こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ

8/22(日)18:00~ 東京国際フォーラム ホールC

※帰りにCAST表を確認したらもう撤廃されていて、残念ながら私が見たのはどのキャストだったのか分かりませんが、とりあえずメインキャストを記載します。
ウスナビ:Joseph Morales
ニーナ:Arielle Jacobs
ベニー:Pogelio Douglas Jr.
ヴァネッサ:Lexi Lawson
クラウディア:Elise Santora

作詞・作曲:LIN-Manuel Miranda
脚本:Quiara Aleglia Hudes
演出:Thomas Kail

2008年のトニー賞受賞作が早くも日本にやってくるということで赴く。
2008年のトニー賞受賞の際にはラテン版RENTと言われていたので、とても興味のある作品だった。
そして、確かにそのRENTの影響はあるのかも、というシーンも見られた。
けれど、これはRENTとは根底のところで違う、全く別の物語だった。

個人的にラテンミュージックを使ったミュージカル、ということでは「オペラ・ド・マランドロ」の体験があるくらいで、それ自体は珍しいのかな、という気がするし、ラテン・ミュージックもラテンダンスも好きなので、音楽と歌と踊り、という点てはとても楽しめたし、カンパニーのスキルも十分だった。

ただ、ミュージカル作品、として見たときに、セリフや芝居と歌への流れやダンスの魅せ方など、私個人としては違和感が否めなかった。演出が私とはあまり合わなかったのだ。特にAct1はどうしても人物紹介的な部分が多くなるので、より歌と芝居がつぎはぎの印象。でも、近年のヒット作、新しい作品ではあるし、今の時代はこういったショーの方が心地よいもの、なのかもしれないと思う。ただ、確実に、この作品をやるためには今回の箱は大きすぎた。これは海外ミュージカルを輸入するとき、いつも生まれる難点である。まあ、日本国内で見れてしまうという贅沢を思えばそのくらいはとも思うのだけど、やはり残念に感じる。

この作品は、ニューヨークのラテン・コミュニティーでの人物模様を描いている。ワシントン・ハイツの中で生きる普通の人間の夢や希望や挫折や現実の厳しさや、その中にあるコミュニティー愛や家族愛が描かれる。アメリカにおけるラテン・コミュニティーで生きること、というのがどういうことか想像するのは難しいけれど、その部分を念頭に置かないのであれば、とても日本人的に通じるところもある物語である。
家族を大切にし、コミュニティーの中で助け合い、年長者を敬う。
今よく言われる「古き良き日本」の姿に近いのかもしれない。
だからそういうコミュニティーや関係性が当たり前だったり、憧れていたり理想としている人たちにはなかなか感動的な作品ではないかと思う。

ただ、私個人はそうではなくて、だから、これがラテン版「RENT」と呼ばれることに違和感がある。確かに貧しさの中から何かを目指すことや友情の物語という点では似ているかもしれない。けれども、この二つの作品にあるものは全然異質だと私は感じた。

セットは良く考えて作り込まれていたけれど、目新しいところはなかった。衣装の色バランスは良かったけれど、とりわけ目を引くところはなかった。ただ、朝焼けのシーンの照明はとても美しく心に残った。