こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

包容力に泣く@ビッグフィッシュ

2月18日(土)17:00~ 日生劇場
川平慈英(エドワード・ブルーム)
浦井健治(ウィル・ブルーム)
霧矢大夢(サンドラ・ブルーム)
赤根那奈(ジョセフィーン・ブルーム)
藤井 隆(ドン・プライス)
JKim(魔女)
深水元基(巨人)
鈴木 福(少年時代のウィル)
鈴木蘭々(ジェニファー)
ROLLY(サーカス団長)

演出 白井晃

この作品を見るにあたって、とても迷いました。
映画を見直すか、見直さずに行くか。
キャバレーは映画が好きすぎて、どうしても舞台に不満が残ることを考えると、いっそ見ないまま、舞台を楽しもうかなあと結論。
いい感じに映画の記憶はふわっとしていたので

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さて、久々の東京遠征です。
そして、チケットは劇場窓口受取だったため、割と早めに劇場に着きました。

なので、せっかくなので、神田沙也加ちゃんのインスタでみたこれ↓↓↓も見に行きました!
https://instagram.com/p/BPog2O6jxsj/

日比谷シャンテの中もビッグフィッシュ一色でテンションあがります。
ああ、日比谷劇場街、いいなあ
そして、久々の日生劇場もステキ!
東京の大劇場で1番好きな劇場です。
横幅広く見やすいし、内装が美しいのです。
私は日生劇場に入ると海の中にいるみたい、といつも感じるので、演目と劇場も素晴らしく一致していました、個人的に。

そして、この演目の日本語版上演で最も素晴らしかったのが、キャスティングでしょう!
もう、慈英さんがぴったりすぎ!
さらに、霧矢さんがすごい!

映画よりも夫婦の愛情を丁寧に描いているので、この2人がうまいと舞台はほとんど成功したも同然です。
グランドホテルの逆です。
あれは演出がすごくて、キャストはそれほど気にならなかったけれど(ちゃぴは凄かったけれどね)、こちらはキャストの力と音楽でねじ伏せてきました。

ということで、ざくっとストーリーを。
エドワードはウィルが産まれた日、大きな魚を釣り上げたという話をはじめとして、自分の人生を面白おかしく語るのが大好きな人間。
ウィルも子どもの頃は、そんな父親の話を楽しく聞いていたが、成長するにつれ、奇想天外すぎる父親の話が真実には思えず、ホラ話ばかり繰り返す父親にうんざりしている。
けれど、父親の死期が近づき、本当の父親を知りたいと、妻のジョセフィーンとともに父親の話を整理し、真実を探ろうとしはじめる。


映画はアメリカお得意の「父親と息子」の物語です。
けれど、舞台はサンドラに肉付けし、夫婦の愛情も描くカタチになっていました。
これがいいかどうかは分からないのですが、サンドラを霧矢さんが演じたため、そのシーンが全て素晴らしかったのです。
まあ、ティム・バートンの映画ですし、映像をそのまま舞台化するには限界があります。
だから、本当は魔女の瞳に映る設定が、わかりやすく水晶玉に映ることになっていたり、少女のジェニファー(これもできるなら少女の方が良かったなー。いいじゃないか、ウィルの子役のコに二役させても。舞台では、ジェニファーがエドワードの高校時代のガールフレンドぽくなってて、エドワードがジェニファー捨てて出て行くぽく見えなくもないのが残念)と出会う町スペクターがまるっとカットされて、エドワードの故郷アシュトンでの話にまとめたとかは、まあ、仕方ないかなと思います。
魔女のJKimさんの歌も格好良くてステキでしたしね

ただ、最大の問題点は、この舞台がなんで「ビッグフィッシュ」てタイトルなのかわからないことです。
映画ではこの辺りを導入で丁寧に描いていて、最後につなげているんですよ。
もうその辺りが本当に映画はうまい。
ブロードウェイの脚本そのものがそうなっているので、この辺は演出も辛かっただろうなあと思います。
ただ、脚本は弄れなくてもセットは弄れるはず。
スペクターの町がないのに、そして、変わりのアシュトンでも一切説明がないのに、なぜか靴がぶら下がったセットがあるのが気になってしょうがなかったです。
あれは再演があればぜひ取り除いていただきたいです。
あと、大事な水仙のシーン。
あれ、もうちょっと舞台ならではの見せ方が欲しかった。
1番うわーとするシーンで、ちゃっちい作り物の水仙にテンション下げられてしまいましたよ。
まあ、慈英さんと霧矢さんのデュエットが素晴らしくて、そちらで感動しましたけどね。
というか、曲が素晴らしいし、歌う人も素晴らしいのだから、よけい、舞台ならではの水仙の見せ方があったんじゃないかと、それを見せてくれるのが演出じゃないかと思います。

