こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

美と芸があればなりたつ@六本木歌舞伎「座頭市」

先日のAll for Oneを本当にたくさんの方が読んでくださり、感謝しかありません。
あまりの反応の多さに宝塚ブログへ転身を図ろうかと思ったくらいです笑←私の無謀さ。宝塚ブログはよく研究されていて素晴らしいものが多いです。

ところで、「All for One」もエンターテインメントに徹した素晴らしい作品でしたが、六本木歌舞伎も間違いなく同ジャンルに属するものだと思います。
2年前の「地球投五郎」で、感想が書けないと書いたのですが、本当にそうなのです。理屈なしにすげえ!とか楽しかった!とかそういうことしかないんですよ。

ということで「座頭市」も
寺島しのぶさんの早替え、二役がハンパなくすごかった!
海老蔵は花形役者!

の二言で感想は終わるのです。

とは言え、とりあえず「地球投五郎」とは勝手が違った部分があるので、基本情報からいつものように書き出します。

8/13(日)11:00〜 フェスティバルホール
市川海老蔵
風賀清志郎 市川右團次
文菊堂春吉 市川九團次
遊女 貞 大谷廣松
六樽組権三 片岡市蔵
乃木坂屋弥太郎 市川右之助
薄霧太夫/おすず 寺島しのぶ

脚本 リリー・フランキー
演出 三池崇史


1番驚いたのがこのポスター含め、ビジュアル力のパワーアップです。
演出あった?と思った「地球投五郎」から一転、幕開きから舞台に海老蔵がランニングとジャージ姿で一人立って、本物の水の雨に打たれている。
なんの意味があるかはわかりません。
しかしビジュアルインパクトとしては最高でした。
歌舞伎の水芸はさすがだな、その上になんというかっこういい絵面なんだろう、と思っていたら、客席通路から薄霧大夫の花魁道中が登場。
その豪華さ美しさに大興奮でした。
きっと江戸の時代の花魁道中も、こんな感じで民衆はわーっと興奮しながら見ていたんだろうなあと、思いましたですね。
そして、花魁がたどり着く舞台の上も、美しく荒んだセットが用意されていたのです。

そうそう「地球投五郎」のとき、「右近さんのお姫様だけが、ちょっと女形としては色々ごつくて」と書いたのですが、今回はヒロインが寺島しのぶさんなのでさらっと解消。
やっぱり男性に比べると骨格が違います

一応、公式ホームページからお借りしたあらすじを転記します。


男の名は市。盲目の座頭である。
諸国を旅する按摩に見えて、実は凶状持ちの侠客。

舞台は、六本木温泉宿場町。繁栄と混沌の中、人々の心は荒んでいる。
時は江戸時代。それも、私たちが知るところよりずっと長く続いた江戸の世である。

この地に流れ着いた市は、女中見習いに励む
おすずのひたむきさや、市に心を寄せる江戸随一の
花魁・薄霧の心の温もりに触れる。

市は街を牛耳る六樽組の開く賭場でイカサマを
見抜き、組員達の怒りを買う。

市の身を案じた薄霧は共に町を抜け出そうとす
るが、駆け付けた組員達が二人を取り囲む・・・。

ここに姿を現すのは、剣の達人・風賀清志郎
狂気漂う清志郎の剣に、市はどう挑むのか。
そして薄霧の運命はいかに?


なぜこれを転記したのかというと、私自身が話がよく分からなくて、終わってから読んで、そういう話だったのか、と思ったからです

ということで、脚本としては「地球投五郎」の方が面白かったです。ストーリーはないけれど、セリフで笑い転げましたからね。
でもその脚本を補ってあまりある寺島しのぶさんの芸!他全員歌舞伎役者の中に見事に溶け込んでいて、薄霧太夫は大胆で美しく、おすずは若く可憐でひたむきで、二役の演じ分けの凄さったらなかったです。

そして、その寺島しのぶさんを魅せようと海老蔵の抑えた演技がまた素晴らしかったのです。もちろん、真ん中に立つときは真ん中パワーを発揮。海老蔵一人だけ歌舞伎メイクをしていないのにも関わらず、違和感なく、さらにあの「睨み」、目の強さ。もうため息しか出ません。

この二人を配した時点で勝負は勝ったと同然です。そしてさらに、周りの歌舞伎役者さんたちがきっちりとした仕事をしながら、全力で観客を楽しませようとしてくれるのです。この心意気、サービス精神、頭が下がる思いでした。

休憩中もメインキャスト以外の役者さんは1階から3階まで客席を周り、ツーショット写真にも答えるというサービスぶり。
なんとボックス席にも登場!

本当に楽しかったです

もちろん舞台上でも幕前でコントのような掛け合いが繰り広げられ、場内を笑いが包みます。

また今回は津軽三味線の有名な方も参加されていたらしく、三味線の見せ場も素敵で音楽も聞き応えがありました。

今回舞台を見ること自体がはじめてかな、という観客が多かったのですが、劇場で繰り広げられた全てに、そういう方々を楽しませよう、ファンになってもらおうという心意気を感じましたし、それは間違いなく成功していたと思いました。

ただ1つ難点を挙げるとすれば「舞台を見るのがはじめて」の観客に対して、マナー喚起がスタッフ側に徹底していなかったことでしょうか。
というのも、私の前の席の上品な年配の女性が、椅子の背もたれ部分に手荷物を置かれ、それは姿勢正しくご覧になられてたのですよね。
本来であれば、本当に姿勢良く美しいお姿なのですが、残念ながら客席だとこれは後ろの視界を遮ってしまうのですよ。
かと言って、観客同士で注意しあうのは私はどちらかというと苦手でして、できれば劇場スタッフさんが「はじめての観劇の観客が多い」ということを前提に気を配っていただけたらな、と思った次第です。