こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

真剣に、でも「笑い」も忘れない@花詩歌タカラヅカ「ファントム」

5/12(日)18:30~ 繁昌亭

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第1部  落語

月亭 天使 「初天神

笑福亭 生寿 「秘伝書」

桂 春雨 「昭和任侠伝」

桂 あやめ 「?」

 

第2部「なりきりファントム」

エリック/ファントム 林家染雀(さざ波乃の)

クリスティーヌ 笑福亭生寿(高原らな)

カルロッタ 桂あやめ(逢坂夕陽)

シャンドン伯爵 桂春雨(小石川みや美)

アラン・ショレ 月亭天使(絹越うの)

ジャンクロード 立川らく次

少年エリック はやしや香穂(しんまち穂)

 

年々人気が高まる「花詩歌タカラヅカ」。

なんと今年は発売日に2時間でチケットが売り切れたそうです。

そんなわけで、毎年最前列に近いところで見上げていた舞台を今年は2階席から見おろす形になりました。

これはこれで、舞台のいろんな工夫が見えて面白い!

当たり前ですけれど「繁昌亭」って落語・演芸の専門劇場なんだなと、やっと気づきました。

毎年ながら、舞台転換、セットの出し入れに特にたぶん初日は苦労が見えるのですが、そもそも落語や演芸ってセットないですものね…。

しかし演じられるのはそんな話芸のプロたち。

だもんでセット転換の苦労部分は全部アドリブで笑いに変換。

そんな笑い要素もたっぷりの「ファントム」の様子をご紹介します。

 

の前に落語ですが、今回は4名とも宝塚にかけた落語でした。

天使さんと春雨さんがそれぞれ今公演中の「オーシャンズ11」を元ある落語に練りこんだ形。

生寿さんが「宝塚歌劇団に関わる秘伝書」。そのネタの1つ「男でも大勢の観客の中で銀橋の真ん中に立つ方法」が、わたしは知らなかったので、それってそんな儀式なのかー、見てみたいと思いました。

あやめさんは好きなタカラジェンヌの姿形にしてくれる整形外科に行く話でした。なんと「カサノヴァ」のプログラムをご持参。

とはいえ、全体にみなさん枕も早口、落語も早巻き。

これも、もはや花詩歌タカラヅカの見どころじゃないかとさえ思います(笑)

 

ということで、落語はキリッと45分で終わり、中入り後、第2部の「なりきりファントム」がはじまりました。

 

真山隼人(阿倍野こぶし)さんがHear My Tragic Tale(僕の悲劇を聴いてくれ)を少し歌ってくれたあと、すっかりおなじみになった浪曲でザクっとファントムのあらすじを紹介。

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今回から三味線の沢村さくらさんにもジェンヌ名がつきました。桜一花さんをイメージして「一か八か」と三味線の「バチ」をかけた「桜バチ花」さんです。すばらしい命名ですね(笑)

 

まずMelodie De Paris (パリのメロディー)から華やかにスタート。

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この曲、名曲だなあとあらためて。

安定のトップ娘役・生寿さんもかわいい。

カルロッタと衣装係がオペラ座を探索するシーンもあります。

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あやめさんのカルロッタ、ものすごく楽しそうでイキイキしています(笑)

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そして生喬師匠キャリエールがいきなりオペラ座の支配人を解雇されるシーンへ。これは本編と一緒なのですが、こまかいやりとりは割愛。まあここは解雇された事実がわかればいいので、問題なし。

その後のエリックとキャリエールのやりとりの中で聞こえてくるあやめさんカルロッタの歌声が絶妙すぎて爆笑。音をお聞きいただけないのが残念です。

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染雀さんのエリックはとにかくかっこいい。

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さらに歌も、当たり前だけどうまい。

Where In The World (世界のどこに)すばらしかったです!

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さて無事オペラ座で働けることになったクリスティーヌがファントムに出会うシーン。

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染雀さんが歌う間、お針子の振りで笑いをきっちり取る生寿クリスティーヌ。

染雀エリックに「歌のじゃまするな」的に怒られていました(笑)

でもとりあえず歌の稽古をつけてもらうことに。

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あれ?ファントム素顔!?

これはとりあえずファントムとクリスティーヌの間にカーテンみたいな仕切りがあって、お互い顔を合わせない設定なのかな?

と思っていたら、のちに仮面を忘れていることを暴露されました(^◇^;)

 

それにしても染雀さんが歌唱指導の先生なので、生寿クリスティーヌと常に「師弟感」が出るのがこの辺りではすごいいいバランスです。

無事クリスティーヌの歌のお披露目もすみ、

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カルロッタから怪しげな薬を飲まされ、

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オペラの舞台本番へ。

声が出ないシーンのクリスティーヌの演技!顔!(笑)

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しかし笑ってばかりはいられません。

ここでふっとよぎる本物の一幕終盤のシーン。

そうファントムがシャンデリアを打ち落とす迫力のシーンです。

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あ、シャンデリア、階段から降りて堕ちた!

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爆笑のまま、一幕終了。そしてすぐに二幕がはじまります。

浪曲での説明後、キャリエールの昔語りへ。

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キャリエール、若いころの方が恰幅がいいです(笑)

生喬師匠のキャリエールは、キャリエールという役本来がもっているはずの貫禄とかそういうものが宝塚版より出ていてよかったです。

そして、わたしが宝塚版で好きではなかった「私が耐えられなかったのは、彼女が彼をこの上もなく美しいと思っていることだった」的なセリフがなくなっていたのが最もよかったです。

これ本当いります?

