こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

宝塚月組「スカーレット・ピンパーネル」

5月2日 15:00~ 宝塚大劇場
パーシー・ブレイクニー 霧矢 大夢
マルグリット・サン・ジュスト 蒼乃 夕妃
ショーヴラン 龍 真咲
ロベスピエール 越乃 リュウ
プリンス・オブ・ウェールズ 桐生 園加
アントニー・デュハースト 青樹 泉
アンドリュー・フォークス 星条 海斗
マリー・グロショルツ 憧花 ゆりの
アルマン・サン・ジュスト明日海 りお
ルイ・シャルル 愛希 れいか

初演時、私の周りのミュージカル好き仲間がこぞって夢中になっていた作品をようやく生で見る。
いや、一応、DVDで見せては頂いた。そして、この作品の力は決してDVDでも色あせてはいなかった。良い作品だと思った。
けれど、やっぱり、生の舞台で見るのとは違う。そういうことを改めて痛感させてくれたくらい、生の「スカーレット・ピンパーネル」は良かった。こんなに早く再演があるのなら、あの時DVDで見なかった方が良かったかも、とちょっと後悔するくらい(笑)

スカーレット・ピンパーネルはありていに言って、冒険活劇である。主役パーシーの変幻自在、神出鬼没ぶりというのもこの作品の娯楽の部分での楽しみだと思う。だから、DVDを先に見ることによって、ここのところを楽しめなかったのはちょっと残念だったな、と思うのだ。
ゴールディンウィークで、なおかつ、初舞台生の公演ということで、宝塚歌劇をはじめてみるような観客が多かったため、宝塚独特のお決まりの拍手場所での拍手は少なかったのだけど、その分、クライマックス、ココというところで、パーシーが待ってました、と現れるところで拍手が起きた。純粋にこの物語をはじめて楽しんでいる感じが伝わり、いいなあと思ったと同時に、私もこのはじめての楽しみを持ちたかったなあと^^;

小池修一郎のいつものスピーディーな転換もやはり、生で見るとその軽やかさを改めて感じられるし、この日本版を作るにあたって、冒険活劇だけにしなかった、一組の夫婦のすれ違いと愛を描いた部分が、やっぱりキュンとくるのである。私はこの作品をDVDで見たとき、ディズニー的だと評したのだけど、わかりやすくハラハラドキドキして、それでもやっぱり最後は笑顔満載のハッピーエンドという作品は、見終わって本当に幸福感と満足感を与えてくれる。宝塚にぴったりの演目であることは間違いない。
そして、何より、恐らく初演も間違いなくそうだったと思うけれど、実力ある人の歌声で、あの魅力的なメロディを生で聞く、その迫力こそがこの舞台の最大の魅力だと思った。
歌だけでいくと、初演再演とも主役は甲乙付け難い優れた歌手だけれど、残念ながら、ヒロインとショーヴランは初演の方が歌唱力においては上だっただろう。
だから、音楽を楽しむ、という点ではきっと、初演時の方がよかったことはDVDも見ているし、想像に難くない。
そんな中でこの再演の方の魅力は、というと、もちろんまず第一に霧矢大夢の圧倒的な歌声と、主役としての存在感とオーラがある上で、でも、この人がトップお披露目公演である、というところじゃないだろうか、と思う。
お披露目公演ということはイコール、相手役とのコンビを初披露するわけで、この二人の「新婚ほやほや」感、新婚ほやほやゆえにお互いに手探りで不器用ですれ違ってしまったところが、とても自然に見えて、より二人の関係性を恋を楽しめたのだ。
もちろん、龍真咲のショーヴランも、確かに歌は不安定だったけれども、混乱を機に底辺から登りつめるというギラギラした野心がなんとも魅力的で、初演とはまた違ったショーヴランの魅力を見せてくれたと思う。

それにしても、霧矢大夢の圧倒的なトップスターぶりが本当に光る公演だった。
あの客席を覆いつくすような歌声と、安定感のある演技と、切れのあるダンスと、何より小柄なのに、舞台と客席を埋め尽くす大きな輝きを見に、もう一度舞台に足を運びたい。何を言っても私個人は、宝塚には「トップスター」を見に行っていると思う。他の舞台にはない宝塚の魅力は色々あるけれど、私にはトップスターもその一つ。トップスターが本当にトップスターであることが私が宝塚に求める条件の一つなのだなあ、と改めて思った。