こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

ヤメ電と脱博者の言い分とエール、そして祈り

某講座に通っていたころ、イベントに行って勝手にレポートする、というライターの仕事もある、ということを教えていただきました。
しかし、いざ、レポートしてみようと思うと、当たり前だけど難しい!
だから、仕事になるわけですね。よーくわかりました。

ということで、レポートではなく、感想を書きます。

昨日、スタンダードストア心斎橋、という本屋さんのカフェスペースで開催された広告業界という無法地帯で、電通博報堂は何をしているのか」というトークイベントに行ってまいりました。

イベントは、元電通の田中泰延さんが司会、
中川淳一郎さんの著書
電通と博報堂は何をしているのか (星海社新書)
中川 淳一郎
講談社

前田将多さんの著書
広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?
前田 将多
毎日新聞出版

についてのトーク、ということで始められました。
因みに中川淳一郎さんが元博報堂、前田将多さんが元電通です。
そして、電通をやめた人を「ヤメ電」、博報堂をやめた人を「脱博者」と言うそうです。
どうでもいいけど、脱博者という言葉のインパクトがすごい。
そして、司会の泰延さんが、「これを載せるとまずなということは伏せておいて」とおっしゃるのにかぶせるように、「全部載せっちゃっていいんじゃないですか。そんだけ言わなくちゃ1200円も払って土曜日に来てくれたのに申し訳ないですよ」と言っちゃう中川さん。多分シラフで語るって書いてあったのに、中川さんだけビール3杯飲んでましたもんね脱博者、すごいっす

ところで、このイベント、一応、就活生、広告業界の新人、若手の広告人の方々向け、ということでした。
そんなイベントにそのどれでもない私がなぜ赴いたか。

何度か映画感想の時に引用させていただいているので、そんなのも読んであげてるよ、という方はお気づきかもしれませんが、私は今、田中泰延さんの書かれるコラムにはまっています。
さらに「ラ・ラ・ランド」を巡って、映画好きの同居人といろいろありまして、うーんうーんと思っているときにつぶやいたことに泰延さんがこんなオトナの神返信をくださったのです。

惚れました!

さらに、その某講座で講師を務めてくださって、ゲスな最前線の芸能ネタを教えて去る、という面白い授業をしてくださった中川淳一郎さんがご出演ということで、これは行けと指令されているな、と。誰にかは知りませんが笑
私、一応変に真面目なので、唯一存じ上げなかった前田将多さんの著書をKindleで購入し、読んでから行きましたが、読んでいかなくても十分面白い内容だったと思います。2時間笑いっぱなしでしたしね。
集まったのは120名ほど。若者の姿もそれなりに見られましたが、それなりに男女様々、業界の人っぽい方からファン的な方まで様々な方がいらっしゃってました。

話はなんで広告業界に入ったの、ってところからはじまったわけですが、中川さんの答えがまさかの「モテるって聞いたから」。
でも、実際モテるかといったら、そうでもないらしいです。
モテる人は別に電通だろうが博報堂だろうが、他の会社だろうがモテるだろうってことです。
まあ、そう思います。
イケメンってイケメンのプロですもんね。(この件、いつか書きたいなあ)

広告会社って何してるのん?どんなところなん?てお話しもありましたが、それは多分、中川さんと前田さんの著書を読まれる方がわかるかと思います。
あ、あと、ヤメ電で有名人、で名前があがった大宮エリーさんのこのドラマもオススメです。
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まあ、いかにして仕事をサボるかのテクニックはこのイベントの方が伝わったかとは思いますが(主に泰延さんが笑)。
ホワイトボードにみんな「資料探し」と書いて外出しているから「自分探し」と記入してサボったとか、
他の部署と兼務されているときに、A部署のホワイトボードにはB部署と書き、B部署のそれにはA部署と書いてサボったとか、
電通のクリエイティブ部門ではそういうことができるらしいです笑
中川さんも、会社の椅子にジャケットかけとけば身代わりの術が使えたとか仰ってました。

あと、枕営業は本当にあるらしいですよ、CM制作の決定権を持つくらいのエライさんになると。
中川さんの著書で伏字になっていたところが、実名入りで聞けるという特典はありました。
美味しいかは別だけど。私、割とその方好きなので、芸能人って想像より大変、となんか辛くなりました。