まあキャリエールのエリックに対する今までの対応は、このセリフがあることで納得はするんですけど、キャリエールの残酷さというかそういうのが強調されすぎる気がするんですよ。

なのでこのシーンは花詩歌タカラヅカ版の方が個人的に好みでした。

はやしや香穂さんのエリック少年はかわいいし。

残念ながらエリックがとっておきの場所をクリスティーヌに紹介するシーンはまるっとカット。

まあ時間とセット上、しかたないと思います。

カルロッタとファントムのシーンで、ファントムがまちがって「クリスティーヌ」というと「カルロッタやで」とミスは絶対逃がさないあやめカルロッタ。

そこからアドリブ合戦の爆笑殺害シーン。楽しかった!(笑)

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そして雪組版でまあやクリスティーヌに感動したMy True Love (まことの愛)へ。

 

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生寿さんはがんばっていました。はい。

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しかしすでに一幕で仮面なしの素顔を見てるはずなので、歌の意味がない(笑)

染雀ファントムも台無しやないか、と自虐アドリブ。

そして逃げたあとのシーンが最高!このセット!

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あやめカルロッタが発見され、追い詰められたファントムとキャリエールのYou Are My Own (君は私のすべて)がまた良かったんですよ。

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やっぱりキャリエールがファントムより年上感が自然にでるのは落ち着きます。

生喬師匠キャリエールの愛に泣きます。

この辺のやりとりはさすが二人ともプロフェッショナルです。

そして怒涛のエンディング…。

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なんか知らないけど、感動してしまいました。

 

けれどその感動を一瞬にして吹き飛ばすエトワール(笑)

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そしてパレード&客席降り。

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2階席にも生喬師匠とショレ役の月亭天使さんがいらしてくださいました!

そういえばショレとカルロッタの軽妙なやりとりはほぼカットだったのが残念です。あの辺も噺家さんたちの方がうまくできそうですよねえ。あ、だからカットなのか(;^ω^)

そして時間は21時25分。

なんと繁昌亭は21時半を過ぎると15分毎に5,000円追加料金が発生するしくみだそうです。

でもオリジナルソングで締めて、21時半きっかりに終わりました。すごい!

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本当、役替わり公演の千秋楽が見られないのが残念でたまらないくらい、満足の3時間半でした。

次の喜楽館、勝手にベルばら45周年を祝う「ベルばら名場面集」も楽しみです!

 

あ、観客は大多数が宝塚ファンのようでしたが、万が一宝塚の「ファントム」見てないぞという方がいらしたら、こちらの映像をどうぞ。

 

雪組宝塚大劇場公演 三井住友VISAカード ミュージカル『ファントム』 [Blu-ray]

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 ストーリーはともかく、まあやクリスティーヌの「My True Love (まことの愛)」は聞く価値ありです!ぜひ!

天下無双の夢がわからないからクルンテープありがとう@宝塚月組「夢現無双」「クルンテープ」

4/13(土)11:00~ 宝塚大劇場

夢現無双

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宮本武蔵 珠城 りょう
お通 美園 さくら  
佐々木小次郎 美弥 るりか 
沢庵宗彭 光月 るう  
お杉 夏月 都  
柳生石舟斎宗厳 響 れおな  
新免無二斉 紫門 ゆりや
お甲 白雪 さち花
吉野太夫 海乃 美月
本位田又八 月城かなと
吉岡清十郎 暁 千星


脚本・演出 齋藤 吉正

たしか中学の卒業旅行で巌流島にいって、ここが「宮本武蔵佐々木小次郎の対決の場だよ」と教えてもらった記憶があります。

よくわからないまま武蔵と小次郎のキャラがついたキーホルダー的なものを買った記憶も^^;

しかし日本史に疎いまま学生時代を過ごし、今再び日本史を少し勉強しはじめた身なのですが、それでも「宮本武蔵」という人がよくわからない。

日本の歴史の流れに何か大きく関わったわけでもなさそう。

けれども原作小説を読むわけでもなく、大河ドラマを見るわけでもなく、なんならバガボンド

バガボンド コミック 1-37巻セット (モ-ニングKC)

 

さえ未読で、なんの知識のないまま見に行ったことを後悔しました。

一応

stok0101.hatenablog.com

 は見ていたのですが、これは井上ひさしさんがちゃんと人間ドラマ、コメディとして書いててくれていたし、設定も巌流島で小次郎が死んでいないことになっていたしで、武蔵も小次郎もなんか間抜けで可愛くて愛おしいなと感じた記憶があります。

今回の無現無双の話はこうです。

宮本村の武蔵は幼いころから力強く、敵知らずの暴れん坊。

そんな彼を好意的に想うお通と訳あって村を飛び出します。

そして武蔵は「天下無双の剣の達人」を目指し、日々鍛錬し、とうとう世に名をはせた剣の達人・佐々木小次郎との対決に挑むのですが・・・。

 

ということで、ずっと武蔵が「オレは天下無双になるんだ」とか言って、人を斬ったり、反省したり、鍛錬したり、が繰り返されるだけの話になっちゃっているんです、残念なことに。

