こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

単純なものを少し複雑化することによって起こること@花組「鴛鴦歌合戦」「GRAND MIRAGE!」

8/5(土)15:30~ @宝塚大劇場

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スタッフ
原作 マキノ正博監督・映画「鴛鴦歌合戦」(脚本・江戸川浩二)
潤色・演出 小柳奈穂子
作曲・編曲 手島恭子
振付 尾上菊之丞
殺陣 清家三彦

キャスト
浅井礼三郎    柚香 光        
お春    星風 まどか
峰沢丹波守    永久輝 せあ
おとみ    星空 美咲
道具屋六兵衛    航琉 ひびき
遠山満右衛門    綺城 ひか理
藤尾    美羽 愛

蓮京院    京 三紗        
蘇芳    紫門 ゆりや        
天風院    美風 舞良        
麗姫    春妃 うらら        
平敦盛    帆純 まひろ        
秀千代    聖乃 あすか      

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原作映画はこちらになります。

主演の片岡千恵蔵さんの急病ですごく出番が少なかった結果、峰沢丹波守を演じているディック・ミネさんが最初の方から「ぼーくはわかーい殿様ー🎵」と歌い踊って登場して格好良く、さらにヒロイン・お春ちゃんを見初めてから、お春ちゃんと礼三郎のシーンになるので、わたしはてっきり峰沢丹波守(殿様)が主役だと思って見始めて、途中から違うことがわかり戸惑ったくらいでした。

とはいえ、映画はボーイ・ミーツ・ガールの「これぞザ・ミュージカル映画」という、楽しいもので、時間も69分と素晴らしい仕上がりになっています。

未見の方には、ぜひ、映画の方もおススメしたいです。

 

さてこれを宝塚歌劇でやるぞとなって、「ピッタリ!」と思ったのですが、いざ大劇場公演で上演となると短さと役の少なさが命取りになってしまったのかな、と思います。

今回プロローグとフィナーレも付けているので、役は少なくとも映画そのままでやってしまうという手はあったと思うのですが、宝塚歌劇化にあたって、お家騒動部分を付け足して、役も増やしています。

それによって主役の礼三郎への色づきが濃くなって、こういう当時のミュージカル映画独特のひたすらハッピー感がちょっと薄れ、シリアス味が増えてしまったのが、個人的には残念だなと思いました。

礼三郎とともに、この脚色によって損したかなと思ったのが峰沢丹波守(殿様)。

映画ではあんなに格好良かったのに、お家騒動を起こす原因を背負わされて若干「バカ殿様」の方にふってしまったのが本当にもったいない。

そして「めぐり会いは再び」でも、紅さん演じる従者役がやたらと高い声で演じていたのを思い出すと、今回、殿様をこういう高い声で演じるように演出したのは小柳先生ではないかと思ってしまいました。

世捨て人の雰囲気漂わす色男・礼三郎と、気さくでかっこいい殿様から思われるヒロイン、の図がちょっと崩れてしまったのが残念だったのです。

とはいえ、途中の骨董説明のくだりで平敦盛を登場させて、ショーのような見せ場に仕立て上げたのはさすが!また平敦盛役の帆純まひろさんもその美貌を存分に活かして、美味しい見せ場となっていました。

そして何より星風まどかちゃんが、その歌の実力と個性を存分に活かして、ひたすらかわいかったのが尊かったです!

おとみちゃんの星空美咲さんも歌もうまく、かわいくて、二人でケンカするシーンはかわいいが爆発していて大興奮!二人とも映画の女優さんの言い回しや歌い方などもよく研究していて、本当にチャーミングで素晴らしかったです!

なので、東京公演は永久輝さんの殿様がもうちょっと「かっこいい」寄りに演出しなおしてもらえると嬉しいのですが、なかなかそうもいきませんよね、残念。

それから映画を見ている時は「鴛鴦歌合戦」というタイトルの意味が全くわからず(主題歌ではそれっぽいことが歌われるけれど)、まあこういう踊って歌いあったりしながら結婚してハッピーエンドのエンタメ映画だよ、くらいの意味でつけられたと思っていたものに、がっつり意味を含ませてきたのがいいのか、悪いのか。

歌合戦も多分、登場人物が歌いながらケンカしたりするのが「歌合戦」であって、劇中で述べられるような「歌合戦」という試合的なものは原作映画にはなかった記憶。その辺りも変に気になる造りになっていたのが、ちょっぴりもやりともしたのでした。

でも全体に明るく楽しく、気軽に見られる演目は大事!

お正月公演にこっちのほうがよかったかなあともちょっと思ってしまいました。

 

そしてショー、というかレビューなんですが、これがね、昭和から平成初期に岡田レビューを浴びるように見ていた層と、そうではない層と評価が真っ二つで、それはそれでとても興味深かったです。

わたしは割と、がっつり見ていた層に振り分けられると思うのですが、特に岡田先生のレビューが当時から好きだったわけではなかったので、なるほど、苦手な人の気持ちもわかるなと思いながら見ていました。

とはいえ各場面、既視感がありすぎて、かつ歌も耳馴染みがすごすぎて、そうなるとある程度の満足感を持って見てしまうのですよね。

ただ既視感以上に違和感も感じました。わたしが見ていたころのロマンティックレビューは映像も含めてこんな安っぽい大道具はなかったし、衣装も「マイナスの美学」とは真反対の「盛れるだけ盛る!それがレビューだ!」くらいの重厚感漂うものばっかりだったので、初めて中日劇場で「ル・ポァゾン」再演

stok0101.hatenablog.com

を見たときのようなハード面の弱さに対するがっかり感は否めませんでした。

(シボネー・コンチェルト初演は見られていないのですが、「ラ・カンタータ」では見ていて、この振付を今のダンスを学んだ得意な人たちがやると辛いな、という思いの方が強かったです・・・。そういう意味では「Amour de 99!!-99年の愛- 」で見た「シャンゴ」再演はそう古く思わなかったあたり、パティ―・ストーン氏の振付が優れていたのかなと思います)

これもどうしようもないとはいえ、プロローグの白ベースの虹色がかった衣装に包まれた柚香光さんが、それはもう美しかっただけに、中の人たちはこんなに美しくなっているのに衣装がなぜ・・・、とただただ残念。

デュエットダンスもせっかく音楽が「キスミーケイト」の「So in Love」だったのに、乗り切れないまま終わりました。

パステルカラーのお衣装に娘役さんのつばの大きな帽子は、多分「シトラスの風」以降のロマンティック・レビューだと思うので、その頃にはほとんど宝塚から離れていたわたしには、そこにもトキメキを抱けなかったのでした。

ただ恐ろしいのは、帰っても歌える主題歌!気づいたら「グラン・ミラージュ♪グラン・ミラージュ♪」と口ずさんでいる自分が怖いレビューでした汗