こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

人種と品格を問う@ディスグレイスド

10/1 13:00~ 兵庫県立芸術文化センター 中ホール
作:アヤド・アフタル
演出:栗山民也

アミール(パキスタンアメリカ人) 小日向文世
エミリー(白人) 秋山菜津子
アイザックユダヤ人)安田顕
ジョリー(アフリカ系アメリカ人小島聖
エイブ(パキスタン生まれのアメリカ人) 平埜生成



さすがに一週間の休み明けは仕事がたまっていました←当たり前。
言い訳です。すみません。
そして、シンガポール旅日記も書きたいのに、観劇していまいました
まあ、基本観劇感想ブログなので、これで正しいはず!

そんなわけで見に行った「ディスグレイスド」。
日本語では「恥辱」と訳されています。
役名のところに人種を書いたのですけれど、これを書くだけでも難しかったです。
この表記が正しいかどうかも問題になると思います。
それだけ繊細な問題を扱った作品なのかもしれないです。
でも、とりあえず、この人種を頭に入れてみれば良かったなあと思いました。
あらすじはこんな感じです。

パキスタンアメリカ人のアミールは企業専門の弁護士として成功し、妻エミリーとニューヨークで暮らしている。妻のエミリーは画家志望。
そんな彼の元に甥のエイブがやってきて、彼が尊敬するイスラム教徒がテロリストとして逮捕されたので、助けてほしいと言い出す。断るアミールに「正義のため」に助けるべきだと言うエミリー。
アミールは少しだけ手を貸すが、それをきっかけに人生の歯車が狂い始める。


ここにユダヤ人のアイザックやら、アイザックの妻でアミールの同僚であるアフリカ系アメリカ人のジョディが絡むのですが、
とりあえず、全員日本人なので、セリフが進まないと誰がどういうルーツと宗教を持っているか分からないのです。
その点で、見た目でパッとわかる状況で見られるとまた違うのだろうなとは思いました。

ただ、肝はやっぱり、アミールがパキスタンアメリカ人、であること、だと思います。
アミールはイスラム教徒として育てられ、そして、背教しています。

9・11以降のアメリカ社会が実際にどんな感じなのか、私には分からないことなのですが、イスラム教へのアンチな感情は察することはできます。
アメリカではアフリカ系アメリカ人への差別を良く聞きますが、アジア人はさらに下にいる、ということをニューヨーク在住の方から聞いたことがありました。
そして、アミールはイスラム教の国にルーツを持っている、それがアメリカ社会でハンディキャップであることは容易に想像できます。
彼は、ハングリー精神で辛抱強く今の地位を築いたのです。
それは本当によくよく分かるのです。
少なくとも私も外国で子どもに変にからかわれたり、石を投げられたりした経験くらいはあるので。
だからこそ、歯車が狂っていくさまが、哀しくも怖かったです。

本来はもっと笑ったりしながら見られるのかもしれませんが、なかなか日本人的には難しいなあという印象。
それでも、聖書は(旧約とか新約とかの区別はつかないにしても)断片的に知っている部分があるのに、コーランは何一つ知らないのだな、とか、自分のどの部分が欠けているか、を考えさせられました。

シンガポールで見た人種のコミュニティが共存しているさまと、SNSをフォローしているフランス人の方のフランスでの移民の在り方(フランスではコミュニティを推進していないそうです)を読んでいると、どちらがいいのだろうかとか、そういうことを最近考えている身(←自分ではどうにもできないのに)には、色々と得るものの多い内容でした。

個人的にはみんな、「Avenue Q」の一曲「Everybody's a Little Racist」みたいになるといいのに、とは思います。

アミールの劣等感も、エミリーの無意識な優越感もなんとなく分かるからこそ、認めて許して、そういう世界ができないものか、を考えてしまいます。
そして、そういう力を持った脚本でした。

一つだけ、人種差別的な部分を置いて、感想を言うとしたら、とりあえずみんな、飲みすぎだろう!(笑)
マッカランをばかばか呑むなんて、羨ましいいけません

オトナとして、「お酒はほどよく」を痛感しましたです、はい。

酒は飲んでも呑まれるな!
心の中で言っちゃダメだと思っていることは、なにがなんでも言うな!


この2点をこの芝居を見て肝に命じました。

あれ、なんか、酒には気をつけろ、という教訓のお芝居みたいな感想になってる?

あながち間違いではないですけれど、違います。
なんか、話がそれてきたので、ちゃんとした芝居の話しに戻します、すみません

芸達者な役者陣がよく演じている(小島聖にはもうちょっと頑張ってほしかったけれど)し、さらに素晴らしかったのが照明でした。
セットも普通ながら、暗転ごとに少しだけ置き方が変わっていたりして、工夫されていましたし、何より、青いモザイクの壁(エミリーの作品という設定)の横に立ち、上手から差し込む照明に照らされたアミールの姿は、そこだけ切り取りたいくらいに色々訴えかけてくる一瞬でした。
タイトルと違って、とっても優美な(Grace)な照明、本当に素晴らしかったです。

そう思うと、BENTはもちろん、8月の家族たちも少しだけビジュアル追及に欠けていたように感じてしまいました