こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

2023年かんげき振り返り

本当は12月に観劇した「ねじまき鳥クロニクル」と宝塚雪組「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル/FROZEN HOLIDAY」の感想も書くつもりだったのですが、忙しさと体調不良とで、時が流れ過ぎてしまいました。。。

そんなわけで2023年末は12/25(月)の体調不良によるめまい→初MRIから始まり、気力で仕事をして、だいたい倒れていました(涙)

とりあえずコロナではなかったのが救いです。

これも記録的に残しておきます。

 

さて2023年の観劇はこんな感じでした。

■12月

ホリプロねじまき鳥クロニクル

宝塚雪組「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル/FROZEN HOLIDAY」

■11月

梅芸「雪組pre 100th anniversary Greatest Dream」×2回

■10月

ケムリ研究室「眠くなっちゃった」

■9月

宝塚月組「フリューゲル-君がくれた翼-」「万華鏡百景色」

■8月

宝塚花組「鴛鴦歌合戦」「GRAND MIRAGE!」

■7月

世田谷パブリックシアター音楽劇「ある馬の物語」

アミューズ「FACTORY GIRLS」再演

■6月

宝塚星組「1789-バスティーユの恋人たち-」

ホリプロ「ファインディング・ネバ―ランド」

■5月

宝塚雪組ライラックの夢路/ジュエル・ド・パリ」

平成中村座姫路城公演「播州皿屋敷/鰯売恋曳網」

■4月

ミュージカル「マリー・キュリー

ナイロン100℃「Don’t freak out

■3月

コクーンプロダクションvol.13「アンナ・カレーニナ

ホリプロ「バンズ・ヴィジット」

■2月

宝塚雪組「ボニー&クライド」

宝塚月組応天の門」「Deep Sea」

■1月

宝塚花組うたかたの恋/ENCHANTEMENT」

東宝エリザベート

 

21回かー!しかも今年、お財布的に厳しかったのが7月に千風カレンさんのサロンコンサート、8月に杜けあきさん×紫ともさんのディナーショーにも行ってることでしょうね・・・。結局1か月、2回は見てる計算になりますね・・・。

とりあえず来年は「目指せ年15回!」を目標にします。

ただサロンコンサート、ディナーショーともに楽しかったので、インスタの感想を記録的に貼っておきます。

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そんな中、とにかくセットと表現方法がすごかったのが、感想をかけていない「ねじまき鳥クロニクル」でした。

インバル・ピントさんのアートとムーブメントが村上春樹の物語を見事に彩っていて、かつ大友良英さんの音楽と共演することでエンターテイメントに仕上げていて、なんとも言えない「すごいものを見た」感。

これを言語化できたら村上春樹になれるのでしょうか。

でもそれ以外に、なんというか、演劇的なもの未体験者も、大好きな人も魅せるセット模型の展示とか、おしゃれなグッズとか、そういうところまで行き届いていたのがさすがでした。

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グッズはこのレベルを全公演に目指してほしいです。

舞台『ねじまき鳥クロニクル』|【公式】ホリプロステージ|チケット情報・販売・購入・予約

一番下にグッズが掲載されていますので、よろしければぜひ見てください。

そしてこれ、もし余裕があれば、原作を読み直して、きちんと感想を書きたかったのですが、難しいかな。

ただせめてあの「人の心の距離だけ机が離れていく」みたいな見せ方ぐらいには、日本の舞台も追いつきたいなあと思いました。

インバル・ピントさんはイスラエルの方なのですが、今イスラエルが悲しいことになっていますね。

実は一番好きだと思った作品は「バンズ・ヴィジット」だったのです。

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本当になんてないことない、普通の人々の一昼夜をエキゾチックな音楽が優しく彩って、知らない間に涙がポロポロこぼれる、そんな作品でした。東京で観劇された方もシアター・ドラマシティで見てほしかった。そして毎週金曜日の夜8時から見たい作品でした。

でも今の現状がこの作品に込められた「ブロードウェイの願い」は、なんてむなしかったのだろうと思うのですが、今もう一度、と言わず2度、3度、見たいと願う作品でもあります。人と人、がふれあえば、分かり合えなくても、なんとなくやっていけることを信じたいから。

 

そして「戦争」ということでいうと、一番考えた公演はやはり「ある馬の物語」でしょうか。

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ルールがある中で幸せや安心感を感じるのは、やはり多くの日本人もそうだと思うので、でもだからそれでいいのだろうか、なんて考えてもしかたのないことを未だに考えます。

 

そんな「ルール」で大きく揺らいだ宝塚歌劇団。故人のご冥福と、キャスト、スタッフ含めて舞台を作り上げる方々にとって、よりよい環境になることを祈るくらいしかできないのが残念です。ただ一ファンとして、特に彩風咲奈さんの卒業は見守りたいと思っています。

 

しんみりしてしまいましたが、今年1番楽しかったのが、平成中村座姫路城公演です。

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初日の昼公演のチケットを取っていただいたのですが、彩雲も出て、お天気も素晴らしくて、めちゃくちゃ晴れやかなムードに包まれながら、本当に楽しいアミューズメント空間を堪能しました!

小倉城の「小笠原騒動」もかつて南座で見て大興奮しただけに行きたかったのですが、30年前の夢「Greatest Dream」がわたしをがっつり掴んでしまって、行けなかったのが残念。でも「Greatest Dream」を選んだことに1ミリの後悔もありません!

 

来年の目標15本とか言いながら、1月はもう「赤と黒」と宝塚星組の「R R R!」の観劇が決まってます。

そしてKERA CROSSとう蝕のチケットも手配済み。

他にも見たい公演もたくさんあるので、チケット取れるかどうかは別として取捨選択が難しいなという感じですが、もろもろがんばりたいなと思います。

最上級の夢の個人的な記録メモ@雪組pre 100th anniversary「Greatest Dream」

11/11(土)12:00~、11/12(日)13:00~ @梅田芸術劇場

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基本的にOG公演は杜けあきさんが出演されるものしか見ない、というスタンスを取っているため、2年前にあった花組月組の100周年記念公演は見ていません。

ただ2組合同でやったものを今回雪組だけで上演して大丈夫だろうか、といういらぬ心配はしていました。

でも、花組月組の合同公演との比較はできませんが、とりあえず私は「大満足」でした。

こういうのはお祭りですし、配信と合わせて3回見て思ったのは、出演者によってその公演がかなり違う、ということでした。

特に2日目のDreamバージョンの2部はほぼ普通にショー!

客観的に見るとこのバージョンの方がショーとして楽しめました。

 

今回は、ここで感想をまとめる、というよりもX(旧Twitter)につぶやいたものを自分のために保管しておきます。

ちなみに私の雪組観劇歴はこんな感じです。

 

1989年3月に「花の指定席」の「ムッシュ・ド・巴里」を見て、杜けあきさまに一目ぼれ、同年8月「ベルサイユのばらアンドレとオスカル編~」で大劇場観劇デビュー。

1992年11-12月公演「忠臣蔵」で杜さんのサヨナラを見送り、卒業するかと思いきや、

1993年10月-12月公演「ブルボンの封印」から何かしら理由があって、「あかねさす紫の花」を除いて、1997年「仮面のロマネスク」までは網羅。

そして理由は思い出せないけれど1998年2月「浅茅が宿」、2001年2月「猛き黄金の国」を見て、渡英をきっかけに宝塚からしばらく離れる。

(ただ和央ようかさんには思入れがあり、宙組はしばしば見に行っていた記憶)

東京で出会った新しい友人からのお誘いにより2009年3月「ZORRO」東京公演より雪組観劇を復活。壮一帆さんの2013年4月「ベルサイユのばら~フェルゼン編~」を除き、それ以降、現在に至るまで雪組本公演は全て観劇。

