こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

天下無双の夢がわからないからクルンテープありがとう@宝塚月組「夢現無双」「クルンテープ」

4/13(土)11:00~ 宝塚大劇場

夢現無双

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宮本武蔵 珠城 りょう
お通 美園 さくら  
佐々木小次郎 美弥 るりか 
沢庵宗彭 光月 るう  
お杉 夏月 都  
柳生石舟斎宗厳 響 れおな  
新免無二斉 紫門 ゆりや
お甲 白雪 さち花
吉野太夫 海乃 美月
本位田又八 月城かなと
吉岡清十郎 暁 千星


脚本・演出 齋藤 吉正

たしか中学の卒業旅行で巌流島にいって、ここが「宮本武蔵佐々木小次郎の対決の場だよ」と教えてもらった記憶があります。

よくわからないまま武蔵と小次郎のキャラがついたキーホルダー的なものを買った記憶も^^;

しかし日本史に疎いまま学生時代を過ごし、今再び日本史を少し勉強しはじめた身なのですが、それでも「宮本武蔵」という人がよくわからない。

日本の歴史の流れに何か大きく関わったわけでもなさそう。

けれども原作小説を読むわけでもなく、大河ドラマを見るわけでもなく、なんならバガボンド

バガボンド コミック 1-37巻セット (モ-ニングKC)

 

さえ未読で、なんの知識のないまま見に行ったことを後悔しました。

一応

stok0101.hatenablog.com

 は見ていたのですが、これは井上ひさしさんがちゃんと人間ドラマ、コメディとして書いててくれていたし、設定も巌流島で小次郎が死んでいないことになっていたしで、武蔵も小次郎もなんか間抜けで可愛くて愛おしいなと感じた記憶があります。

今回の無現無双の話はこうです。

宮本村の武蔵は幼いころから力強く、敵知らずの暴れん坊。

そんな彼を好意的に想うお通と訳あって村を飛び出します。

そして武蔵は「天下無双の剣の達人」を目指し、日々鍛錬し、とうとう世に名をはせた剣の達人・佐々木小次郎との対決に挑むのですが・・・。

 

ということで、ずっと武蔵が「オレは天下無双になるんだ」とか言って、人を斬ったり、反省したり、鍛錬したり、が繰り返されるだけの話になっちゃっているんです、残念なことに。

なんで武蔵が剣の達人を目指すのかはわかるんですけど、正直「武士でもないのに剣の達人になってどーすんの?てかそんな幻みたいな夢追いかけてるだけで生きていけるの?食べていけるの?」という思いが消せないのです。

(すみません、わたしは「男のロマン」を全く理解しない人間です。でも原作小説が日中戦争から太平洋戦争に向かう時代の新聞連載小説だったとのことなので、人々を戦いに鼓舞せざるを得なかったのかもしれないですが)

ここで、先日見たゲキシネ「髑髏城の七人season鳥」のような華麗な殺陣のパフォーマンスでもあれば、「ああ、剣の達人って魅力的!」とか「そうか、武蔵はこのようなプロフェッショナルだったから人々を魅了したのね」とか思えたかもしれないんですけど、宝塚歌劇団であそこまでの殺陣パフォーマンスをやろうと思ったら、相当な月日をかけて訓練するしかありません。

となると、そういう見せ場がつくれない限り、もっと心情面や人柄を描いて、なんならお通とのラブロマンスをメインにもってきて「恋と夢の中で揺れる武蔵」を描いた方がまだおもしろかったんじゃないかと思うと残念というほかありません。

セットも衣装も魅力なく、見せ場も盛り上がりもなく、久々に見ていてつらい時間でした。

 

しかし宝塚にはショーがある!

しかも作・演出は安定の藤井大介先生です。芝居が終わった時点で祈るような気持ちで「大介先生、お願い、この下がりきったテンションをあげて」と思っていたのですが、大介先生は裏切りませんでした。ありがとうございます!

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クルンテープとはタイの首都バンコクの正式名称の略称とのこと。

ということでなんと舞台は「タイ」です。

中近東らへんが舞台になったショーはありましたが、日本以外のアジア圏がショーの舞台っていうのはなかなか珍しいんじゃないでしょうか。

まあプロローグ終わって、最初にムエタイのゆるいシーンがあったときは「ショー、お前もわたしを裏切るのか」というがっかりした気持ちが抑えきれませんでしたが、すぐに「一蓮托生」というトップスター珠城りょうさんと二番手・美弥るりか さんの言葉に尽くせぬほど美しいダンスシーンが繰り広げられました。

そこからは素晴らしいシーンが続いて感涙。

新しくトップ娘役になられた美園さくらさんと若手スターたちの「セ・マニフィーク」が個人的にはとても良かった!

宝塚ショーにテクノミュージックが取り入れられるようになってずいぶん経つのですが、どうしてもわたしには受け入れられない感じを醸し出すものが多かったのです。

そんな中「セ・マニフィーク」という古い宝塚のショーの主題歌をテクノ風にアレンジする、という手法にやられてしまいました。

これなら今のファンも古いファンも楽しめる。たぶん。

ぜひとも他の先生方にもヒップホップやらテクノやらで歌ったり踊ったりアイドルっぽいシーンを作るなら、古い宝塚ショーの誰もが知ってる名曲たちをアレンジして使っていただきたいです。それなら著作権の問題も発生しないし、いいとこだらけじゃないですか?

あとは舞台がタイなので、ミュージカル「王様と私」の名曲「Shall we dance?」が中詰めでさまざまなアレンジで繰り返されたのも、わたし的に大介先生グッジョブ!

王様と私」のストーリーはアジアの文化をバカにするようで大嫌いなのですが、曲はめちゃくちゃいいし大好きなので、こういう楽しいシーンによみがえらせてくれて本当にうれしいです。

あとはデュエットダンスの振り付けがかわいいなあと思っていたら、なんとANJUさんの振り付けだったのですね。さすがです。

その前の黒燕尾群舞に後から入っていく美弥るりかさん、というワンシーンに涙。あの一瞬。あの一瞬を本当にありがとうございます、大介先生。

 

そんなわけで、みやちゃん(美弥るりかさん)大劇場、ご卒業おめでとうございました。卒業されるときは皆さん特別に美しくなられるけれど、今のみやちゃんの美しさはもはや菩薩の域でした。

東京公演でもその神がかった美しさで最後まで観客を魅了してくれることでしょう。

ということで、東京千秋楽のライブビューイングは見に行きたいと思います。美弥るりかの最後の「男役としての美」を見に。