こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

人生で明るくていい方の半分が終わる日に@40-翼ふたたび

この本を読んだのは刊行日から逆算すると32.5歳の時だったようです。
(先日、健康診断を受けに行ったら39.9歳と表示されたので、早速取り入れてみました)

40 翼ふたたび (講談社文庫)
石田 衣良
講談社



40歳にして、会社からドロップアウトした主人公が、色々な人々と係りながら、中年として生きていく話です。
7つの連作短編集になっていて、最後に前の6つが集結していく感じが堪らなくカタルシスを感じます。
はじめて読んだとき、
うんざりするような状況のまま、人生の半分を折り返してしまった。
(中略)だらだらと際限なく続く先細りの人生である。

と描いていて、なんとなく40歳になることにインパクト感じていたわけです。

ということで、40歳までカウンドダウンが始まった数日前から、
かなり早めの(1ヶ月以上前w)誕生日プレゼントにいただいたKindle

Kindle Paperwhite Wi-Fi、ブラック
Amazon
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にダウンロードして再読してみました。

いやあ、もう、32歳と40歳間近で読むと、迫りくるものが違いますね、良くも悪くも
あの頃、最初の頃の主人公がかわいそう、なんて思っていたけれど、
知名度のある広告代理店で17年間も勤務して、さらにプロデューサーまで上り詰めてたことに、
違う、違うよなあ、とわが身を振り返ると切なくなります
でも、17歳から引きこもったまま40歳になる男性や、40歳までフリーターで生きてきた男性も登場すると、あの頃よりももっと盛大にホッとする自分に、改めて40歳になるんだなあ、と思います。

とりわけ引きこもりの40歳男性の話は、最初読んだときもそうでしたけれど、
彼が自分には壮大な夢がある
と語る夢の内容に、胸がつまります。
それは本当に、多分、引きこもったことのない人たちにはなんでもないことなんです。
なんでもないことが、出来ない。
その苦しさは想像もつきません。
それでも、彼が立ち上がり、夢を成し遂げるところは、やっぱりぐっと来てしまいました。

そして、32歳で読んだときともう一つ違ったのが「病気」のことでした。
個人的なことですが、私は26歳で父親を末期がんで亡くしています。
そして、この2年は祖父母の死が相次ぎました。
私もこの小説の中に出てくる一人のように、
いつかガンで死ぬことを覚悟しているし、
本当にその時が来たら、
自分がどう感じるか、同じように怖くも楽しみでもあるのです。
でも、32歳の時はまだもうちょっと時間があることのように感じていました。
それが、もう目の前の話でもおかしくない年齢になるのだな、と改めて実感したのです。

小説の中に登場する40歳にしてガンになった男性がこういいます。
「おれは四十歳になったとき、もう終わりだと思った。
 人生の明るくて楽しい半分はもう終わっちまった。
 それどころか、金もないし、ガンにもなっちまう。
 でもな、今はこう思う。
 四十歳もそう悪くない。
 まだまだこれからだって。」


彼は類まれな、今私が一番欲しいと思う能力を持った人です。
その人さえも40歳になったときは、そう思ったのだ、と。
確かに25歳から28歳までの私の人生は輝いていました。(お金はなかったけれど)
それまでも、そこに向けて熱く燃え上がっていました。
だから、30歳になったとき、
もう人生は終わったなとか思ったんですけれど、
思いがけず、人と人の出会いがあり、ビンボーでも楽しくて満喫した30代を送ることができました。(結果的にお金はやっぱりなくなったけれど^^;).
だから、今回あらためてこの本を読んで、
40歳もそう悪くない、と思えるといいな、と思います。

ところで、この主人公の事務所が旧歌舞伎座の裏にある設定になっていて、
歌舞伎が好きだからという理由で事務員として働いている20代の女性が登場します。
その女性が「勘三郎さんの襲名公演でお金をつぎ込んだ」というくだりがあって、
ああ、あの頃は、歌舞伎座も今のものではなくて、そして、勘三郎さんも夢いっぱいで
勘三郎」という名前を引き継ぎ、生きて舞台で活躍していらしたんだと思うとグッとくるものがありました。

最初に書かれた頃よりももっと「死」が際立って見えたのが、時の流れのなせる技で、その時代を描写する小説の面白みかもしれません。

そんなわけで、先細りの人生がだらだら続く年齢に本日なりました。
ふらふらしてきた人生のツケで、いまだに新しく仕事をはじめて一年生なのですが、
まあ、なんとか、楽しんで生きていこうと思います。
それと、半分じゃなくて2/3が終わったと信じてます(笑)

今回、この本をKindleにダウンロードするために「石田衣良」と検索したら、
大好きなIWPGシリーズの最新刊出てきて、

憎悪のパレード 池袋ウエストゲートパークXI
石田 衣良
文藝春秋


IWPGシリーズのハードカバーには手を出さないと決めていたのに、思わず、自分への誕生日プレゼントとポチッとしてしまうというKindleのワナにはまってしまいました
これだから、本当、
自分の書いた詞どおりの人生、
「40歳になっても、家も買えない」ですね