 

そんなわけで平みちさん時代は見られていないのですが、映像ではもちろん拝見していて、今回は念願の「見られていなかった杜さん二番手時代」を少し体感できたのも喜びでした。

 

12日はかなり良席だったからか、それとも2日目で自分が比較的落ち着いていたからか、それぞれのスターのところで、いろんな箇所からすすり泣きが聞こえて、改めて「ああ、皆さん、それぞれに思い出がよみがえって心震えるのだなあ」と思いました。

1.11日ALL ver.感想メモ

11日はそんなことに気づかないくらい、自分がボロボロに泣きました。

そんな11日のキャスト表

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基本的には配信で見た東京10/21ALL公演と同じ構成でした。

ただ一番違ったのが鮎ゆうきさん、大阪唯一の登場回だったことだと思います。

そんなわけで「だいきほ」のデュエットの代わりにあったのが、これでした。

冒頭から、というのは「瞳の奥に見つけた 瞳の中にささやき 黄昏色のハーフムーン 黄昏色のハーフムーン」という部分です。

これはフィリップのソロで銀橋の歌だったため、杜さんの芸能生活40周年記念コンサートでも、この後からの「まぶしいまなざし~♪」からしか歌われていなかったんですよね。

ここが入って、鮎ちゃん登場して、フルコーラス歌うって、まあ泣きますよね。

で確か、間にこういう楽しいシーンが入って

おそらく私が一番通った公演が音月桂さん(きむくん)の「ロミジュリ」でした。

まあそれは東日本大震災があって、東京公演の後半戦、当たり前だけど大幅に観客が減って、当時、神田勤めだったこともあって、会社帰りに気軽に見に行けるから、応援の意味も込めてなるべく見ようというのはありました。でもそれ以前に雪組の「ロミジュリ」が好きだったし、きむくんのロミオが好きすぎた!

杜さんが私にとって「容姿は好みではないし、男役としては格好良いと思ったことは一度もないけれども、ゴッドマザー的存在で一生お慕い申し上げる」存在なら、きむくんは本当に「めっちゃくちゃ好みの見た目で、男役でも女役でもとにかく好き」な存在なんです。

 

そして前後しますが、今回鮎ちゃんの登場とともに嬉しかったのが、高嶺ふぶきさんの復活!新人公演で「仮面のロマネスク」主演をやられた貴城けいさん(かしげちゃん)が歌われていた部分を本家本元の高嶺ふぶきさん(ユキちゃん)が、美穂圭子さんをお相手に歌われて、お変わりない歌声に感動。

この後のトークが下記です。

かしげちゃんが「私、東京では代わりに歌わせていただいていたんですけれど、今日聞いて本物だーと思って」みたいなことをお話しされると、和央ようかさん(タカコ)も「私も代役やってるとこあるけど、稽古で聞いて本物だと思った」みたいな会話に、ユキちゃんが、「二人とも出てたじゃないの」と、はしゃぐ子ども二人組を見るような感じでおっしゃられたのが、めっちゃくちゃ微笑ましかったのを思い出しました。

記憶が吹っ飛ぶくらい、この日捕らわれたのが、一部最後らへんの「華麗なるギャツビー」。

「デイジー」がBGMで鳴って、鮎ちゃんがデイジーそのものの髪型に(イメージ↓)

ヘアスタイルチェンジしているから、先述した杜さんの「芸能生活40周年記念コンサート」で歌われた「過ぎた日の思い出」をデュエットされるのかなと思っていたら、まさかのその髪型で少女時代のデイジーのセリフを言ったんですよ!

ギャツビーが自分の人生の目標を決めた瞬間、が振り返られたまま「朝日の昇る前に」がはじまって、幻のようにデイジーが去ったり、また登場したりする。もう一度ギャツビーと目を合わすことはないままに。この「朝日の昇る前に」の世界観が、宝塚の「華麗なるギャツビー」の本質そのものをガツンと見せられた気がしたのです。

再演を繰り返しても見られなかったものが、そして見たかったものが、凝縮して目の前に現れた感じでもう涙が止まりませんでした。

二部のトークタイムでも、杜さんご自身「ギャツビーとデイジーとして再び舞台に立てたのが嬉しい。今日はごめんなさい、二人だけの世界でした」というようなお話しがありました。

杜ちゃんが二番手時代はこんな感じだったのかな、と想像できて、それもまた感謝でした。

そうそうユキちゃんもいたからこそ、忠臣蔵は皆さんに四十七士として後ろから降りてきてほしかったなーとは、やっぱり思いました。

でも「忠臣蔵」の「花に散り雪に散り」も歌う前に下記のセリフ入りで、これも多分、公演以外ではこういう形で歌われることはなかった気がします。

殿、お形見の九寸五分、確かに頂戴仕りました。殿の無念のご最期聞き及びましたる内蔵助の一念は、吉良殿への復讐、さらには理不尽な幕府への反抗・・・・・・。

心を一つにする同志と相語らって、目的を果たさんことを、大石内蔵助良雄、お誓い申し上げ奉る

隠忍いかに久しくとも 仕遂げることのいかに難くとも 妨げるものいかに多くとも

この辺りに私の時空の歪みが出ていて、えまおゆうさん(ブンちゃん)、成瀬こうきさん(おっちょん)、朝海ひかるさん(コム)ちゃん辺りはすごい下級生という認識なんですけど、

壮さんは私が再び定期的に宝塚を見始めた頃すでに花組の二番手さんだったし、ご本人のパブリックイメージもあって、器の大きな頼れる上級生、にしか見えてなかったので、その辺も楽しかったです。てか、壮さんも絶対「忠臣蔵」で四十七士になりたかったですよね!(←同年代なのでそうあってほしいという勝手な気持ち笑)

そういえば、ブンちゃん、おっちょん、コムまあトークタイムは、ブンちゃんが「何か楽しい思い出を、失敗の思い出とか」と仰って、ブンちゃんのお披露目でサヨナラ公演「追憶のバルセロナ」初日、一度退場して戻ってきてセリフを言うはずだったのに、戻ってこなかった、というお話しでした。

舞台にはブンちゃんとおっちょんがいたらしく、二人して「コム―!」と思いながら、とにかくどうしようもないので飛ばして進めて、おっちょんが退場してすぐコムちゃんを探しにいったら、もう次の衣裳に着替え済みで再度戻れる状況ではなく、でも初日だったからお客様には失敗とは映らず、なんなら次の日から初日見たお客様は正塚先生がいいセリフ足したわね、と思われたかもしれないと笑い話に。

当時の焦る気持ちを思い出したかのようなお二人に、飄々とコムちゃんが「なんでみんな、(退場した)私に言ってくれないの」というと、おっちょんが「初日だったから、みんな自分のことでいっぱい、いっぱいだったんだよ」と突っ込んだところ、「だから私もいっぱいいっぱいで、あー出番終わった、次に着替えなきゃって思ってた」と、これまた飄々と。朝海ひかるさんの大物ぶりを見ました。ついでに「追憶のバルセロナ」初演が見てみたくなりました。

そして、この日の極めつけはカーテンコールでのこれでした。

2人の世界に入る二人に、出演者たちがどんどん後ずさっていって、杜ちゃんが「いやいやみんな帰ってきて」みたいなやりとりがあったような記憶があったりなかったりしますが、本当にこれはご褒美だなと思いました。

これ今思うと、もし大阪でも神奈美帆さん(やっちゃん)が出演されていたら、ユキちゃんとの同期降りも見られたかもだったんだなあ、と今さら気づきました。

 

2.12日Dream ver.感想メモ

で、二日目です。

ちなみにALLバージョンで恒例の「日本物コーナー」はありませんでした。

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ただ「リオ・デ・ブラボー!」、愛原実花(みなこ)ちゃんは出なかったのはなんでだろう、とは気になりました。出演順の都合だったんですかね。

アランチャ→ラテンラバーは杜さんの「芸能生活40周年記念コンサート」でもやられていたのですが、この時、私が見た回が紫ともさん(トモちゃん)のセリフ間違いとかがあったので、完璧な再現シーンに泣きました。

しかも前日はトモちゃん一人で階段の上から歌っておりていたのに、上手から登場して、ルディからアランチャの枝を受け取るなんて、泣くしかない!