エピソード的に面白いところはいっぱいあったのですが、個人的なインパクトは、スピルバーグに電話したくだりでした。
泰延さんが入社したての頃、ジョージ・ルーカススター・ウォーズのタイアップCMに対抗してスピルバーグを使いたい、というクライアントがいたらしいです。
で、スピルバーグにどうやって連絡を取っていいか探したところ、ハリウッド俳優業界名簿みたいなものが当時存在して、そこに住所と電話番号が書かれてあったとのこと。
ということで、スピルバーグに国際電話をかけてみたらしいです。
すると、電話がつながった!
「アー・ユー・スピルバーグ?」と聞くと、「イエススピルバーグ」との回答が!
どうしたらいいですか、と聞くと、(出演料が)高いかどうか確かめろという指示。
「ミスター・スピルバーグ、アー・ユー・エクスペンシブ?」
「イエス、アイ・アム・ベリー・エクスペンシブ」
スピルバーグが答えて電話が切れた

というお話だったのですが、前田さんとか、アメリカの大学卒業していたりするわけですよね。
ということは、泰延さん入社当時でも、電通には英語が話せる人材がいたと思われるのに、なぜ、そんな片言英語で電話をしたのか激しく疑問です。

まあ、これも、結局はクライアントに「スピルバーグにコンタクト取ったけれど、高くて無理だった」という事実を報告することが必要だった、ということなんですが、そういうクライアントをはじめ、上司にしろ、人はなんで怒られることを恐れるのだろうというトピックがありました。

これ、情けないことに私が今、最も悩んでいることなんです。ええ、40歳にもなって。
お三方は人は自分とは関係ないことで怒るのだから、そんなことに疲弊する必要はない、というのが共通の見解でした。
本当にその通りだと思うんですけれどね。
それでも自分のせいで怒っている、と感じるのは結構堪えるものなわけです。

前田さんの著書に、
夜クライアントとの飲み会だから、お前も来るか、と先輩に誘われたとき、アメリカ帰りで新人だった前田さんはバカ正直に「今日デートなんです」というと、先輩が「そうか、じゃあ、いい。お前はまず大阪を好きになれ」と言われた、
というくだりが紹介されているのですが、私はこのエピソードにうっかり目から汁がこぼれました。
お三方のトークの中でも出てきましたが、「よくやったな」とかそういうねぎらいの言葉って大事だなと改めて思いました。
前の会社はハードワークで、仕事ができる人も多くて、いい年で中途採用された身としては、なんとか追いつかなきゃと必死で、それで自分で自分をダメにしたところがあるんですが、それでも、みんな、怒るときはきちんと怒るけれど、誉めてくれたり、助けてくれたりしました。
そして、いいものができたときは、喜んでいる、ということを伝えてくれるクライアントさんがいました。
だから、いまだに好きなんだなと思います。戻りたいとは思いませんが。

でも、そういうことがない人もいる、というのを今、学んでいます。

中川さん、前田さんが今こういった本を書かれた背景にあったのは、高橋まつりさんの過労死でした。
泰延さんも直接面識はなかったけれどtwitterで高橋まつりさんとつながっていて、彼女が死を選ぶ半年ほど前にしたやりとりのことを消化できないままいるとおっしゃっていました。
確かに日本の働き方は変える必要はあるでしょう。でも。
いくら10時で消灯しても、パワハラは数値化できない、というのが前田さんのお言葉でした。
そして、どこから、何がパワハラになるか、というのも、また数値化できないし、個人差があるのです。
結果として残ったのは、彼女の死、であり、彼女が差し伸べられた手を取れないくらいにまで追い詰められていた状況を判断し、無理矢理手を掴んで、そこから引きはがすことができなかった、ということなのです。

逃げてもいい、というメッセージを残し、彼女のための祈りを捧げてイベントは終わりました。
私は逃げつつけた人間として、そして、これからもきっと逃げ続けるだろう人間として、それでも、なんとか生きているよ、と彼女に伝えたかったです。怖いけれど、今のところ何とか生きていけてます。たまに楽しいこともあります。そのことに感謝したひと時でした。

で、サイン会等々があったのですが、Kindleで買ったばっかりに、前田さんにサインしていただけなかったのが、残念です。
紙の本の利点をまた一つ学びました
でも、二次会で前田さんにそのことを告げると、「Kindleの方がわずかだけど著者に入る料金が高いのでありがとうございます」と言っていただきました笑

それにしても二次会すごかったです。
泰延さんはピザのあるところを追いかけつつ、写真を撮りまくってました笑
またこの写真が上手い!
泰延さんも大好きで、私も尊敬しているライターのさえりさんという美女がいるのですが、泰延さんに撮影してもらった写真は、見た目も年齢も全く違う私でも、さえりさん「風」くらいにはなっていました。感動!
今、死んだら、あの写真を遺影にしたいくらいです