こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

長い助走の果てに@希望荘

私はそこそこ本好きではあるけれど、読書家ではありません。
そんなわけで、本読みたいモードと、読みたくないモードが、波のように交互にやってきます。
今は読みたくないモードに入ってて、早めの誕生日プレゼントにもらったKindleで漫画ばっかり読んでたわけです、勿体ない。
しかし、せっかくKindleという便利グッズを頂いたので、早く小説も読まないと、と思いながら、なかなか読みたいモードに入ってませんでした。

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↑本は紙派だったけれど、使ってみたら、使用感の良さを実感!
新製品のホワイトはもっと普通に文庫本ぽくて可愛いです!
kindleを触ってみた同居人がいたく気に入って、誕生日プレゼントに買いました
 トップ画面の画像がホワイトの方が格好良いです)

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そんな時、母親から
宮部みゆきの杉村三郎最新刊買った?
とLINEが来ました。
それすらもチェックしてなかった自分に腹立てながら、発売日から1週間も遅れて、購入。ファンとしてあるまじき行為です

で、4日に分けてちまちま読んでいたのですが、宮部みゆきの凄いところは、こんなに読みたくないモードの時でも、すらすら読めちゃうんです。
なんなんでしょうか。
そこに宮部みゆきの文章の秘密があるような気がします。

特に、杉村三郎シリーズは第一作目「誰か」を読んだときから大好きでした。あの頃はまだシリーズになるとは思わなかったけれど

誰か ----Somebody
宮部 みゆき
実業之日本社


そこに描かれていたのは、今や大きな問題の一つにもなったけれど、当時それほど知名度もなかった「自転車事故」の事件で、それに絡む姉妹の憎愛といい、いい塩梅に地味で、だから普通の人々がきちんと描かれているところがとてもいいなと感じたのです。
そして、主人公も好きだと思いました。
結婚相手とその生活以外はいたって普通。

けれど、思えば、この1巻目から、主人公・杉村三郎は、妻との違い、「富裕層と庶民」の感覚の違いを述べていました。そして、それにもまた、共感したものです。

この前の三冊と違って、この「希望荘」は「探偵小説」です。

なので、前三冊を知ってた方が色々面白いのは面白いけれど、これはこれで独立して成り立ってるので、これだけ読むのもありだと思います!

むしろ、これが書きたいために「誰か」、「名もなき毒」、「ペテロの葬列」は長い長い前置きじゃなかったんじゃないだろうかとさえ思いました。

名もなき毒
宮部 みゆき
幻冬舎

 

ペテロの葬列
宮部 みゆき
集英社



「希望荘」は4つの連作短編集です。

希望荘
宮部 みゆき
小学館


とうとう探偵になった杉村三郎が、小さな人探しから、殺人事件まで地道に解決していく、実に地味だけどリアルな話が詰まっています。

そして、改めて思います。
宮部みゆきは短編が上手い。
どの話も短いけれど、ざらっとリアルな、普通の人の感情が描かれています
いなくなった近所のおばあさん探しからはじまる、勝手な親子の情。
亡くなった父親のおかしな言動の真実を探る、父子と孫の愛情。そして、人の心が暴走する恐ろしさ。
38歳にしてプータローとなり、実家に帰った杉村三郎がいかに探偵となったかも、実に彼らしく、感じ入るところがありました。
(また兄嫁との微妙な距離感が現実的でいいです。人間てそうだよなあ)
そして、最後は東北の震災とともにはじまる、人間の短絡さ、浅はかさが描かれます。
劇的な展開やひらめきはなく、一つ一つを日々の生活の中で、地道に人間らしく解決にせまっていく様子がとても杉村三郎らしくて、いつまでも続くといいなと期待しています。
「睡蓮」のマスターがついてきてくれたのもちょっと嬉しいです(笑)

この物語は杉村さんが実家に帰っていたくだりを除けば、2010年の秋から2011年の中頃までが舞台になっています。
関係ないんですが、この小説の途中2011年の5月までは、私も東京にいたのだなあと思うと変に感慨深い気がしました。

ところで、私は唯一、宮部みゆきの小説だけはハードカバーで買っています。
そのくらいにはファンですし、その中でも特にこの杉村三郎シリーズが好きなんです。
なのに、「ソロモンの偽証」の文庫版の最後にこの杉村三郎シリーズがくっついているという情報を得たのですが本当ですか!?
ハードカバーで持っているのに、文庫版も買わねばならないなんて

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社



確実に新潮文庫の作戦勝ちですね
せめて、Kindle版、発売されませんかねえ