なんで武蔵が剣の達人を目指すのかはわかるんですけど、正直「武士でもないのに剣の達人になってどーすんの?てかそんな幻みたいな夢追いかけてるだけで生きていけるの?食べていけるの?」という思いが消せないのです。

(すみません、わたしは「男のロマン」を全く理解しない人間です。でも原作小説が日中戦争から太平洋戦争に向かう時代の新聞連載小説だったとのことなので、人々を戦いに鼓舞せざるを得なかったのかもしれないですが)

ここで、先日見たゲキシネ「髑髏城の七人season鳥」のような華麗な殺陣のパフォーマンスでもあれば、「ああ、剣の達人って魅力的!」とか「そうか、武蔵はこのようなプロフェッショナルだったから人々を魅了したのね」とか思えたかもしれないんですけど、宝塚歌劇団であそこまでの殺陣パフォーマンスをやろうと思ったら、相当な月日をかけて訓練するしかありません。

となると、そういう見せ場がつくれない限り、もっと心情面や人柄を描いて、なんならお通とのラブロマンスをメインにもってきて「恋と夢の中で揺れる武蔵」を描いた方がまだおもしろかったんじゃないかと思うと残念というほかありません。

セットも衣装も魅力なく、見せ場も盛り上がりもなく、久々に見ていてつらい時間でした。

 

しかし宝塚にはショーがある!

しかも作・演出は安定の藤井大介先生です。芝居が終わった時点で祈るような気持ちで「大介先生、お願い、この下がりきったテンションをあげて」と思っていたのですが、大介先生は裏切りませんでした。ありがとうございます!

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クルンテープとはタイの首都バンコクの正式名称の略称とのこと。

ということでなんと舞台は「タイ」です。

中近東らへんが舞台になったショーはありましたが、日本以外のアジア圏がショーの舞台っていうのはなかなか珍しいんじゃないでしょうか。

まあプロローグ終わって、最初にムエタイのゆるいシーンがあったときは「ショー、お前もわたしを裏切るのか」というがっかりした気持ちが抑えきれませんでしたが、すぐに「一蓮托生」というトップスター珠城りょうさんと二番手・美弥るりか さんの言葉に尽くせぬほど美しいダンスシーンが繰り広げられました。

そこからは素晴らしいシーンが続いて感涙。

新しくトップ娘役になられた美園さくらさんと若手スターたちの「セ・マニフィーク」が個人的にはとても良かった!

宝塚ショーにテクノミュージックが取り入れられるようになってずいぶん経つのですが、どうしてもわたしには受け入れられない感じを醸し出すものが多かったのです。

そんな中「セ・マニフィーク」という古い宝塚のショーの主題歌をテクノ風にアレンジする、という手法にやられてしまいました。

これなら今のファンも古いファンも楽しめる。たぶん。

ぜひとも他の先生方にもヒップホップやらテクノやらで歌ったり踊ったりアイドルっぽいシーンを作るなら、古い宝塚ショーの誰もが知ってる名曲たちをアレンジして使っていただきたいです。それなら著作権の問題も発生しないし、いいとこだらけじゃないですか?

あとは舞台がタイなので、ミュージカル「王様と私」の名曲「Shall we dance?」が中詰めでさまざまなアレンジで繰り返されたのも、わたし的に大介先生グッジョブ!

王様と私」のストーリーはアジアの文化をバカにするようで大嫌いなのですが、曲はめちゃくちゃいいし大好きなので、こういう楽しいシーンによみがえらせてくれて本当にうれしいです。

あとはデュエットダンスの振り付けがかわいいなあと思っていたら、なんとANJUさんの振り付けだったのですね。さすがです。

その前の黒燕尾群舞に後から入っていく美弥るりかさん、というワンシーンに涙。あの一瞬。あの一瞬を本当にありがとうございます、大介先生。

 

そんなわけで、みやちゃん(美弥るりかさん)大劇場、ご卒業おめでとうございました。卒業されるときは皆さん特別に美しくなられるけれど、今のみやちゃんの美しさはもはや菩薩の域でした。

東京公演でもその神がかった美しさで最後まで観客を魅了してくれることでしょう。

ということで、東京千秋楽のライブビューイングは見に行きたいと思います。美弥るりかの最後の「男役としての美」を見に。

今さらだけど、髑髏城の七人 ゲキシネのススメ

2017年の春にオープンした「360°シアター」。

客席がぐるぐる回るという新型劇場のこけら落とし公演として上演された、劇団☆新感線・代表作の1つ「髑髏城の七人」が今ゲキシネとして全国の映画館で公開されています。

ちなみにこの360°シアター「髑髏城の七人」は合計6バージョンあり、1年以上かけて上演されました。

その一番最初が「花」、そして今公開されているのが「鳥」、来月は「風」バージョンのゲキシネが上映される予定です。

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ゲキシネとは「劇×シネマ」ということで、劇場で上演されたものを映画館で配信するということなのですが、このジャンルにいち早く取り組まれた劇団☆新感線さまのゲキシネは、単なる配信ではなく「映画として見られる編集」が施されています。

つまり映画として見ても面白い。

そして嬉しいことに観賞代金も通常の映画料金(1,800円)+200円の2,000円に改定されました!