もうあのセットが見えました。感動。。。

その前にこういうシーンもあって、ほっこりしてた直後だったのに衝撃が強すぎました。

ここでまた私の中の時空の歪みが発生。

私が復活して最初に見た「ZORRO」は白羽ゆりさん(トナミちゃん)のサヨナラ公演で、おきゃんなトナミちゃんが最高に可愛かった記憶があるのですが、トナミちゃんが「娘役に憧れて宝塚に入ったのに、最後に男装って・・・」みたいなお言葉。あと「男役さんって衣装に着ける小道具が多いんだと思った」というようなこともおっしゃってました。

彩吹真央さん(ゆみこ)はこの日が初日で「胸いっぱいで感情の行き来がすごい」みたいなことをおっしゃってましたが、見ている側としては水さんがゆみこがいることで、すごくリラックスして喋っているように見えて、微笑ましかったです。

逆に成瀬こうきさん(おっちょん)はこの日が千秋楽でした。

全日程出演で奮闘している上級生娘役さんお二人のスカーレットは、お二人とも美しく、お上手で本当にすばらしかったです。

そしてなんと一部の最後が「忠臣蔵」で締め!

もちろん「朝日の~」も歌われたので、杜さんの持ち歌、ほぼ終わりでは?と思われた二部が面白かった!

二部の初めは前日と同じくトモちゃんとの「深川」で。

私はこれを、本公演(松本悠里先生お相手)、OG公演(星奈優里さんお相手)、杜さん芸能生活40周年記念コンサート(同期生で日本舞踊家五月梨世さん)と踊られているのを見たことがあるのですが、個人的にはトモちゃんとの踊りが一番好きでした。途中でお互いの肩を叩いてクルっと回る振付があるのですが、ここのトモちゃんの表情がうまい!粋でステキ!それを受ける杜ちゃんもいなせな表情で、江戸時代のカップル感漂って、とても楽しかったです。

で、この後から黒の衣装の上からいろどりどりのレースの上着を着て、ノバ・ボサ・ノバのメドレーがはじまりました!

私は「ノバ・ボサ・ノバ」は2011年の星組版しか見ていないので、恐らく当時役替わりでいろいろやった人たちが、その役の歌を歌われてたと思うのですが、その辺はわからず、残念。

でもやっぱり単純に「ノバ・ボサ・ノバ」メドレーは楽しくて、美穂さんのシスターマーマに未来優希(はまこ)さんのルーア神父という歌うまコンビも、うまいわ、チャーミングだわ、自然だわでステキだったし、なんといっても月影瞳さん(グンちゃん)のエストレーラが最高でした!そして、はまこさんの「ビバサンバ」はもちろん圧巻。

その後のトークは、たしか朝海ひかるさん、成瀬こうきさん、水夏希さん、壮一帆さんだったような。ビバサンバのバックダンサーの振付で出てこられて、今日一踊った、しんどい、的なコメントがあったのは覚えているのですが、もう一回別にもしかしたらトークがあって、そこと混ざっているかもしれません、すみません。

水さんと壮さん、ノバボサノバ出てないですものね。

とりあえず、ノバボサノバは、コムちゃんとおっちょんは役替わりがあったというお話しだったのですが、コムちゃん、水さん、壮さんだと「スサノオ」が思い出深いという話になり、水さんがアオセトナ役の有名な歌「ほーしーいものを言ってごらん」という一節を歌われると他のみんなが、娘役さんがわりになって「あーあ」と拝むという、なかなかレアな光景。

そしてこの日が千秋楽のおっちょんへは、「なんかおっちょんのサヨナラ公演みたいに寂しい」とコムちゃん。「2回目のサヨナラ公演?」というワードにみんながはまって、でもおっちょんもかなり涙腺にきている旨を話されて、本当に出られている皆さんにとっても、楽しい公演だったんだなと感じました。

 

しかしどこかで杜ちゃんが、全日程出演の娘役さんたち引き連れて「ワンノートサンバ」を歌われたのですが、衣装的にこの近辺だったはずなんですが、もう全く思い出せません・・・汗

トモちゃんは歌われた後、衣装変えで一旦退場して、グンちゃん、舞風りらさん(まあちゃん)、愛加あゆさん(あゆっち)と杜さんでトーク。娘役の皆さんに盛り立てていただいて、久々の男役の醍醐味を堪能しています、と杜さん。

それぞれの「旦那さん(相手役さん)は?」というご質問は、恐らく東京と一緒だったと思います。杜さん曰く「娘役さんが相手役さんのことを話す姿がすごくステキに見えるから」とのこと。

グンちゃんの相手役は轟悠さんで、杜さんにとっては「かわいいかわいい下級生」とのこと。グンちゃんが轟さんに丁寧に教えてもらったと語る日本物、日本舞踊は、また杜さんから受け継がれたものでもあるよなと。ただちょっと杜さんが轟さんのことを3ヵ月だけ呼んでいたという愛称があれで、うん、それは気をつけた方がいい、とは思いました。 

でもトドちゃんも出ればよかったのに、という杜さんからの連絡には、轟さんから「かりんちょさん(杜さんのこと)、私はもう舞台には立たないんですよ」とお返事があったことが、杜さんから紹介されて、ああお話しされたんだと妙な感動。

そういえば最初の袖へのコムちゃん呼びかけで、「同じ仙台出身の宝塚卒業生はもう姪みたいなものですよ」というお言葉があったのですが、まあちゃんの相手役さんがコムちゃん。「ということは、私の姪のお嫁さん。親戚みたいなものですね。でも姪のお嫁さん?」な発言でも、まあちゃんは「嬉しいです!」とニコニコ。杜さんの方ばっかり見てコムちゃんとのことを話すまあちゃんに、途中で杜さんが「まあちゃん、お客様の方見て話そうか」と向きを変える一幕も。今回コムちゃんが大阪で初参加だったので、やっとデュエットを、というお話しに「そうだ!その歌のどこかの部分が大好きだって話してたよね。それを今日見ようと思っていたのに忘れてた、ごめん」と杜さん。汗

で、あゆっちに移るとあゆっちが語る前に「思い出した!大好きな大好きな壮さんだ!」と杜さん。えーと、あゆっち、どのくらい東京で壮さんのお話ししてたんでしょうか。笑

しかしそれでも壮さん大好きを語るあゆっちが可愛くてたまりませんでした。

そこに衣装替えのすんだトモちゃんが「私はかりんちょさん(杜さんのこと)だけ見つめてますよ」的なお言葉とともに登場。杜さんは「娘役さんたちの内助の功に助けられて、私たち男役があります」というような言葉とともに、トモちゃんを階段へエスコート。

から下のメモ部分につながった記憶なんですが、違っているかも。

トモちゃんは卒業後、ジャズシンガーもされていて、実はトモちゃんの歌をジャズクラブに聞きに行ったときにも「what a woderful world」を歌われていました。その際はジャズアレンジがされていたのですが、今回はなんと階段に座ってゆったりと歌われていて、その大人の雰囲気に、「ああ、この人が私がずっと憧れ続けてきた女性だ」と改めて思いました。