二部の戦争の話のシーンも、本当いうとできたら、映画のままシャム双生児の歌手が登場したほうが、最後のお葬式のシーンの説得性が増すのです。
でも!あのシーンの霧矢さんの歌とダンスが素晴らしすぎて、あれがなくなってしまうのは残念すぎるので、あそこはそのままでいいです。
一部のサンドラとエドワードの出会いも映画とは全然違うのですが、サンドラのキレッキレのダンスがチャーミングすぎてステキなので、あれもそのままでいいです。
そして、そう思わせてしまう霧矢さんがすごい。
久々にスターな霧矢さんのパフォーマンスを堪能しました。(堪能しすぎて、物語を追うのを放棄しちゃいました)
これが、舞台でのパフォーマンスのあり方でしょう。そして、こないだのキャバレーの長澤まさみさんの歌にはそこまでの力がなかったのだ、と改めて感じました。

さらに、これも映画にはないのですが、舞台版には近づく死に怯えるエドワードをサンドラが抱いて歌うシーンが秀逸でした。
あのサンドラの慈しみ。
ああ、私はこういう舞台で発せられる包容力や温かさに弱いのだ、ということに気づきました。
そして、私もエドワードになりたい、と心から思い、サンドラの愛に泣きました。
その後、病室で眠りにつくサンドラの横顔が、まるで聖母のように美しく、エドワードのたった1人の人、という存在としてしっかりと物語の根幹にいたのです。

そんなサンドラも、物語の一部であって、エドワードがちゃんと物語の中心にいるのが、慈英さんのすごいところです。
て、いうか、慈英さんのあれは演技なんですか!?
というレベルの、エドワードそのもの、でした。
映画と違って、慈英さんが若者時代から最後まで1人でエドワードを演じるので、よりエドワードという人が息づくのです。
(映画は別にすることで、エドワードの話を作り物っぽくするという意図があると思うので、それはそれで違う良さがあります)
そして、サンドラもなんですが、若者時代から年老いた時まで演じてもどこにも不自然さを感じさせないのです。
演技力、パフォーマンス力、そして、もちろん歌もダンスも何1つ不足のないエンターテイナーぶりにただただ感動でした。

だから、ちょっと浦井くんが損したなーと。
いや、浦井くん、見た目は可愛いし、華やかだし、歌も上手いし、申し分ないんですよ。
でも、動き方とか、滑舌とか、慈英さんと霧矢さんが完璧すぎるがゆえに、ちょっと見劣りしたのですよね。
あと、ウィルが物語の説明役なので、セリフと歌詞が聞き取りづらかったのは残念でした。
今回の舞台をきっかけに、一段と成長されてより素晴らしいミュージカル俳優になられるといいなあと思います。

で、私がわざわざシャンテに写真を撮りにいった赤根奈那さんなんですが、舞台を見ているときは、うん、妊婦のときはちゃんと腰を支えるように手を回して立っているあたりとか、ちゃんと研究してしっかりお芝居してるけど、ちょっとカツラが残念、とか思ってました。
でも、帰宅して映画を見直して、改めて、赤根奈那さんもナイスキャスティングだったことに気づいたのです。
映画のジョセフィーンがね、マリヤン・コティアールでね、可愛いんです、すごく
で、今の日本のミュージカル界でね、あの可愛らしさを大劇場で見せられるって赤根奈那さんか神田沙也加ちゃんしかいませんよ!
大きな劇場で可愛く見せるってのは、もちろん持って生まれたものもいりますが、技術もいるんです。そして、赤根奈那さんはそれに大変長けておられる!
だから、この舞台の勝因は、間違いなくキャスティングです。
後は、私が映画で1番心に残っていたティム・バートンのミューズ、ヘレナ・ボナム・カーターが演じたジェニファー役に適役が見つかれば完璧なだと思います。

できれば、冒頭にビッグフィッシュが婚約指輪を呑み込んで、それを取り戻そうとしたエピソードと、エドワードがビッグフィッシュになって物語そのものになったというエピソードを付け加えてくれたら、舞台版「ビッグフィッシュ」としてよりステキな作品になると思うのですが、ブロードウェイの脚本、いじるの難しいですか、エライ人?

まあでも、エドワードとサンドラの物語として、私は楽しみました。
そして、映画を父親と息子の物語として、ぜひ見ていただきたいと思います。

ところで、この作品、最初からちらしやポスターのデザインがステキだなあとおもっていたのですが、プログラムの表紙も可愛い❤️
https://instagram.com/p/BQQFf99g0Oc/
さらに、グッズが可愛かったです!
このくらい、どの公演でも可愛いグッズを用意してくれたら、物販の売り上げも伸びるんじゃないでしょうか?
あ、私はビンボーなので買えなかったですが、あのプログラム入れは相当欲しかったです