナチス政権から亡命してきたラヴィックは、同じような亡命者ばかりが集う宿に住みながら、モグリの医者として働いています。
ある晩、今にもセーヌ川に飛び込みそうなイタリアからの旅行者ジョアンと出会い、いろいろ世話をしてあげているうちに恋に落ちます。
ジョアンはラヴィックの友人ボリスが働く劇場で歌姫として活躍しはじめ、戦争の足音が聞こえる暗いムードにあきあきしていて、リゾート地への旅行をラヴィックに提案します。ラヴィックは彼女の望みを叶えるために、法外な値段で手術を請け負い、二人で贅沢なリゾート地へ。
そこでジョアンは俳優のアンリと出会い、女優業に興味を持ちます。
パリへ帰ってまたモグリの医者として働くラヴィック。運命の因果かジョアンとの旅費を捻出するために手術した相手に亡命者とばれて強制送還されてしまいます。
いろいろあって再びパリに戻ったのは3ヶ月後。再会したジョアンは女優になり、アンリの庇護のもと贅沢な暮らしをしていました。同じ時期、ドイツでひどい仕打ちをした相手を見つけたラヴィックは…。


感想。
いいっ!!

ふるーいフランス映画でも見ているような感覚になりました。
それこそ芝居の中で何度も登場する「カルヴァドス」の香りがするような舞台で、ああ宝塚見たなー、としみじみ。
そしてこの話しをすんなり面白く見れた理由の1番は、トップ娘役・真彩希帆ちゃんのファムファタールっぷりです。
ファムファタールと言っても美貌で男を翻弄するタイプじゃなくて、それこそ「りんごの香り」がするタイプ。
若々しく純粋でどこか放っておけなくて、でも情熱的。
好き、好き、好きとあんなに熱烈に告げられたら堕ちる、私でも堕ちる
もちろん第二次世界大戦前で、ナチスムッソリーニフランコ政権からパリへ逃げてきた亡命者たちの寄る辺なさ、辛さ、その中で起こる裏切りや復讐も面白いです。
その中にはイタリアからの亡命者がいたりもするのに、同じイタリア人のジョアンは全くそういうことを気にしていないのですよね。
そうジョアンは恋に生き、贅沢に生き、人生を楽しみたい、そういう女なのです。
政治とか小難しそうなことには無関心だったでしょう。
いろいろな亡命者にそれぞれのエピソードを細かくつけてあるところも、柴田先生らしい脚本だなあと思ったものですが、一方でジョアンについては、最初のシーンからナゾだらけで一切の過去を明かしません。
パリに一緒に来た男とは誰なのか。どうして彼は死んだのか。イタリアに家族はいるのか、そういったジョアンのバックグラウンドは一切語られません。
だから演じるには難しい役じゃないかと思うのですが、真彩ちゃんは見事にファムファタールとして、ヒロインとして舞台の中心にいました。

謝先生の演出や振付、セットもステキでよく出来たいい宝塚歌劇でした。
ただ残念だったのはやっぱり轟悠主演というところでしょうか。
いや、私はそれこそ轟さんが初新人公演主演した頃から見ているので思入れがあるし、大好きだし、ピッタリの役だと思います。初演当時なら。
でもあれから18年経ちました。当時、EUとして統一していこうとしていた過程にあったヨーロッパも、今や足並みがバラつきはじめています。
それだけ時が経ったということは、どんなに轟さんが形状記憶された美貌でも、本当に若い真彩ちゃんが横に立つと、年の差が明らかなのです。
だからどうしても、いい歳して若い娘に夢中になったおじさん感が拭えないのです。

いや、いいんですよ、「ライムライト」や「グランドホテル」のように年の差を描いた恋であれば。
でも設定的に20歳以上も離れている恋ではないことは確か。
だから残念ながらラヴィックにちっとも同情できないんですよね。
あんな淋しがりやの女・ジョアンが、一人で生きていけるわけないことは明らかじゃないですか。
そこにジェラシーを抱くとか、いやあいいオトナなんだからその辺は余裕見せてよ、と思っちゃうんですよ。
だから本当、トップコンビで見たかったなあと改めて思います。望海風斗(だいもん)の演じるラヴィックだって魅力的だったはず。
だいもんファンだって、真彩ちゃんに振り回されるだいもん、きっと見たかったですよね。ね?
そして二番手の彩風咲奈(さきちゃん)の出番が少なすぎる!←一応ファンなので怒っていいはず笑
さきちゃんの役アンリがまた難しくて、そこにいたる過程を見せる場もほぼないからツライところだったとは思うけれど、ジョアンを好きすぎて少し病む感じがもう少し出せれば良かったのにと思うと、だいもんが演じたボリスのほうが似合いそうなんですよね。

あと印象に残ったのが、マルクス・マイヤーをえんじた煌羽レオ。役としても美味しかったけれど、あのくらーい感じ、底が見えない感じをよく出していました。

いい感じのドラマの重さを感じさせて終わった「凱旋門」のあとに、久々にテンションだだあがりのショーがやってきました。
そう「Gato Bonito!!」です!

プロローグとか記憶が飛ぶほど楽しかったですね(^◇^;)ので、もう一度見たい!
その後の、ANJUさん振付のタンゴシーンも比較的アルゼンチンタンゴがちゃんとしてて格好よかったし、ピアノのシーンはクラシカルブロードウェイショー的でステキだったし、個人的には男役女装シーンがたまらなく萌えました!
変なカツラとかドレスとかじゃなくて、男役セットしてないショートカットのまま、胸を強調したパンツスタイルの衣装がスタイルの良さを際立たせていて、猫っぽくて魅力的!!
中詰めもかわいい&楽しいし、若手スターもバンバン銀橋渡ったり、場面もらったりして活躍するし、だいもんのソロ「黒猫のタンゴ」はアドリブのうまさに爆笑&感動!
そしてなんと言っても、歌うまトップコンビのコパカバーナが圧巻でしたね。
そうなんですよ、こういう歌だけとかダンスだけとか、華やかさだけとかでスターたちが圧倒してくれるモノをショーで見たいんですよ!
伝えてくれるのは熱とか、風とか、空気感だけでいいんです。言葉で伝える物語はいらない。
終わって「すごい!楽しい!大興奮!」だけの感想でいいんですよ、ショーは。少なくとも私にとって。

何より前回の星組に比べて、芝居もショーもセットや衣装の色づかいが普通にキレイだったのが嬉しいです。
これで「凱旋門」もトップコンビでやってくれていたら完全にブルーレイ買う!くらいの満足度でした。