しかも夏の杜さんとのディナーショーでもお召しになられていた長袖黒シースルー生地に金色の柄が全体に散りばめられているロングドレスが、本当にお似合いでステキで、「オトナの女」の魅力を爆発させていました。

杜さんの「Night&Day」は初めて聞いたくらい、やっぱり当時は大浦みずきさん(ナツメさん、なーちゃん)の持ち歌的な感覚があって、杜さんも杜さんの歌い方ながら、かなりナツメさんに寄せてた感じがしました。

ニューヨーク・ニューヨーク」もこの曲で踊るナツメさんと毬藻えりさんのデュエットダンスが大好きだったので、それをゆみこがその歌唱力をぞんぶんに響き渡らせて歌ってくれて感動。

からの水さんの曲がナツメさんが大好きでよく歌っていた歌と聞いていた曲だったので、ここもかなりの感涙ポイントでした。

そういえば水さんはご自分の持ち歌「ゴールド・フィンガー」では、沙月あいなさん、笙乃茅桜さんのダンサー娘役さん2人をお相手にアルゼンチンタンゴ風に踊る部分も多く、よりショー感を増してくれました。

元々配信のない回でしたが、これは曲の著作権的に円盤にもならないなと思うくらいの、充実の内容だったので、本当に見られたことに重ねて感謝します。

1日目のカーテンコールでは、笑いがツボって耐えられなくなっていたモサクさんを杜さんが支えるところと、ユキちゃんと懐かしそうに眼差しを交わしあう姿がステキだったのですが、2日目のカーテンコールは、杜ちゃんが、「嬉しいねー、タカコ」とかタカコに振るたびに、タカコがビックリしたように「はいっ!嬉しいです!」みたいな感じで答えるのが面白かったです。タカコにとっては、下級生だった頃の雲の上の「トップさん」なんだな、と。

そしてタカコ→トモちゃん→杜さんで降りてこられたのも、学年順でありながらも、トモちゃんの「トップ娘役」姿的なものを見られて嬉しかったです。

 

そんなわけで二日間があまりに楽しかったので、調子に乗って円盤買っちゃいそうです。

www.umegei.com

ただセットになっている花月版には、ナツメさんはいないのだな、と思うと、杜さんが生きてお元気でいらしている間にこの公演があったこと、そしてそれを見られてたことに、またまた感謝なのでした。

悪夢か、美しい幻想か@ケムリ研究室「眠くなっちゃった」

10/26(土) 17:30〜 @兵庫県立芸術文化センター 中ホール

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作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演及び配役

ノーラ 緒川たまき

リュリュ 北村有起哉

ヨルコ他 音尾琢真

ナスカ他 奈緒

シグネ他 水野美紀

バンカーベック近藤公園

ブービー/モデスタ他 松永玲子

ダグ/ナイフ投げ師他 福田転球

アルマ他 平田敦子

アーチー他 永田崇人

サーカスの道化師他 小野寺修二

シグネの夫他 斉藤悠

サーカスの道化師/修道女 藤田桃子

ロミー他 依田朋子

ゴーガ他 山内圭哉

ナンダ/マグースト(門番)他 野間口徹

ウルスラ他 犬山イヌコ

ボルトーヴォリ他 篠井英介

チモニー他 木野花

声の出演:高野志穂 武谷公族 小松利昌 日暮誠志

 

事前に「レトロなSF的作品」という情報は入れていたのですが、実際見てみると、確かにSF的かもしれないけれども、わたしが見るようになってからのケラさま作品はほとんどが「国も時代も特定されないどこか」ということが多かったので、今回の作品も特別に「SF感」ということを感じることはありませんでした。

まあ確かに「目に見えない支配者」と管理された「荒廃した社会」はSF的なのかもしれない。でもそれは今わたしたちがいる現実のようでもあって、その部分では少し背筋が凍るようなところもありました。

 

物語は赤ん坊を抱いた母親が、「管理局」の門番に「赤ん坊にミルクを」と訴えるところから始まります。

びっくりするくらい、よくあるシチュエーションからはじまった物語は、混乱するくらいさまざまな要素と絡み合っていきます。

だから多分、観客ごとに受け取るものや印象に残っている部分が違うだろうなと、たいていの演劇はそうですが、それをより感じる作品でもありました。

わたしの場合は、いつも通りすばらしいプロジェクションマッピングのオープニングが終わった後、緒川たまきさん演じるノーラが「キャバレー」のサリー

のような衣装でそこに立っていたところから、受け取るものがそちらになったような気がします。

まずここの緒川たまきさんが本当に色っぽく美しかった。美しく哀しみを湛えていた。

彼女の苦悩の1つがここで示されて、それが悪夢になって現実とつながっていく過程で、彼女の常識から少しずれたような純粋さ、真っ直ぐさがある性格に魅せられます。

ノーラをはじめ、彼女たちが生きる現実は厳しいけれども、その中で恋なども描かれ、どんな状況であれ人の心は変わらないのだなあと思ったりしました。

ある時から「記憶が消えてしまう」という現象が発生するのですが、いびつに依存しあった母と息子の、息子から「母の記憶」が消されてしまったとき、母親はもう生きていけなくなってしまう。そしてノーラの元夫とのシーンでやり取りされるように「忘れること」は大切かもしれない、と提示されます。でも忘れた方の息子も「親子の絆」という鎖から解放されながらも、良くなっているようには見えない。人の心の弱さというのを見ながら、猥雑なシーンもあって、世界が少しずつ変わっている様子は、やっぱりなんとなく映画の「キャバレー」を思い出したのです。

 

ケラさまの作品は本当にいつも舞台セットも素晴らしいのですが、今回はそれが特に、芝居だけではなく、音楽にも乗って踊るように変化していて、ある種ショー的、ミュージカル的に見えたせいかもしれません。

それにしても、その二つのシーンを行ったり来たりするセットのリズムは本当にすばらしかったです。

 

物語は、神の否定から自由を知り、でもそれゆえに何か支えどころを失っていったり、普通の暮らしが一変したりしながら、なんとなく進んでいき、全員がどこか狂気を孕んでいる状態で、どんどんと世界が歪んでいき、1人の欲望が世界の一部分を覆いつくしてしまいます。

そしてその魔の手はノーラにも降りかかる。彼女はリュリュに押し切られる形で逃亡生活を送るのですが、今年大ヒットしたドラマ「VIVANT」

の監督が話されていたように「何かから逃げる」というのは見ていて単純に面白い。ドキドキします。

そんな吊り橋効果もあいまって、ノーラとリュリュはお互いに同じだった部分を知り、心を寄せていく。

さらにこの行程で映し出される逃亡先のどこかの港のセットがまた、さびれているのに、どこか美しいのです。

ただ現実は容赦ない。リュリュもノーラもそこから逃げられることはないのです。

最終的に責任を取らされるリュリュ、そして記憶を奪われるノーラ。

でもそのノーラの記憶が、ノーラの記憶を欲しがった男を破壊するのです。

破壊するほどのノーラの記憶、そこまでの人生の凄絶さを感じるからこそ、あの史上最強に美しいシーンと最後のセリフが、これまで見ていた全ての出来事を忘れることはできないけれど、浄化される気がしました。

眠ると悪夢を見るから眠れない、眠りたくないと訴えていた女が、記憶を奪われた今、やっと純粋に眠れるのだ、と思うと、それはとても幸せなことのような気がして、見終わった後は、なんとなく幸せな気持ちに満ちていたのが本当に不思議なお芝居でした。

 