そんなわけで「映画はまあまあ見るけど演劇はみたことないや」って方にぜひこの機会にゲキシネ「髑髏城の七人」を体験してもらいたいのです。

 

「髑髏城の七人」はこんなストーリーです。

時代は「本能寺の変」から8年後。豊臣秀吉が天下統一を目前にしている頃。

関東に逃げ延びた織田信長の残党が「髑髏城」を築き、その頂点に「天魔王」という人物が君臨しています。

彼の野望は「再び乱世に戻し、自分が織田信長の意志を継承すること」。

そんな天魔王の野望に、捨之介という世捨て人と「色街・無界の里」を極楽大夫とともに作った蘭兵衛が巻き込まれていく・・・。

 

雑賀党なんかも登場するし、殺陣たっぷりのエンターテインメントなので戦国時代好きの方には特に楽しいと思います。

来年の大河ドラマの主人公・明智光秀がなぜ「本能寺の変」を起こしたか、とかの解釈もちょっと触れたりします。

さらに今回のゲキシネ「髑髏城の七人」はバージョンごとに映像監督も違うので、映画好きの方もその違いを楽しめるんじゃないでしょうか。

(わたしは映画のカット割りとかの楽しみ方はよくわからないのが残念です・・・。でもバージョンごとにキャストと設定、演出や衣装が違うので演劇ファンはもちろん楽しいです)

ちなみにチケットは普通に上映映画館でも、ネットサービスでも買えます。普通に普通の映画と同じ買い方です。

ただ上演時間がもともと演劇なので長いため、1部と2部の間に15分の休憩があります。

休憩時間はこんな感じでお知らせが入り、

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こんな感じの静止画が流れています。

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上映スケジュールや上映館などはぜひ下記からご覧ください。

(ついでにぜひ予告編の映像も見てください!)

www.geki-cine.jp

 

わたしは2011年版のゲキシネ「髑髏城の七人」(通称:ワカドクロ)からしか見てない本当に髑髏城初心者なのですが、今回あらためてこのゲキシネを花バージョン、鳥バージョンと見て、「これはもっと大衆受けするべきすばらしい娯楽作品だ」と思ったのです。

花と鳥だと、花バージョンの方が初心者には優しいかなと感じたので、もっと早くこのブログを書けばよかったなと後悔。

鳥バージョンはロックオペラ的な演出も多いので、ミュージカルが苦手な方には向かないかもしれません。

 

花バージョンの何がよかったって、小栗旬の絶対的なさわやかな主役感に、清野菜名ちゃんが少年ぽい少女をこれまた元気に演じていて、その組み合わせの王道っぷりが物語の真ん中にある心地よさ。

蘭兵衛の山本耕史、天魔王の成河くんともに実力充分の演技でがっしり物語を盛り上げ、さらにりょうの極楽大夫が文句なしの美しさを添えていたのです。

その上に、その上にですよ、贋鉄斎という天才刀鍛冶を古田新太が演じる贅沢!

もう古田新太がすごすぎて、面白すぎて、3時間半があっという間でした。

 

だから鳥バージョンを見はじめたときには、花バージョンのがよかったかなあとか思っていたんですが、ハマったのは鳥バージョンだから不思議です。

鳥バージョンの最もすばらしい点は天魔王・森山未來と蘭兵衛・早乙女太一の殺陣。

あの迫力と美しさはもはや芸術の域です。

迫力ある殺陣シーンをご覧になりたい方は全力で鳥バージョンをオススメします。

 

贋鉄斎は池田成志さんで、どう演じてくるかなと思っていたら、主人公・捨之介を演じた阿部サダヲさんと二人掛かりで、古田新太さんとは違う方向でめちゃくちゃ笑わせてくれました。

ただ笑いの方向的には小劇場演劇的なので、普通に淡々と演技で笑わせた古田新太さんがやっぱりすごいなと。

 

ということで、だまされたと思って一回見に行ってみてください。

だまされても失うのは3時間半という時間と2,000円だけです。

新しい元号も来月にははじまるのだし、これをきっかけに新しい趣味として、チャレンジしてみませんか!

誇り高きガールズミュージカル@キューティー・ブロンド

3月16日(土)13:00~ シアター・ドラマシティ

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エル 神田沙也加
エメット 平方元基
ワーナー  植原卓也
ポーレット 樹里咲穂
ヴィヴィアン 新田恵海
ブルック 木村花代 
キャラハン 長谷川初範
セリーナ まりゑ
マーゴ 美麗
ピラー MARIA-E
イーニッド 武者真由

演出 上田一豪

 初演時「言霊がかなった!」と喜んだキューティーブロンドの再演です。

そして前回「再演があるならメルパルクホール以外で」と書いていたら、なんとシアター・ドラマシティで再演になりました!いや、ほんと、言霊、すごい

(あ、ストーリーとかは前回書きましたので、よろしければご覧ください)

もう初演に比べると同じような後ろの方の席でしたが、圧倒的に見やすいですし、初演のとき音響が悪すぎて聞き取れなかった歌詞もしっかり聞き取れました

(ポーレットとエメットの過去もきっちり把握できた!くらい前回聞き取れなかったんです涙)

