こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

その愛しき女@宝塚月組「アルジェの男」「ダンス・ロマネスク」

2011年に観劇した宝塚作品を振り返るシリーズ笑
といっても、ちゃんとブログ見直したら、もう書いてないの、「アルジェの男」と「美しき生涯」しかなかったですね(^◇^;)
まあでも、せっかくなので、「アルジェの男」を「ダンス・ロマネスク」とともに振り返ってみます。

『アルジェの男』『Dance Romanesque』 [DVD]
宝塚歌劇団
宝塚クリエイティブアーツ


----------------------
柴田作品にも駄作はある、というのを痛感した「アルジェの男」。
あまりに大時代な感じで、驚きました。
いろんなことがとっちらかっていて収拾できてない印象。
そして、何より、霧矢大夢くんが主人公ジュリアン・クレールに手を焼いているのに1番驚いたのです。
紫子であれだけ、出てきた瞬間に「紫子」だと思わせた人が!
完璧な英国貴族パーシーをリアルに演じた人が!そして、あんなにしどころのない野獣をあれほど魅力的に演じた人が、このジュリアン・クレールがどういう人がその形を見せられていない、そのことが衝撃でした。
だけど、それくらいジュリアンはわけのわからない男だったのです。
そこで思ったのは、この「アルジェの男」は最早ジュリアンの物語ではないのじゃないかということ。
おそらく三人のジュリアンを取り巻く女性の話。
初演のジュリアンは鳳蘭さん(ツレちゃん)。
きっと、ツレちゃんとして、最高に格好よい「男役の型」を見せればそれで良かったのだと。
格好良い、男からも女からも愛される「美しい男性」。「夢の男性」。
その姿形を持っていることがジュリアンとしての第一条件だった気がするのです。

しかし、残念ながら、霧矢くんは男役としてビジュアルは弱い。そして、ツレちゃんと真反対に技巧派。個性に全然合っていない再演をさせられるのは本当にどうかと思いました。

ただ逆に女が良かったのです!
何より蒼乃夕妃さん(まりもちゃん)が素晴らしいという言葉じゃ足りないくらいステキだったのです
冒頭から、もう腹筋から軽々あがる足とビシバシなダンスに釘付け。自然と目が彼女に集中します。
そんなまりもちゃんが、今回演じるサビーヌという役が、これまた私が好みの役で
もうセリフとかジュリアンの設定とかどうにかして、と叫びながらも、このサビーヌともう一人の女エリザベートは私にとってひどく魅力的でした。

サビーヌはジュリアンのアルジェ時代からの恋人。とにかくジュリアンが好きで、愛を与え続ける女性。そういう風にしか愛せない不器用な女。彼女はジュリアンから何も望まない。ジュリアンの夢を応援し、負担にならないように身を引き、それでも、どうしても彼が好きでパリまで追っかけていくのに、彼の前には姿を表さない。この彼女の徹底した姿勢になぜか共感してしまったのです。そして、そういう女をまりもちゃんが本当に魅力的に演じていました。

一方のエリザベートは美しさも家柄もあって、そういうものを持ち得た女の魅力に満ちている役でした。
気位が高く、わがままで奔放で、でも育ちが良いからこそ、色眼鏡で人を見ることなく、彼女自身の目でその人をそのままを捕らえる。恵まれた女性ならではのしなやかさ。魂の自由さ。

それは下町育ちのサビーヌが持ち得なかったもので、哀しくも彼女はそういうことをちゃんと分かっているのです。だからこそ、最後に、サビーヌがジュリアンにとっての邪魔な人間を殺して、警察に行く前に、彼女がジュリアンに「キスをして」と、たった一つそれだけを望むとき、本当に心から「ジュリアンにこの女を愛しいと思って欲しい、お願いだから、彼女の気持ちに対してほんの少しでもいいから、動かされて欲しい」と思いました。

なので、最後、ジュリアンがサビーヌを選びとってくれたことは、見ていてカタルシスを感じたし、ジュリアンが突発とも思えるそういう行動をとるところをスムーズに見れたのは、一重にまりもちゃんのサビーヌあってこそ、だったと思います。

それにしてもパリのキャバレーで踊るサビーヌの体の美しかったこと
ほぼ胸と下半身しか隠してない、ヌードカラーのスパンの衣装。がっと見せられたお腹とウエスト、そして、鍛え上げられたしなやかな足と腕。もう本当あんな美しい肢体を生ではじめて見ました!
ついついこのシーンの舞台写真を購入したくらいです

で、体があれほど美しいからこそ、サビーヌがそういう夜に働く女であることが痛感させられて、それがまたエリザベートとの違いを見せたのも良いいなあと。

エリザベートを演じたのは、彩星りおんさん(りっちー)で、彼女も割に大人の持ち味だから、お金持ちのお嬢さんらしい奔放なわがままさを出すことができづらかったのは残念でした。

ただエリザベートの母親がいい!もうまごうことなき、本物のお嬢様。苦労一つしたことなく、柔和で誰にでも優しくて、朗らかで天然で楽しい。
そして、こういう人が越乃リュウさまの奥様というのが、また良かったんです!
とにかく越乃リュウさまは、しびれるくらい格好良かったです
帰宅して、オットマンに足を延ばして座り、タイをくつろげる仕草が、もう、色気だだもれ!
妻と一緒に出席するパーティーで、タキシードに白いマフラーを垂らして、妻をエスコートする姿のなんて、なんて格好良いこと!
あーもう、女性ホルモン大放出(笑)