キャストは本当にみんな魅力的で、その中でも水野美紀さんが終始格好良くて、緒川たまきさんのノーラとすごくステキな対比を放っていたと思います。

いろんなことが起こる芝居だからこそ、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目を見たら、それごとにいろんな感想を感じそうな作品でしたが、その1回目を大事にしたいような気持ちにもなるあたり、本当にうまいなと思います。

 

そして、ボルトーヴォリの歌う「九官鳥の歌」の絶妙さといい、雨の中のノーラとナスカのダンスシーンも美しさといい、美術さえも音楽とリズムとこれほど溶け合っているのだから、ケラさんの「ミュージカル」も一度ぜひ見たいなと改めて思いました。

単純なものを少し複雑化することによって起こること@花組「鴛鴦歌合戦」「GRAND MIRAGE!」

8/5(土)15:30~ @宝塚大劇場

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スタッフ
原作 マキノ正博監督・映画「鴛鴦歌合戦」(脚本・江戸川浩二)
潤色・演出 小柳奈穂子
作曲・編曲 手島恭子
振付 尾上菊之丞
殺陣 清家三彦

キャスト
浅井礼三郎    柚香 光        
お春    星風 まどか
峰沢丹波守    永久輝 せあ
おとみ    星空 美咲
道具屋六兵衛    航琉 ひびき
遠山満右衛門    綺城 ひか理
藤尾    美羽 愛

蓮京院    京 三紗        
蘇芳    紫門 ゆりや        
天風院    美風 舞良        
麗姫    春妃 うらら        
平敦盛    帆純 まひろ        
秀千代    聖乃 あすか      

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原作映画はこちらになります。

主演の片岡千恵蔵さんの急病ですごく出番が少なかった結果、峰沢丹波守を演じているディック・ミネさんが最初の方から「ぼーくはわかーい殿様ー🎵」と歌い踊って登場して格好良く、さらにヒロイン・お春ちゃんを見初めてから、お春ちゃんと礼三郎のシーンになるので、わたしはてっきり峰沢丹波守(殿様)が主役だと思って見始めて、途中から違うことがわかり戸惑ったくらいでした。

とはいえ、映画はボーイ・ミーツ・ガールの「これぞザ・ミュージカル映画」という、楽しいもので、時間も69分と素晴らしい仕上がりになっています。

未見の方には、ぜひ、映画の方もおススメしたいです。

 

さてこれを宝塚歌劇でやるぞとなって、「ピッタリ!」と思ったのですが、いざ大劇場公演で上演となると短さと役の少なさが命取りになってしまったのかな、と思います。

今回プロローグとフィナーレも付けているので、役は少なくとも映画そのままでやってしまうという手はあったと思うのですが、宝塚歌劇化にあたって、お家騒動部分を付け足して、役も増やしています。

それによって主役の礼三郎への色づきが濃くなって、こういう当時のミュージカル映画独特のひたすらハッピー感がちょっと薄れ、シリアス味が増えてしまったのが、個人的には残念だなと思いました。

礼三郎とともに、この脚色によって損したかなと思ったのが峰沢丹波守(殿様)。

映画ではあんなに格好良かったのに、お家騒動を起こす原因を背負わされて若干「バカ殿様」の方にふってしまったのが本当にもったいない。

そして「めぐり会いは再び」でも、紅さん演じる従者役がやたらと高い声で演じていたのを思い出すと、今回、殿様をこういう高い声で演じるように演出したのは小柳先生ではないかと思ってしまいました。

世捨て人の雰囲気漂わす色男・礼三郎と、気さくでかっこいい殿様から思われるヒロイン、の図がちょっと崩れてしまったのが残念だったのです。

とはいえ、途中の骨董説明のくだりで平敦盛を登場させて、ショーのような見せ場に仕立て上げたのはさすが!また平敦盛役の帆純まひろさんもその美貌を存分に活かして、美味しい見せ場となっていました。

そして何より星風まどかちゃんが、その歌の実力と個性を存分に活かして、ひたすらかわいかったのが尊かったです!

おとみちゃんの星空美咲さんも歌もうまく、かわいくて、二人でケンカするシーンはかわいいが爆発していて大興奮!二人とも映画の女優さんの言い回しや歌い方などもよく研究していて、本当にチャーミングで素晴らしかったです!

なので、東京公演は永久輝さんの殿様がもうちょっと「かっこいい」寄りに演出しなおしてもらえると嬉しいのですが、なかなかそうもいきませんよね、残念。

それから映画を見ている時は「鴛鴦歌合戦」というタイトルの意味が全くわからず(主題歌ではそれっぽいことが歌われるけれど)、まあこういう踊って歌いあったりしながら結婚してハッピーエンドのエンタメ映画だよ、くらいの意味でつけられたと思っていたものに、がっつり意味を含ませてきたのがいいのか、悪いのか。

歌合戦も多分、登場人物が歌いながらケンカしたりするのが「歌合戦」であって、劇中で述べられるような「歌合戦」という試合的なものは原作映画にはなかった記憶。その辺りも変に気になる造りになっていたのが、ちょっぴりもやりともしたのでした。

でも全体に明るく楽しく、気軽に見られる演目は大事!

お正月公演にこっちのほうがよかったかなあともちょっと思ってしまいました。

 

そしてショー、というかレビューなんですが、これがね、昭和から平成初期に岡田レビューを浴びるように見ていた層と、そうではない層と評価が真っ二つで、それはそれでとても興味深かったです。

わたしは割と、がっつり見ていた層に振り分けられると思うのですが、特に岡田先生のレビューが当時から好きだったわけではなかったので、なるほど、苦手な人の気持ちもわかるなと思いながら見ていました。

とはいえ各場面、既視感がありすぎて、かつ歌も耳馴染みがすごすぎて、そうなるとある程度の満足感を持って見てしまうのですよね。

ただ既視感以上に違和感も感じました。わたしが見ていたころのロマンティックレビューは映像も含めてこんな安っぽい大道具はなかったし、衣装も「マイナスの美学」とは真反対の「盛れるだけ盛る!それがレビューだ!」くらいの重厚感漂うものばっかりだったので、初めて中日劇場で「ル・ポァゾン」再演

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を見たときのようなハード面の弱さに対するがっかり感は否めませんでした。

(シボネー・コンチェルト初演は見られていないのですが、「ラ・カンタータ」では見ていて、この振付を今のダンスを学んだ得意な人たちがやると辛いな、という思いの方が強かったです・・・。そういう意味では「Amour de 99!!-99年の愛- 」で見た「シャンゴ」再演はそう古く思わなかったあたり、パティ―・ストーン氏の振付が優れていたのかなと思います)

これもどうしようもないとはいえ、プロローグの白ベースの虹色がかった衣装に包まれた柚香光さんが、それはもう美しかっただけに、中の人たちはこんなに美しくなっているのに衣装がなぜ・・・、とただただ残念。

デュエットダンスもせっかく音楽が「キスミーケイト」の「So in Love」だったのに、乗り切れないまま終わりました。

パステルカラーのお衣装に娘役さんのつばの大きな帽子は、多分「シトラスの風」以降のロマンティック・レビューだと思うので、その頃にはほとんど宝塚から離れていたわたしには、そこにもトキメキを抱けなかったのでした。

ただ恐ろしいのは、帰っても歌える主題歌!気づいたら「グラン・ミラージュ♪グラン・ミラージュ♪」と口ずさんでいる自分が怖いレビューでした汗

支配下の自由@世田谷パブリックシアター音楽劇「ある馬の物語」

7/22(土)13:00~ 兵庫県立芸術文化センター 中ホール

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【原作】レフ・トルストイ
【脚本・音楽】マルク・ロゾフスキー
【詞】ユーリー・リャシェンツェフ
【翻訳】堀江新二
【訳詞・音楽監督】国広和毅

【上演台本・演出】白井晃

【出演】
ホルストメール 成河 
セルプホフスキー公爵 別所哲也 
牡馬/伯爵他 小西遼生 
牝馬/マチエ他 音月桂
大森博史 小宮孝泰 春海四方 小柳友
浅川文也 吉﨑裕哉 山口将太朗 天野勝仁 須田拓未
穴田有里 山根海音 小林風花 永石千尋 熊澤沙穂

【演奏】
小森慶子(S.sax.)ハラナツコ(A.sax.) 村上大輔(T.sax.) 上原弘子(B.sax.)