結果、大好きなこのミュージカルの音楽も堪能!シアター・ドラマシティさすがです。

そして本当に音響が悪かったんだなと痛感したのが、歌詞以上に聞き取れてなかったセリフも多かったことに気づいたことです。

その分、結果としてセリフがいろいろ気になるという欠点が見えてきました。

一番気になったのが語尾。

終わったあとに「久しぶりに現代もののミュージカル見たかも」とおっしゃっていた方がいたのですが、そうこの日本版ミュージカル「キューティー・ブロンド」では、エルはスマホを持ってるし、大学院の授業はPCで受けていたりする現代なんですよ。

そして女性がバリバリ活躍するミュージカルです。

なのにどうして語尾が古い映画の吹き替え版みたいなザ・女言葉「〇〇なのよ!」とか「〇〇されているわ」とかにしちゃったのでしょう。

その辺がはげしく残念。もっと普通の女性の話す言葉、語尾に気をつけて訳してほしかったです。

もちろん初演で嘆いた「Bend and Snap」の訳も変わっていませんでしたし、他にもちょいちょい「エロ本」とかもう少し柔らかく訳せただろうなという言葉があったのも残念でした。

この「キューティー・ブロンド」もきっと再演するたび見に行く作品になると思うのですが、同じ再演されるたびに行っちゃう「ラ・カージュ・オ・フォール」はそういうところがすごくうまく訳されているのだなと思いました。

 

初演より今回が良かったのは、やっぱりエメットでしょうか。

逆「プリティ・ウーマン」みたいなシーンがこの作品にはあって、それがまたこの作品の好きな部分なんですけれど、エメットがそこでちゃんと「変身」して格好良くなったのが嬉しかったです。

エメットが変身で格好良くなった分、ワーナーの動き方の未熟さがちょっと際立ってしまって、そのあたりは上流階級の男性として洗練された動き方を研究してもらいたいなと思います。

 

そこへいくと、神田沙也加ですよ!

もう完ぺきなんです。

もちろんエルとしても、歌も踊りも文句つけるところないうえ、初演に比べていい感じに肩の力も抜けて、余裕もできていたから、芝居の間もいい。

そのうえで、きっと彼女以上にできないだろうなというのが、動き方なんです。

いちいちかわいい

この「いちいちかわいい」というのがエルという役をやるうえで重要だと思うのです。

とりわけ終演後のあいさつの後の舞台のはけ方がすごいんです。

すんごくかわいく歩いてお辞儀したあと、くるんとまわって、片足あげて投げキッスですよ!

こんな感じ↓↓↓↓↓の足上げに投げキッスつきですよ!

 

Disney MINNIE MOUSE BOOK (バラエティ)

Disney MINNIE MOUSE BOOK (バラエティ)

 

 

リアル・ミニーマウスな動き方を軸もずれずに自然体でかわいくやっちゃうんですよ!

もう本当、神田沙也加、すごすぎます。

 

さて初演から一年しか経っていないのですが、その間にずいぶんと女性が権利を発言する世の中になってきました。女性差別にも目がむけられるようになってきました。

女はこうでなければというのが薄らげば、男がこうでなければというのも弱まっていって、男性と女性の境目があいまいになって、そこに区分けなどなくなればいいなあと個人的には思っています。

「キューティー・ブロンド」はそれを夢見させてくれる作品なんです。

プレゼントもプロポーズも「したい方」がすればいい。

受け取る方も「かっこう悪い」とか「それは男の役目じゃない」なんて思わないでほしい。

 

「ラ・カージュ・オ・フォール」の感想のときに書きましたが、「え、昔は男同士のカップルって差別されたの?」という世の中にいつかなるといいというのと同じくらい、近い将来この「キューティー・ブロンド」を見て、「え、昔は女だからってだけでこんな扱い受けたの?てかキャラハン教授のやってることって、今じゃ普通に犯罪だよねと言われる世の中になっていることを願っています。

stok0101.hatenablog.com

 ところで、今回から作品のグッズ監修が神田沙也加ちゃんになりました。

つまり本当に「思わずほしくなっちゃうもの」が並びました。

しかも作品中でエルが使っているのと同じモデルのボールペンとか、スマホアクセサリなんかも並びました。

そしてそれをご本人のインスタで紹介。

各公演分で数量を調整していたのもあるのですが、結果、入場とともにグッズ売り場に長蛇の列。そして、ものの20分くらいでほとんどのグッズが売り切れてしまったのです。もちろん、わたしも10年ぶりくらいに公演グッズを買いました(ギリギリ変えて良かった・・・)。

ということで、グッズ、改めて本当にちゃんと考案すべきだと思いましたね。

グッズの売り上げがどのくらい公演に貢献するかわかりませんが、少なくとも観客には「グッズを見て買う」というオプションの楽しみが増えるのはうれしいです。

そして今どきなので、できればカード決済もしてくれるようになることを心から待ち望んでいます。

楽しい、きれい。だけど惜しい@宝塚花組「CASANOVA」

3/2(土)15:00~ 宝塚大劇場

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脚本・演出 生田大和
音楽 ドーヴ・アチア

ジャコモ・カサノヴァ 明日海 りお
ベアトリーチェ 仙名 彩世
アントーニオ・コンデュルメル・ディ・ピエトロ 柚香 光
ゾルチ夫人 花野 じゅりあ
コンスタンティーノ 瀬戸 かずや
コンデュルメル夫人 鳳月 杏
マリノ・バルビ神父 水美 舞斗

 

