こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

コーラスライン

8/22(土)18:00~ Bunkamura オーチャードホール

一番最初に「コーラスライン」を見たのが1993年、劇団四季の大阪公演だった。
逆算して、私、16歳(笑)
ようやく、宝塚から外の舞台に興味が向き始めた頃だった。
そんなときに「コーラスライン」に出会ってしまったのだ。
宝塚とは正反対の、主役のない舞台。
鏡しかないセット。
稽古場からそのまま出てきたような質素なレオタードの衣装。
なのに、素晴らしい音楽と、演技と、ダンスだけでこれほどのハイクオリティの作品が出来てしまうことに感動した。
何より、舞台じゃないと表現できない、何か。
それが「コーラスライン」にはあった。
こういう舞台を作れる人になりたい、と思った。

そういう流れが私の中にありつつも、残念ながらタイミング合わず、海外でこの作品を見ることは適わず、生まれて初めて、英語で見た「コーラスライン」だったのだ、今回のは。
なので、もう、始まりの「5,6,7,8」で鳥肌。
「アト・ザ・バレエ」で鳥肌。
「ハロー12、ハロー13、ハローラブ」で鳥肌。
そして、「WHAT I DID FOR LOVE」で号泣。
総合的な感想は「見終わって、精神使い果たして疲れた」(笑)

それにしても何にしても、今回思ったのは、やっぱりこの作品程、ダンス・芝居・歌が三位一体となっている作品ってないんじゃないだろうか、ということ。どれが欠けても、どれが出来なくてもキャストに入れない。ダンスも、ジャズから、バレエ、タップまであらゆる種類のものを要求されるし、振り付けも細かくてハードだし、ある一定の力を持ったダンサーじゃないと無理な上に、全員が歌唱力や演技力を要求される、そういう作品って意外にミュージカルでもそうないのだ。「シカゴ」も割とそうだけど、ビリー・フリンは踊れなくても大丈夫だったり、ダンスパートのみ、歌パートのみという分かれ方になっていることも多いし、日本で人気なものは、歌中心ミュージカルが多いのだ。
だから、とにかく、その三位一体感と不必要なものは全て排除したマイナスの美学を追及したセットと空間作り、これが33年前に作られたなんて信じられないほどの洗練さが、本当に素晴らしくて、改めて「The Best Musical,EVER!」というキャッチコピーが心に響くのである。

そして、改めて男性ダンサーの肉体の美しさに魅惚れる。
ちゃんとバレエも習っている男性ダンサーの筋肉の美しさ、力強さ、軽やかさはやっぱり心奪うものがある。
黒人男性ダンサーがハイトーンの美しい歌声をしていて、さらにプエルトリカン(←見た目でプエルトリカン、アジア系と分かるってことが日本版しか見たことない身には感動だった)のディアナが、クリアな音質のキレイな歌声をしていて、ダンスと歌と両方を満喫。
初めて聞く英語のラインの美しさもあって、何より、言語版を始めて舞台で見るわけだから、演技もそれなりに満喫できたのも幸いだった。

作品の表面的なことはおおまかにそういう感じで、で、内面はというと。
もう、シーラ!
の一言に尽きる。
最初に私が「コーランライン」を見たのは前述のとおり、16歳のとき。
登場人物は全員オトナだった。
だから「WHAT I DID FOR LOVE」を聞きながら、私もそう「夢のために後悔しない生き方をしよう」と、勇気づけてくれる応援歌みたいな気持ちで聞いたのだ。
で、四季の再演を見たのが、多分20代の前半。
登場人物たちの中でも一番若手のキャラと同い年くらい。
そして、私も全く同じ気持ちで「自分の夢に挑戦している」時だったから、やっぱり応援歌の気持ちだった。
さて、今、登場人物の一番年上キャラよりも一歳年を取って見るとどうだったか。

この歌は、実は細かいところをすっかり忘れていたのだけど、登場人物の一人がオーディションの途中に元々痛めた膝を再発させて、オーディション会場から病院に運ばれるというシーンの後、「もし踊れなくなったら、どうする?」と登場人物たちが語るシーンの最後に歌われる。
それぞれの人生を語る登場人物たち。
その中でシーラは30歳を目前に控えている女性だ。
30歳、確実に子供ではいれなくなる年齢。
彼女は最初プリマを目指していた。21歳までにプリマになれなかったら。
次に25歳までにショースターになれなかったら。
そして、それからは後何年できるだろうとじりじりと期限を伸ばしていた。
これは瀬戸際のオーディションだ。

そういうところで、若手のディアナが言う。
「あなたも期限を決めていた?」

ああ、私だ、と思った。
25歳までにロンドンへ。30歳までにそっちで何かしらプロという道に行けないなら。
そう思って28歳で、ここが色んな意味で上限だと思って、
ロンドンに残ることをやめて帰ってきた。

だから、「WHAT I DID FOR LOVE」で涙が止まらなかった。
そして、その曲中で、

We did what we had to do.

と歌われた瞬間、もう次の歌詞が本当に自分の言葉のように響いて来て、

Won't forget, can't regret
What I did for love.

と心の中で一緒に歌った。そして、泣いた。
素晴らしい体験だった。

ところで、余談だけど、今回のシーラは若くて、美人で、そして、呆れるほどにナイスバディだった。
四季で見たとき、どうしてもシーラが好きになれなかったのは、私が若かったという理由もあるけれど、子供心にあのベージュのレオタードがだっさいな、と思っていたのもあったと思う。
で、「NINE the musical」を見たときに、ああいう白人女性が一番美しく見える色やデザインを日本人が着こなすのは大変だ、と書いたのだけど、改めてこのナイスバディの美しきシーラがベージュのレオタードを着ているのを見て、この思いを強くした。あれは、今回のシーラのような、ものすごいスタイルが良くて美しい人が着てこそ発揮される衣装なんだな、と思うと、やっぱり来日公演の有難さを痛感するのである。