【美術】松井るみ
【照明】齋藤茂男
【音響】井上正弘
【振付】山田うん

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トルストイ原作の「ホルストメール」を1975年にレニングラード(現サンクトペテルブルグ)で上演された作品の潤色とのことでしたが、トルストイが生きたのが帝政ロシア時代から第一次ロシア革命、そして上演されたのがソビエト連邦だった時代、ということも思うと、さらに終わっていろいろなことを考える作品だったなと思います。


本来2020年東京オリンピックで世田谷区にある「馬事公苑」が馬術競技の会場だったため、オリンピックへのカウンターパンチという意味を込めて上演しようと考えられていたというこの公演。
コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻が続く中、当初とは違う気持ちで一から作られたと演出の白井晃さんがおっしゃっていました。

 

物語は一匹の年老いた牡馬の過去への振り語りというカタチで始まります。
その馬は俊足だったけれど生まれつきまだら模様だったため、冷遇されて育ちます。
けれども同じ馬場の牝馬に恋し、それがきっかけで去勢されてしまい、それから周囲を見つめ考えるということを始めます。
そんな彼を見初めた公爵との生活、その後の生き様が描かれる作品でした。

 

これも何度も書いているのですが、「最初のシーンで客席をその世界観に取り込むこと」というのはとても重要だと私は思っています。
この作品はそれが、とても強烈で素晴らしかったのです。
工事現場のようなセット、働く人々から、ビニール袋に包まれる成河さん。
それがクレーンで持ち上げられて、それを破って飛び出す一匹の馬のヴィジュアルは生誕のようでもあり驚きに満ちていて、一瞬にして物語に引き込まれました。
そしてこれはホルストメールを成河さんが演じたからこそ、できたものだとも思いました。

老いたホルストメールが、過去を語ると若返り、また語るときに老いる。
その語り、若さと老いの演じ分けのスキルのすばらしさ。
馬を魅せる身体能力の高さ。
そこになんの無理もないからこそ、ホルストメールの生き様を鮮やかに受け取ることができるのです。

多くと違った容姿に生まれついたものがいじめられる構造の部分は、まだホルストメールが若くイキイキと演じられているがゆえに、心に沁みる部分がありました。
美しい牝馬・ビャゾクリファがホルストメールに友情を抱いても恋心は抱かない、彼女が魅せられるのは一番美しい牡馬なのもとてもリアルでした。
だからもちろん、ホルストメールが彼女を犯していい理由にはならない。
そしてその罰としてホルストメールが去勢されるところは、現在の人間の世界にも早く取り入れてほしいと思いました。
(現にカナダは性犯罪者に化学的去勢を実施しているそうですね。
 「8人に性的暴行」EXO元メンバーのクリス、拘置所収監…化学的去勢の可能性も | Joongang Ilbo | 中央日報

だってそこからホルストメールは「生きるということ」を考えるからです。
アフタートークで稽古中にカンパニーで馬の見学に行かれたことが紹介されましたが、「去勢された牡馬とされていない馬の目が素人でもわかるくらい違う」と語られていました。
私にとっては全く理解できませんが、男性性という性を生きる者にとっては恐らくとても大切なものを失った後というのは、世界が違って見えるのだろうことは想像できました。

けれどもここからホルストメールは別所哲也さん演じる公爵に買われて、そこで「一生で一番楽しい時期」を過ごすのです。
公爵にとっては「自分が所有する馬」ではあったけれど、そこに信頼と尊敬と愛があって、快適に過ごせる待遇と自分の価値と能力を誇れる仕事があることが「幸せ」につながる、というのは、生き物として共通なのだなと感じたのです。
アフタートークでは、このホルストメールの在り方が「ロシアの民族性を描いているのかもしれない」と語られました。

ロシアの「革命で帝政が破れ、強権の政治家が生まれ、ペレストロイカで自由になっても、現在の大統領が生まれてくる中で自由を得る国民性。」

支配されているからこそ、安心して自由を謳歌できるというところは、私個人は特に日本人にも通ずるところがあるかもしれないと思いました。
とりわけ終身雇用制度はこういう考え方から生まれたもののように思います。

ただ世界は日々変わりながらも、大きな歴史の流れは繰り返しているからこそ、こういう作品を見て、考える時間はとても貴重だなと感じました。

ホルストメールも公爵も幸せな時間はあっという間に過ぎ去ります。若く美しいものたちが公爵からも幸福な時間を奪っていくのです。金で所有することの現実が描かれます。そしてホルストメールは再び過酷な運命にさらされます。それでもホルストメールは生きていく。そして老いてその生き様を語り終えるとき、同じく老いさらばえた公爵と再会します。
ホルストメールはすぐに公爵だとわかるけれど、公爵にはわからない。
ただ「たくさんのものを持っていて人生を謳歌していた頃に出会った素晴らしい馬」のことしか思い出せない。それが今目の前にいる彼とは気づかない。
それでもホルストメールが公爵に顔を近づけていななくとき、なんとも言えない気持ちになって涙しました。哀れみなのか、馬の優しさなのか、自分でもあそこで感じた気持ちが何なのかわからないのですが、とても心に触れたのです。

今や公爵は周囲の人間にとって「やっかいもの」、ホルストメールも同じです。
でもホルストメールにとっては「幸せな時間を与えてくれた人間」であり、飼い馬ではなく「友」と呼んでくれたたった一人の人間だったわけです。
それが分かるホルストメールと、それを思い出せない公爵を見ると、無敵だった若き頃は過ぎ去り老いた今、一体幸せとはなんだろうと考えてしまう。そういう作品でした。
(老いた公爵の別所さんの演技がまた素晴らしかったことを添えておきます。)

 

そしてこれは、ぜひ一階席で見たかった!と思いました。
半円形のせり出したステージがあって、登場人物・馬たちが出番でないときは、観客と同じようにホルストメールの話を聞いている。
いわゆるイマーシブシアターに近い形式の演出だったからこそ、もちろん収益という現実が大事なのは重々に承知な上で、「平成中村座」みたいなどこでも一体感を味わえるような専用仮設劇場みたいなところで、この演出で見てみたいと思わずにはいられませんでした。
多分そうすればまた感じることは違うような気がするのです。

 

4本の種類の違ったサックスのみで奏でられる音楽も素晴らしく(脚本のロゾフスキー氏が作られた音楽を使用し、それとうまく融合する音楽を追加されたとのことでした)、ミュージシャンと演者の垣根がないのもまた魅力的でした。


そして舞踏家でいらした山田うんさんの振付は、心が動いてから身体が動くことを重視されたということで、馬っぽい動きとそうでない動きの融合具合が素晴らしく、メインキャスト以外の登場人物も個々の魅力を発揮していました。

本当に素晴らしい舞台だったからこそ、ラストシーンだけが気になりました。
最後のモノローグの前に、成河さんが馬のメイクを落とす時間の「間」があったのです。
しかし私をはじめ、初めて見る観客はこの後にモノローグはあることを知らないため、終わったと思って拍手してしまったのですよね。
そこで拍手を止めてモノローグを言うカタチになってしまったのはとても残念だなと思います。
あのモノローグは「伝えたいこと」であったと思うだけに、妙なカタチで不自然に浮きだってしまったのが残念です。