多くの女性と浮名を流し、人生を謳歌していたカサノヴァ。しかしそれが仇となりヴェネツィアの風紀を乱した罪で投獄されてしまう。こんなところで一生を終えられないと同室だったバルビ神父と協力してみごと脱獄に成功。それを追う野心に燃えたアントーニオ。
その頃ベアトリーチェベネツィア総督である叔父に引き取られ、政略結婚をせまられていた。
ベネツィアはカーニバルの季節。人混みに紛れて逃亡しようとするカサノヴァとベアトリーチェはひょんなことで知り合い…。

 

ストーリーをざっと書いてみたのですが、ここからもわかるようにこの「カサノヴァ」には大したストーリーはありません。「祝祭劇」の名にふさわしい軽くきれいで楽しい恋物語です。
そのうえ「1789」でおなじみのドーヴ・アチア氏の音楽がちりばめられているので、聞いても楽しいし、セットも衣装もとてもきれいでしたので、見ても美しい娯楽作になっていたと思います。

こういう「祝祭劇」「娯楽作」は個人的には大好物です。
むしろこういう何もないはなしを「魅せられる」ものにすることこそがエンターテインメントだと思っています。
ただそれってやっぱりひじょうに高度な技なんだなあと感じる作品でもありました。
音楽も衣装やセットも、そして出演者もいいので、それなりに楽しめる。
逆にいうとそれだけ「いい条件」がそろっているのに、退屈するところも多々あったその原因はなんだろうと考えてしまったのですね。

原因の一つは、カサノヴァとベアトリーチェのソロ歌唱が多いことじゃないかと。
いやもちろん、明日海さんも仙名さんもうまいので聞きごたえあるんですよ。
しかも音楽そのものもいいんですよ。

サブタイトルが「祝祭歌劇」だから歌が多いのは仕方ないのですが、それが繰り返されるとさすがに飽きる。
しかも心情を吐露するばかりの内容のものが多かったのも残念です。
カサノヴァのソロ歌唱シーンは、女役が後ろで踊ってくれてたりするんですけれど、それもワンパターンで、そのあたりはもっと「ショー」的に「魅せる」シーンに変換する必要があったんじゃないのかなと思います。

そして、カサノヴァとベアトリーチェの歌が多いということは、他は二番手&三番手のコンデュルメル夫妻以外、あんまり説明されないというか、見せ所が少ないのです。

比較をするのはあれなんですけど、やっぱり「All for One」

月組宝塚大劇場公演 三井住友VISAカードシアター 浪漫活劇  『 All for One 』 [DVD]

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が娯楽作品として完ぺきだった要因の一つは、キャラクターそれぞれに見せ場を作って「ショー的に魅せた」ところで、この「カサノヴァ」にはそれが極端に少なかったのも退屈した原因だったのじゃないかなあと思います。

コンデュルメル夫妻もそれぞれの心情を吐露する歌唱シーンはあるんですけど、この夫妻がどうして今のような関係になったのかについては説明がないんですよね。

まあ「想像にお任せします」でも、もちろんいいんですけれど、夫人の方の設定がけっこうおもしろいので、その辺をさらっとダンスシーンで魅せたらいいのにとか、いろいろ考えてしまいました。
ワンシーン、ワンシーンが長尺だと思わせるとやっぱり疑問は「どうして一本モノのしたの?」になっちゃうんですよ。
正直このくらい内容だと100分くらいで処理できます。(例えば「グランドホテル」フルバージョンが約100分なんですけれど、濃密で優れた作品になっています)その方がスピード感もあっておもしろかった気さえします。

で、短めのショーがついてた方が嬉しかった人は多いんじゃないかなあと思うと、ちょっとばかり残念でした。

 

あ、キャストに対してはみんなすばらしかったです。
カサノヴァの知性については一切説明がないにもかかわらず(一応カサノヴァとはという宝塚歌劇団公式の説明はこちらをどうぞ→時代を駆け抜けた男・カサノヴァ | 花組公演 『CASANOVA』 | 宝塚歌劇公式ホームページ)、そういうこともぽーんと納得させる「あまたの女に愛される」男性像を作ってきた明日海さんに脱帽。歌のリズムの完ぺきでしたし、本当円熟されていました。
そして数々のすてきなドレスを着こなし、どんな曲調でもリズムでも歌いこなす仙名さんのすばらしさといったら!卒業後はぜひとも全ディズニープリンセスの吹き替えをしてもらいたい!と思ってしまいました。仙名さんの「プリンセスボイス」は本当に貴重だと思うので、これからの活躍も期待したいです。
ただ仙名さんの個性としては、こういうただのプリンセスみたいな役よりももっと「色気と知性」がある方が似合うし魅力的なんですよねえ。
だからどうしてもこの作品が生まれる1つのきっかけにもなったという「カサノヴァ・夢のかたみ」のポンパドゥール夫人を見たかったなあと思いました。

柚香光くんは敵役という二番手ならではの美味しい役を、ギラギラキラキラ演じていて本当まぶしかったです。
特筆したいのはコンスタンティーノあきらとゾルチ夫人じゅりあ。
コメディをちゃんと演じられる。しかもセリフのリズムと間だけで笑わせるというのは、本当にむずかしいんですけれど、なんなくやっちゃう2人の経験と技術がすばらしい。
この二人も本当に魅力的だっただけに、もうちょっと魅せ方なかったかなあと思うんです。