後は星条海斗さん(マギー)が、まるでジョージ・クルーニのようでこれまた渋く格好よく、青樹泉さん(もりえ)は爽やかで、そして、龍真咲さん(まさおが)ギラッギラの美貌で、明日海りお(みりお)くんは正当派の端正な美しさで、月組の男役のバリエーションの豊かさが良かったなあと。
だからこそ、せっかくこんなに個性豊かで、実力もあるメンバーがそろっているのにプロデューサーの仕事があまくて、こんな作品ばかりするのは、本当に残念だと心から思いました。

ところで、この作品の演出は大野先生。
大野先生と言えばビジュアル作り。
パリに移るそのところのセットと、その後の衣装がもう本当色合いといいバランスといい素晴らしすぎて、このシーンのミニチュアが欲しいと思うほど。
その後、パリの夜の街に繰り出すジュリアンのシーンで、盆が回って、街灯のセットとバックに絶妙な配置で描かれた街灯がわーっと迫ったきたところは、本当に美しくて息を飲みました。
背景に当てられる照明の色合いもどれも本当に美しくて、この大野先生のこだわりが本当に私は好きなんだと思います。
特に大野先生の作品の衣装が好き
キャバレーシーンのサビーヌの衣装はもちろん、エリザベートの教会のシーンの衣装がすごく好みでした!上品なグレーのスカートスーツ風ツーピースに赤いベレー帽、ツーピースの縁取りとボタンも品よく赤が入っていて、ものすごく可愛くて、似合うなら私も着たい、と思ってしまいました←残念ながら全く似合わなそうなんですが(涙)

だからこそ、逆にショーのビジュアル面に対する甘さが目に辛かったのが中村B先生には気の毒でした。
でもビジュアル面の甘さをのければ、「ダンス・ロマネスク」は悪くないショーでした。
とりわけ中盤の「ノートルダム・ド・パリ」のシーンが本当に良くて、あれだけジュリアンを見せられなかった霧矢くんが、下手袖に現れた瞬間にカジモドだったのです!
かなしくて、でもだからこそ純粋で懸命に生きている人間。銀橋での歌もそのカジモドの悲しさと純粋さが散らばって、心に迫ってきます。
何より容姿は醜いのに、存在が美しかったのです!
歌い終わり、上手袖壁にもたれかかって空を見つめライトに照らされたカジモドが、本当に神々しいくらいに美しくて、醜さが美しさを際だたせていて夢を見ているようでした。
さらにそのカジモドの「太陽」エスメラルダのまりもちゃんがまたいいのです。情熱的だけどどこかちょっと影があって、だから優しくて、カジモドが憧れるのがわかる女。
そして、傍らでギターを持ちながら歌うジプシー女のりっちーがまた色っぽくて、やっぱりりっちーはこっちだよなあとか思ったり。
安寿ミラ(ヤン)さんの振り付けもいいし、最後の落ちさえなければすごい見応えのあるいい場面になっていました。こういうシーンが一つあれば、ショーはおもしろくなるんです。

そして、またショーでもまりもちゃんがいいのです
もう、マギーともりえの色男を誑かしながら踊るシーンの格好良いこと。そして、娘役率いての踊りの優雅なこと。
でもその中でも、最後のデュエットダンスが美しくて思わず涙。
スモークがたかれた中で、霧矢くんがまりもちゃんのウエストをリフトして回るところが、もう宙に浮いてるようで夢のようでした。二人の呼吸、信頼関係が以前よりももっと強いものになっていて、あうんの呼吸で踊っているのが伝わります。二人だけにしか出来ない、二人だからできる踊り。ああ、いいなあと、ああ、美しいなあと。

それにしても、この前に見たのが宙組のショーだったので、霧矢くんの朗々とした歌声とテクニカルな踊りのなんとここちよいこと(笑)
まさおもみりおも不足ないし、宇月颯(とし)くんの若く張りのある歌声もいいし、で、ダンスはまりもちゃんが魅せてくれるし、本当、月組いいです。
だから、また同じこと繰り返しますが、プロデューサーをなんとかしてください!

ところで、どうでもいい付け足しなんですが、「嵐が丘」を見に行ったとき、育三郎くんが、軽々と平野綾ちゃんを抱き上げたとき、わー、あんな可愛い顔してもやっぱり男のコなんだなあとか変な感想を抱きました。
というのも、今回芝居の方でみりおくんがアナベルを抱き上げるシーンがあって、そこのみりおくんが本当にふんばっていて、歩くのもちょっとよたっていて、思わずがんばれみりお、と思ってしまったのでした
----------------------
と当時書いていたら、まさおになって月組のプロデューサー、かなりいい仕事をしてくださるようになりました
たまき(珠城りょう)さんも、今のところ本公演は外れなしですしね。
でも私は本当にこの頃、霧矢くんとまりもちゃんというトップコンビが好きだったのだなあと実感します。私の第2次宝塚ブームはお2人あってこそ、でした。

そして、残るはちょろっと書いてた宙組の公演です。えとですね、先に言い訳しますと、私は役者はビジュアルよりスキル派でして、そこのところの好みがあんまり宙組と合わないんです。
先に謝っておきます。ごめんなさい