(そしてその伝えたいことは、一体どちらの死に様が、生き様が価値があるか的なことだとは思うのですが、多分このままでいくと私の死に様はホルストメール側になる可能性が多いにあるため、ちょっと希望を抱きました)

本来レニングラード(現サンクトペテルブルグ)で上演された際は、国立劇場の老齢の専属俳優が演じた役だからこそ、10年後、20年後にもホルストメールを演じてみたいと成河さんはおっしゃっていました。
だから再演があることを期待して、その再演の際にはあのモノローグまで自然に流れる演出になっているといいなと思います。

自分らしく生きることの難しさ@アミューズ「FACTORY GIRLS-私が描く物語-」

7/1 17:30~ COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

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キャスト

サラ・バグリー 柚希礼音
ハリエット・ファーリー ソニン
アビゲイル 実咲凛音
ルーシー・ラーコム 清水くるみ
ベンジャミン・カーティス 水田航生
シェイマス 寺西拓人

マーシャ 平野綾
ヘプサベス 松原凛子
グレイディーズ 谷口ゆうな
フローリア 杉山真梨佳
アボット・ローレンス 原田優一
ウィリアム・スクーラー 戸井勝海
ラーコム夫人/オールドルーシー 春風ひとみ

スタッフ

作詞・作曲 クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー
脚本・歌詞・演出 板垣恭一
振付 当銀大輔

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「1789」はスペクタキュラ―と銘打ちながら、今やなんか政治的なことまで考えてしまう作品になりましたが、こちらはそもそもが社会派ミュージカルです。

そしてこの問題は今もなお、多くの労働者が直面していることだと思うので、再演で多くの人が見てくれることを希望していました。

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初演の時に願ったように、再演はできる限りのブラッシュアップはされていました。

でもわたしが好きなだけで、みんなが好きな作品にはなるのは難しいのだなあと改めて思いました。

ただ初演感想で書いた「ガールズの無意識の上から目線」部分は消去されていたので、一番訴えたいところをきちんと訴えられるようになったかなと思います。

(あと大阪は箱もよかった!いや簡素な劇場であることは知っていたので、この作品の世界観にあうだろうなと。サイズもぴったりだと思いました。ただ一律14,000円のハードルは高かったですね涙)

 

初演からはちょこちょこセリフも変わり、サラとハリエットの性格も少し変わったように思いました。

サラは初演の方がもっと「普通の人」でよかったかな。再演では「思ったことはつい言葉にしちゃう性格」というのが付け加えられていて、まあそれもリアルだし、この作品で「サラ・バグリー」をどうしたいか、というのは分かりやすくなったのですが、個人的には初演の素直で普通のサラが、それでもどうしてもこの状況に文句をいいたくなってしまう、改善したいと願う方が好みではありました。

一方のハリエットは「父親のDVで母親が死んだ」ことを今回セリフではっきりと明示されます。

もちろん「ペーパードール」の曲の中で今までも暗示されていたのですが、はっきりと言葉になることで、この過去を持ったハリエットに演じ変えていたように思いました。

常に人の顔色を窺い、感情の爆発を避け、なるべく物事を穏やかにスムーズに進めるよう、静かに内心いつもどこか怯えながらそこにいる。

初演の毅然として冷静沈着で聡明なハリエットも好きでしたが、ハリエットは今回の方が人間味があって好ましく思いました。

初演後のソニンさんのバースデーライブ配信で「ローウェル・オウファリング」ではハリエットはいくつかのペンネームを持って書き分けているということを教えていただいたのですが、そういうハリエットの行動にもつながる役作りだったと思います。

争うことが怖くて、慎重に慎重に事を運ぼうとするハリエットがよく分かる。

そこにある意味、精神的には健全に育ったサラがずかずかと入り込んでくるのは面白かったですし、二人が対立していくのも理解しやすかったので、ブラッシュアップ、になったのではと思います。

 

初演を見たときは、アメリカのどの辺りの時代か分からず、できる限り調べて初演の感想を書きました。

なので、知識的に初演と再演と見る目も変わってしまったため、ベンジャミンの新曲「鉄の絆」を聞いたときに、鉄道に乗って移動していた「風と共に去りぬ」の世界を思い出し、この後に南北戦争があるんだなあと思ったのですが、この曲の追加が必要だったかどうかがちょっと分からないのです。

そしてその変わりに彼女たちの一世代前の女性の生き方が語られる「ミセス・ラーコムの晩御飯」はBGMになってしまいました。

この作品は女性の地位向上を目指した作品ではあるけれど、それ以上に労働上にある差別についても描いているところが好きだったので、男性の歌も必要ではあると思うのです。

さらに「鉄の絆」はもっと広い世界を見て、経済を大きく発展させていきたい趣旨の歌なので、目の前の労働時間、労働環境の改善に立ち向かうガールズとの対比も出て、いいとは思うのです。

でも「ミセス・ラーコムの晩御飯」を抜いてまで付け足す必要があったのかどうかは考えるところではあります。

 

ただ現状なかなか日本でミュージカル作曲家が生まれづらい中、アメリカの大学で単位取得のために作ったミュージカル作品からいいものを選んで日本で育てていく、という道筋は本当にアリだと思うし、面白い目のつけどころだと思うので、今後もこういう新しい作品が、日本でどんどん産まれてくるといいなと思います。

(残念ながら初演でリンクした「ダディ・ロング・レッグス」などのミュージカルをプロデュースしたケン・ダベンポート氏の課題で作られた作品の優秀なものを選出したサイトは閉鎖されてしまっています。でも学校の課題でシタアーライティングがあって、その優秀作品を選出できる状況がまず日本と違うなと未だに思います)

 

ところで一部の記事で「ルーシー・ラーコムの回想記『A New England Girlhood』をベースにしたミュージカル」、と説明されているものも見かけたのですが、初演の時にはそんな話しはどこにもなく、ルーシー・ラーコムは実在の人物だということだけが、プログラムのキャストコメントで分かる程度だったのです。

今回のプログラムを読んでも、この作品の着想元は「ローウェル・オウファリング」であると明記されていたので、どこからそのような話しがでたのか気になっています。

(初演見た後、ルーシー・ラーコムを調べようにも綴りも分からず苦労して探したので、いきなり再演でどうしてそんな話しでた感に驚いたのでした)

 

でもそんな気になるところを吹き飛ばすように、ガールズはパワーアップしていました!

ルーシー清水くるみちゃんのチャーミングなこと。そしてそのチャーミングさをオールドルーシーにつなげる春風ひとみさんの的確な演技。

アビゲイルは初演を経て、ますます大人で知的になっていて、この役は実咲さんの当たり役ではと思います。そして「いるよなー、こんな女の子」というマーシャが再演から参加の平野綾さんだったのですが、彼女がめちゃくちゃかわいい!

