こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ドリームガールズ

5月29日12時~ オーチャードホール
セット・デザイン:ロビン・ワーグナー

キャストを確認しなかったのだが、体調不良ということで、一部と二部でエフィー役が交代した。アンダースタディーにあたることはあるけれど、途中交代というのは初めてで驚いた。
そういうこともあったし、勝手なイメージもあって、元々のミュージカル自体は古いものだし、今回はキャストの歌声を楽しみに見に行ったのだけど、そちらはどちらかというと、ガツンとくるほどではなかったというのが、正直な感想。いや、もちろん、歌声はアンダースタディーにしろ素晴らしかったけれど、古いミュージカル、というのを覆すセットと演出にそれ以上にやられた感があったのだ。

賛否両論はあるだろうけれど、LEDパネルを使ったセットが、個人的には本当に素晴らしかった。LED自体は舞台に取り込まれて久しく、とりわけ日本独自の舞台でそれを駆使されるものを多く見てきたし、それはそれでその都度面白く感じていた。
けれども、とりわけ一部、こんなに洗練されたLEDパネルを用いたセットは初めてだったのだ。
透けるLEDパネルを利用した舞台裏と表の交差の仕方。さらにそのパネルがあがって、バンドが登場したときには、思わず、そうきたか、と舌を巻いた。
両サイドの並ぶスポットライトの使い方やその色の取り合わせ、LEDパネルのわずかな傾けで作りだす部屋の空間、転換の仕方。どれもこれも格好よくて、これが、ブロードウェイの今か、とただ感嘆するばかり。
特に「Steppin' to the Bad Side」の作り方は、まるでPVのような格好よさで、かつ、それを舞台で生で見る楽しみ、みたいなものもあり、本当に息を呑んだ。衣装の色あわせといい、全体にヴィジュアル面にシンプルだけど、凝った造りで、古いミュージカルを現代的に生き返らせていて、それが何より個人的に素晴らしいと思ったところだった。

そんな新しさを見せた一部に比べて、二部は人間模様が込み合ってくることもあって、セット的にはそのオリジナリティが息を潜めたのが残念だったけれど、その分、二部は情感のこもった歌を堪能させてもらった。
特にエフィーとディーナが2人で歌うLISTENは映画とは比べ物にならない迫力。上手いとか下手とか美しいとか美しくないとか、そういうことじゃなくて、スクリーンの向こうで流されるものと、その場にいて聞くものは違う、というそういうことなんだと思う。二人の女性の波動みたいなものが伝わり、よりあの歌の本質が舞台の方が活きたような気がするのだ。
ただ、その2人の女性の人生が交差するこの曲で、一部のエフィーと二部のエフィーが違うのだ、ということをどうしても頭の片隅をよぎったのが残念。本役を見れるにこしたことはないけれど、やはり半分だけ本役とかよりも、全体を通して一人の人が演じてくれる方がなんとなく良かったかな、という思いは消えなかった。

ところで、この映画版を見たとき、ジェニファー・ハドソン助演女優賞ということで、それがとっても不思議だったのだけど、舞台版を見ると、やっぱり主役はエフィーじゃないか、と思う。まあ、その辺も色々オトナの事情があったのだろう。

もう一つ、共同振り付けにシェーン・スパークスの名前があって、ちょっと嬉しかった。元々のマイケル・ベネットの振り付けと今回の演出家の振り付けにプラスして、彼が参加することによって、より今っぽいPV的な面を見せられたのでは、と思う。