こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

夏の夜の夢

9月9日 18:00~ シアターサンモール
劇団スタジオライフ WOW!チーム
ライサンダー:山本芳樹
ハーミア:松本慎也
ディミートリアス:楢原秀佳
ヘレナ:関戸博一
パック:倉本徹
ティターニア:林勇
オーベロン:石飛幸治

シェイクスピアの喜劇はやはり男性のみで演じた方が面白い、ということを痛感した出来だった。正直ここまで楽しい舞台に仕上がっているとは驚きである。
通常、スタジオライフのセットや音楽や演出は、本当にシンプルなので、今回のこの芝居も、シェイクスピアの脚本のまま、何もいじらず上演するのだろうな、と思っていたのだけど、びっくりするくらい、スタジオライフ流に、男性のみ、という特質を活かして、ちゃんとした娯楽作品になっていた。
シェイクスピアの古い飾り立てたセリフを日本語に直したものは、それを言う役者もしんどいが、見ている方だって、それなりに理解するのに大変である。昔、歌う「ハムレット」を見たときも思ったが、心情表現を歌うことによって浄化し、娯楽度を上げるのは、舞台に乗る「シェイクスピア作品」を堪能する場合にはかなり有効な手立てだと思う。
正直、歌の完成度は低い。けれども、歌うことによって娯楽度を増し、気楽に頭をからっぽにして、ただ単純に舞台を楽しむ演出にしたのは、本当に正解だったと思う。
スタジオライフを見に行って、初めて、セットも衣装も好みだと思った。特に妖精側のカラフルな、でも現代っぽい衣装は、男性キャストが身につける違和感を減らし、個人的にティターニアをドラァグクイーンっぽく魅せてきたのは、妖精側、という異質感を違和感なく見せた。
ヒポリタとシーシアスの関係性は、元々脚本にないのだから、難しかっただろうけれど、少し理解しがたかった。けれども、通常、単なる権力者としか描かれないこの二人に独特の空気を出して、最後の(私が何度も不要だと述べている)ボトム一行のくだらない芝居のシーンに意味を持たせたのは、シェイクスピア脚本の自由性を上手く活かした演出だと思う。
シェイクスピア脚本の、舞台にかける際の最大の魅力は、飾り立てたセリフでも、人物描写やストーリーでもなく、ト書きがなく、演出に制約がないことである。だからこそ、通常シンプルな演出をするこの劇団でも、ここまでのオリジナリティを出すことが可能だったのではないかと思う。
役者陣も相当に稽古し、精一杯の実力を発揮し、とにかく自分たちも楽しもう、そして観客も楽しませようという意気込みが伝わってきた、良い舞台だった。但し、かなりハードに動き回り、かなりハードに歌い、そしてセリフを述べるので、ダブルキャストとは言え、千秋楽までこの勢いとパフォーマンスがキープできるのか、その一点だけが少々、不安と言えば不安である。