あと女役を演じた鳳月杏ちゃんのお付きの娘役ちゃんたちも。けっこうおもしろいモチーフで抽象的な存在なだけに、鳳月杏ちゃんと彼女たちのどこかのシーンが「バーン」とショーっぽく魅せるものになっていたら、これまたもうちょっと違っていたような気がするんです。

 

そう思うと総括して「いろいろ惜しい」作品でした。
あと三歩くらい何かが足りない。その三歩を詰めることがこれからの生田先生の課題かもしれないですね。

とはいえ前作の「ひかりふる路」

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とは正反対の娯楽作をここまで作ったことは、幅広い対応力を示したと思うので、今後に期待しています。

ベルばらではじまり、ベルばらで終わる平成@梅芸「ベルサイユのばら45」

2/23(土)17:00〜 梅田芸術劇場

アンドレ

ソング&トーク 麻実れい 日向薫 杜けあき 麻路さき

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前回書いたように、 

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わたしは平成元年雪組の「アンドレとオスカル版」が初生宝塚歌劇で、そこから2年間に上演された「ベルサイユのばら」のみ見ています。

麻実さん曰く3世代、4世代にもなる宝塚のベルばら層の2世代目しか見ていないのです。

なので正直に今回の「ベルサイユのばら45」は知らない歌がいくつかありました。

もちろん「愛の面影」や「我が名はオスカル」がわたしが見ていた時代の花組月組公演のときにできましたので、ベルばらは変化する演目だということも理解していました。

 

今回の「ベルサイユのばら45」は「ご覧なさい」からはじまるプロローグ→汝鳥怜さんご挨拶→初演映像(初演時出演された方がいらっしゃる場合はここでソング、もしくはトーク付き)→再演映像(わたしが見たときは2回ともこのあと第2世代のソング&トークでした)→ご覧なさい(ふたたびバラが咲きました♪バージョン)からはじまるプロローグ→名場面集と続きました。

 

1部の名場面はオスカルが衛兵隊長になって衛兵隊を手なづけるシーンから、歌を挟んで、オスカルが伯爵号を手放しパリ市民の味方になるシーン、そしてバスティーユへと続きます。

バスティーユが終わって、死んだオスカルにピンスポットあたったまま、カーテンが閉まったときは何があるんだ?と思ったのですが、そこからアンドレのオスカル呼ぶエコー付き声がしたときに、急速に自分の脳内に「ガラスの馬車」が再生されたときは、われながら怖かったですw

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↑懐かしの公演テレカが出てきたので貼り付けます(^◇^;)

 

もちろん「ガラスの馬車」はないので、スモークという天国の中でオスカルとアンドレがデュエットして、1部終わりでした。

 

2部はまた小公子と小公女が出てきて、「嵐は〜嵐は〜♪」と歌い、革命が激しさをまし、アントワネットの死をもとめる市民の声が高まっているというような説明がありました。

フェルゼンとアントワネットの歌があり、市民の「王妃を死刑に」があって、牢獄のシーンへと移ります。

そして断頭台で再現シーンは終わりです。

フィナーレはわたしが見たときは両方とも歌2曲あって、「小雨降る路」「薔薇のタンゴ」「ボレロ」でフィナーレでした。

 

一部でオスカルの話が終わり、二部でアントワネットの話が終わるのはとても見やすくて、改めて「ベルサイユのばら」の主人公はアントワネットなのだなと感じさせてもらいました。

 

ただ再現するのがそのシーンでよかったのか、というのは疑問です。

特に衛兵隊のシーンは名シーンというわけでもなく、歌にいたっては途中から知らないもので、それよりも今宵一夜とか、いわゆる「どの世代でも知っている名シーン」が見たかったです。

 

「ご覧なさい」が2バージョンあったことを知れたのはいいんですけれど、あれが一部の中で繰り返されるのはちょっともういいよ、的な気分になったのも事実です。

 

なので2回目の「ご覧なさい」はマリー・アントワネットの「わたしは夢のはなよーめ人形♪」で、シュテファン人形抱いてやったら、二部の牢獄のシーンにも続いてよかったのになあと。

さらに牢獄のシーンでメルシー伯爵が登場するのですが、アントワネットは「伯爵」しか言わないんですね。これも不親切だなあと思いました。

いや、分かっているんですよ。そして観客が分かっている前提で作られていて当然なんですよ。ただ「名シーン再現集」にしたいならば、本当にツギハギで再現すればよかったし、なんかしらのストーリーらしいものを見せたかったならもう少しストーリーテラーをつけるなり、魅せ方があったように思います。

あと盆とセリは梅田芸術劇場にもあるのだから、そういうものをもっと活用して「魅せて」ほしかった。

 

フィナーレは楽しかったですが、もともと大階段のダンスばかりなので、大階段がないことが残念でならない。

 

ということで、万が一50周年公演があるのなら、ぜひとも宝塚大劇場でやっていただきたいというのがわたしの願いです。

スカイステージという専門チャンネルができ、公演期間も短くなり、年10回公演で今の現役生徒さんたちはとても忙しいと聞いています。

それなら5年に一回くらい、1公演分こういうOGイベントを行ってもいいんじゃないかと思うんです。

 

