こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ダンス・オブ・ヴァンパイア

8/22 18:30~ 帝国劇場
クロロック伯爵:山口祐一郎
アプロンシウス教授:市村正親
サラ:大塚ちひろ
助手・アルフレート:泉見洋平
宿屋の亭主・シャガール:佐藤正宏
シャガールの女房・レベッカ:阿知波悟美
女中・マグダ:宮本裕子
ヘルベルト:吉野圭吾
せむし男・クコール:駒田一

一言で言うと「怪作」とだろう。音楽は決して悪くない。キャッチーな分、正直「モーツァルト!」よりは耳に残るくらいだった。この作品の最大のミスはB級なのに、大作的に仕上げてしまったことだと思う。

とにかく何もかもが中途半端。「ダンス・イン・ザ・ナイト」のシーンなんて、素人目でも分かる高度な技術満載の振りつけで、ダンサーたちは充分にそれを踊っていたのに、シーンとして、さっぱり魅せてこない。最大の理由は、演出、そしてそれに伴うセットと衣装とライトだと思う。個別には決してどれも悪くはないのだけど、ウィーン・ミュージカルでかつ、題材が吸血鬼という言葉からくる印象と、衣装やセット、ライトのギャップが激しかったのだ。ディズニーランドのアトラクションのような、アメリカ的にチープで派手で無駄に豪華だったことが、この作品の価値を下げている気がした。
最後のフィナーレのダンスが一番ショーとして完成されていたので、寧ろ、全編フィナーレくらい、ほぼセットがないくらいのシンプルセット、キャバレー的な敢て安っぽいライティングと衣装で、シュールさを前面に出して演出し、且つ、2階席がないくらいのもう少し小さな劇場で公演してくれたなら、B級ミュージカルとして、充分に楽しい秀作の愛すべき作品になった可能性と素質を本当に感じるので、惜しいという印象を拭えなかった。この方法でなら、もう少し「欲望」というモチーフを打ち出して、作品としての一つのメッセージも付加出来たかもしれない。

大作に仕上げるのであれば、「耽美」と「飢え」をテーマにやはりもう少しセットも衣装も、とりわけライティングも重厚感のあるアーティスティックな色合いで、一つの絵画を仕上げるように作り上げて行けば、帝国劇場で二ヶ月間も上演するになんとか追いつくくらいの作品になったかもしれない。吸血鬼であることの哀しみや孤独、そういうものの表現をもう少しスマートに打ち出す必要があったと思う。

キャストはさすがの市村さん、が全て。市村さんはむしろ主役格よりもこういう役の方が、本来の才能を発揮できる気がした。