こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

歌舞伎座さよなら公演 五月大歌舞伎

5月9日(土)16:30~ 歌舞伎座
一、恋湊博多諷(こいみなとはかたのひとふし)
  毛剃

          毛剃九右衛門    團十郎
           傾城小女郎    菊之助
           中国弥平次    権十郎
          小倉伝右衛門    市 蔵
          徳島平左衛門    亀 蔵
           加田市五郎    松 江
         じゃがたら三蔵    男女蔵
           浪花屋仁三    亀 鶴
            座頭盛市    彌十郎
           奥田屋お松    秀太郎
           小松屋宗七    藤十郎


二、小猿七之助 御守殿お滝
  夕立(ゆうだち)
           小猿七之助    菊五郎
           御守殿滝川    時 蔵


三、神田ばやし(かんだばやし)
           家主彦兵衛    三津五郎
            桶屋留吉    海老蔵
            娘おみつ    梅 枝
           女房おかね    右之助
           隠居おらく    市 蔵
            行者陽山    亀 蔵
           若い者正太    亀 寿
           若い者新七    巳之助
            店子重吉    亀三郎
            店子源太    男女蔵
           店子清兵衛    権十郎
            店子加蔵    秀 調
            店子惣助    團 蔵


四、鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)
  おしどり

     遊女喜瀬川/雌鴛鴦の精    菊之助
      河津三郎/雄鴛鴦の精    海老蔵
            股野五郎    松 緑

初めて花道の下手横の席に座ってみると、花道7:3近くだったせいもあって、丁度真横で色々裏側が見えて面白かった。
花道は上手側が正面になるので、下手側は黒子さんたちが小道具の後ろに一生懸命隠れてるのとか、早替え用の着物の縫い取りとか、帯とか、ぶら下げている財布とか、そういう細々したところを見る楽しさを満喫。
今回は4つの演目とも、たわいない話が中心の世話物で、どれも気軽に楽しめる。
まあ、夕立に関しては、えええっと思わずにはいれなかったけど、まあ、歌舞伎なんで。
(ということで、公式内容はこんな感じ。

 小猿七之助菊五郎)は、かねて見初めた御守殿の滝川(時蔵)が、落雷によって気を失ったのを幸いに我が物にしてしまいます。そして七之助の男ぶりに惚れた滝川は、その身を七之助に任せ、夕立の降る中、手に手を取って立ち去っていくのでした。

 えと、まあ、江戸時代って色恋に大らかというか、そんなんあり?というか。
 まあでも、「かねて見初めた」という愛のありようが重要なんではないかと、多分、きっと。しかし、私のフェミコードには激しくひっかかりましたね)

後は菊之助さんの女形が声も上品で美しく良かった。
そして、やっぱり海老蔵が本当に美しかった。
この人の歌舞伎を見ると、なんというか、「こんな役もこんな自然にやってしまうんだ」という技の面での驚きが毎回あるし、更にその華やかさと存在感にうっとりしてしまう。

私が海老蔵を始めて見たのは2003年。
その頃はまだ新之助で、私も初歌舞伎だった。
彼のやった役が、寺小姓であまりに弱弱しく上品でテレビの骨太なイメージしかなかったため、その美しさに随分驚いたのを覚えている。

なので海老蔵という人は歌舞伎では、線の細い上品な役が得意なのだとすっかり思いこんでいたら、昨年見た「源平布引滝」では木曽義賢を荒々しく重厚に演じ、斎藤実盛は男らしく上品に演じ分け、この人ただものではないな、と痛感したのである。

さらに今年のお正月公演では、「七つ面」の演じ分けの技もさることながら、弁天小僧の軽妙な演技と美しさに溜息の連続。

そして今回は地味で気弱な青年を茶目っ気たっぷりに演じ、役によってまとう雰囲気までも変えてしまう技量。さらに雄鴛鴦の精での舞の美しさと華やかさ。歌舞伎芸の良し悪しについては分からないけれど、素人として、こういう人がまさしくスター、花形役者と呼ばれるのにふさわしいのではないかと思った。