お金持ちのいい男と結婚して幸せになりたいという夢と、労働上の差別に怒る心は両立します。それを強く感じさせるすごくステキなマーシャでした。

マーシャとヘプサベスが歌う「オシャレをしたい」も二人とも素直でチャーミングで、だからこそ、後半で明かされる彼女らの多くが貧困にあえぎ、父親のDVに苦しんでいた事実が突き刺さるのです。

この作品を見に行く前にNTLiveの「オセロー」を見たのですが、

www.ntlive.jp

幕間の制作陣対談放映で「男性はストレスが自分が支配できる家庭への暴力に変化しがちだ」的な発言がありました。

貧困というストレスの中、自ら経済力を持てなかった女性たちがDV被害にあう。彼女たちはそんな父親、母親を見て育ったことを改めて感じました。

だからこそ最後の最後、再演のパンフレットの中で男性陣に「スーパーソニンタイム」と言われていたハリエットの爆発があると思うのです。

わたしが見た日は前日フローリア役の能條愛未さんが体調不良で公演中止になって、初演からのアンサンブルだった杉山真梨佳さんが代役としてフローリアを演じた2公演目でした。(ちなみに杉山真梨佳さんのフローリアは歌も演技も素晴らしかったです。)

それが関係したのかどうかは分かりませんが、ソニンさん自身もこのようにインスタにあげられているほど

ハリエットの感情の揺らぎを感じ、その哀しみ、その痛み、その悔しさ、その怒りがまっすぐに客席に届いて、心震える公演でした。


www.youtube.com

そして「奴隷じゃないわ、娼婦でもない」の歌詞を「どう生きるかを指図しないで、わたしの人生はわたしのために」に変えてくださったことには、心より感謝。

これは今のわたしたちにも、とても突き刺さる言葉だと思いました。

 

男性陣もまたよかった。特に初演から続投している原田優一さんのアボット工場長。もう本当に一歩会社に帰れば出会えそうなほどリアル。

シェイマスの寺西拓人さんは、とても誠実で、だからこそガールズが敗れた後にスクーラーから告げられるセリフを受ける姿、そしてこの後の史実の皮肉さが響きました。

変わりはいる。使い捨ての労働者にすぎない。

でも声をあげなければ、社会は変わらない。

見るとやっぱりまたいろいろ考えてしまって、調べてしまうのですが、一つ参考になった論文を自分のためにリンクしておきます。

工場制度成立期におけるローウェルの女工たち

最後になっちゃいましたが、谷口ゆうなさんのグレイディーズ、あなたが大好きです。

幕開きの「機械のように」からキレッキレに踊っちゃうダンス力も暖かな歌声も本当にステキ。ガールズが「太陽かえして」と訴えるこの作品を優しく照らす月は彼女だったと思います。

当事者のいない閣議への反乱@宝塚星組「1789-バスティーユの恋人たち―」

6/29 13:00~ 宝塚大劇場

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スタッフ

脚本・音楽 ドーヴ・アチア、アルベール・コーエン
潤色・演出 小池 修一郎 

キャスト

ロナン・マズリエ 礼 真琴    
オランプ・デュ・ピュジェ 舞空 瞳

マリー・アントワネット 有沙 瞳      
シャルル・アルトワ 瀬央 ゆりあ        
カミーユ・デムーラン    暁 千星        
マクシミリアン・ロベスピエール 極美 慎
ジョルジュ・ジャック・ダントン 天華 えま

ソレーヌ・マズリエ 小桜 ほのか         
ラザール・ペイロール 輝月 ゆうま        
ヨランド・ドゥ・ポリニャック 白妙 なつ        
ジャック・ネッケル    輝咲 玲央    
ルイ16世 ひろ香 祐        
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン 天飛 華音        
シャルロット 瑠璃 花夏

 

見るたび違う印象を抱くのが楽しくて大好きな作品なので、今度は何を感じるだろうと観劇を楽しみにしていた作品なのですが、まさかの初日開いてから2週間強の休演でチケットは紙となり嘆いていたところ、救い手現れ、天井桟敷から見ることができました。

まず月組初演の感想がこちら。

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東宝初演の感想がこちら。

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東宝再演の感想がこちら。

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東宝再演を見てようやくこの物語が「ロナンとアントワネットが真逆の方向からではあるけれど、今起こっている問題に気づき、自分というものに気づき、それぞれの立場で何をすべきか考えるにいたるさまがリンクしている」ことに気づいたわけですが、そうなると、宝塚月組の初演配役の在り方も「アリ」だったなあ、と今さらながら思いました。

 

とはいえ、宝塚にはトップコンビがあり、星組には三拍子も四拍子もそろった素晴らしきトップコンビがいる。そしてトップ娘役に負けない輝きと実力を兼ね備えた有沙瞳さんがいる。その素晴らしいバランスで見るこの作品はまた大変に面白かったです。

そして東宝版のソニンソレーヌがすごかっただけに、宝塚ではどうなるだろう、と思っていたら、小桜ほのかちゃんのソレーヌが本当に素晴らしかったのです。

このソレーヌは、田舎娘でロナンに取り残されてなすすべもなく、仕方なしにパリに出てきて、最初はそんなつもりなく騙されたような形で娼婦になったんだろうなあという感じが全面にでていて、だからダントンの話しもあんまりよく分からなくて、ただ話しを聞いていると同じ「庶民」というくくりなはずなのに「金持ちのボンボン」だから、今日明日をどうにか食つなぐ、なんてことを考えずに、人権をとか、フランスの未来をとか言えるんだろうなあ、と思っていそうなソレーヌなんですね。

つまり本当に「社会の底辺にいる若い娘」感があって、だからこそこのソレーヌで「パン屋襲撃」を見たかったなと思います。

 

ダントン・デムーラン・ロベスピエールの三人組と、その対極にいるアルトワ伯のバランスもとても良かったです。

それぞれに画策する人々。

それに翻弄されるルイ16世とアントワネット、そしてロナンとオランプ。

デムーラン暁さんがとても誠実だからこそ、無意識の上から目線が見えるのが面白い。

三部会から第3身分のロベスピエールら市民が追い出されて、ジュードポムへ駆け込むシーンが本当にムネアツなんですが、そういう大事なことですらロナンやオランプの参加できないところで決まるのだなあと改めて感じました。

世の中のことは「本当の当事者」がいないところで、どんどん決められていく、というのが現状に重なり、あきらめのため息をつきたくなるところで、ロナンが登場するのです!

そしてこのロナンは歌もうまいけれど、ダンスがめちゃくちゃ上手い!そのスキルを思いっきり活かして素晴らしい踊りで民衆を鼓舞するシーンが特に圧巻でした。

あとロナンとオランプが「身分関係なく自由に愛し合いたい」というストレートな思いがグッと伝わってくるところも、今回の配役ならではかなと思いました。

ただやっぱりどうしてもラストシーンがああなるので「フランス人権宣言」自体の存在が薄くなっちゃうのは、宝塚版の残念なところではあると思います。

というか、こうだったから、東宝版初演を見たときに「フランス人権宣言」が印象的だったんでしょうね。

まあ、どちらがいいかは好き好きなので、難しいかもですが、キャスト一新しての東宝版「1789」の再演もお待ちしています。

 

実は東宝版再演の1789の円盤

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を購入しまして、見直してからこの星組1789を観劇したのですが、歌のカット、追加はあれど流れはほぼこの東宝再演と同じです。

そしてこれを見ていると改めて、ルイ16世がネッケルとアルトワ、両方の意見を聞きながらも、革命を回避できない方ばかりを選んでいくのが見えるのが怖いです。

本当のルイ16世がどんな人物で、本当は革命にいたるまで彼がどんなことをしていたのかは私は知らないのですが、この作品の中でルイ16世は、とにかく「いい人」で、でも「政治的な関心」はなかったように描かれています。

「私は罪なくして死んでいく」という処刑の際の言葉が有名ですが、最終決定権を持った人間が周囲の思惑に気づかず踊らされているのは、罪ではないだろうかと思わずにはいられなかったのです。

でも彼のような人間はきっと今も政治の中枢のところにいるだろうなと。

ただロナンと私たちの最大の違いは「選挙権を持っている」ことなのだから、考えて行動しなければならないな、なんてことまで考えてしまうのは、エンタメとしていいのか、悪いのか、そんなところも面白い作品だなと思いました。