今回、梅田芸術劇場での公演ということで入り待ちが禁止されていました。

でも見に行く方は「1番熱い時代の気持ち」に戻っているので、あの頃子どもでさせてもらえなかった出待ちができなかったのも残念だったりもしたのです。

 

そういう残念な部分もあったけれど、それでも見れて本当に幸せでした。

また文句を書きましたが、改めてオスカルがはじめて衛兵隊にあうシーンで飛び交うセリフは、男性社会に乗り込む女性として、当時よりずっと身近に感じたので、きちんと描かれた「ベルサイユのばら」をもう一度見てみたくもなりました。

 

オペラグラスで見たいけれど、せっかくそこにおられるのにグラス越しに見るのももったいないという葛藤を感じたのも久しぶりでした。

平成元年に見た夢が、平成の終わりに見れる、本当に文字どおり夢のような時間でした。

身の丈を知るってだいじ@NTLive「マクベス」

2/20(水)20:30~ 大阪ステーションシネマ
演出:ルーファス・ノリス
マクベスロリー・キニア
マクベス夫人:アンヌ=マリー・ダフ

f:id:morton:20190222111851j:image

(画像はhttps://www.ntlive.jp/blank-21より)

Macbeth - National Theatre Live

大阪在住で語り合えないので、一人語りします(^◇^;)

 

これはロンドンのナショナルシアターで上演された演目を映画館で見る、いわゆるゲキ×シネです。
いろいろと見たい作品は盛りだくさんなのですが、いかんせん大阪では上演期間が短く、いろいろと見逃しておりました。
そしてそれを悔やむほど、すばらしい「マクベス」でした。

 

最初に演出のルーファス・ノリス、衣装デザイナーそして戦場カメラマンの短いインタビューもありました。
本来11世紀のスコットランドが舞台のこの作品をルーファス・ノリスは「核戦争後のどこか」をイメージとして作ったとのこと。
ガス、電気、インターネット、そういったものが瞬時になくなれば、人々は簡単に暴力支配になるのではないか、そしてそれは今も戦闘地域では起こっていて、よりマクベスの欲望や悩みが身近に感じられるのではないか、というようなことをおっしゃっていた気がします。

 

そして見はじめたら、現在の冬の服装をちょっと小汚くしたような衣装に、抽象的なアーチ型の橋のようなものが掛かる舞台。
そこで「三人の魔女」が精霊のごとく独特のセリフまわしと動きで世界観を際立たせていました。
あのマクベス」「マクベス」「マクベス」という独特のリズム、音程、イントネーションで、これほどまでに奇妙さを生み出せることにただ感嘆。これが演出です。

昔に「マクベス」を見た記憶があるのですが、インターネットで調べる限りどうも何かのタイミングで映像を見たようです。マクベス夫人といえば麻実れいさん、くらいわたしの頭の中ではあの存在感の強さのイメージが残っていました。
大学時代に授業でもちろん戯曲も読んだし、新感線の「メタル・マクベス」も劇場とゲキ×シネで見ているので、あらすじはだいたい頭の中にありました。
だからこそ、いつも拭えなかった疑問が「スコットランドという大きな王国の王を殺すことですぐ『王』になってしまえる」ことでした。

 

演出のルーファス・ノリスが現実の戦闘地域を身近に感じられるかも、とおっしゃっていたけれど、申し訳ないことにわたしにとっては「現実の戦闘地域」がどんなものなのか、感覚的にわからないところが多く、今回の演出を見ながら、どちらかというと「日本の戦国時代」だととらえると、今まで疑問というか感覚的に受け取りづらかったところがすとんと落ちてきたのです。

 

そして蜷川先生がこれを「NINAGAWAマクベス」で安土・桃山時代にしたのはまったくもって正しい判断だな、とうなりました。今さらですけど「NINAGAWAマクベス」見たかった。

 

世の中は混乱していて、いつ誰が天下を取ってもおかしくない時代。
マクベスはそういう時代の人だったのです。
武勲をあげるごとに「天下を取れるかも」という気持ちが高まっていた。
そこに「魔女がささやく」わけです。

今回はNTLiveだけの編集だったのかもしれませんが、三人の魔女のセリフが最小限に抑えられカットされていたのも、個人的には好みでした。
マクベスという「真面目で仕事の能力に長けた普通の人」の中にある「心の中の誘惑の声」のように感じられたからです。

そうなんです。マクベスが「普通の人」だったんです。
もちろん、悪女で名高いマクベス夫人も「普通の人」でした。
ただ環境が、時代が彼らに「身の丈に過ぎた夢」を見せた。
そしてそれを実行してしまったものの、もともとそんなことができる性格じゃないから、PTSDが彼らを襲う。
そんな「普通の人」としてマクベスマクベス夫人を演じた二人のすばらしかったこと。
見ながらつくづく「自分の器」を把握しないといけないと感じさせました。

もちろんポールにからまりのぼり、縦横無尽にうごめく「三人の魔女」たちの身体能力もすばらしい。
Fair is foul, and foul is fair.
日本語訳では「きれいはきたない、きたないはきれい」というのが有名ですが、このセリフが聞けなかったのが残念なくらい。

「え、ひょっとしたら自分も天下人になれるんじゃないの?」と思う前のマクベスは忠誠心に満ちた、しかも王から最も信頼を得ている臣下だったわけですよ。
真面目で忠実であることは、ちょっとしたきっかけで誘惑に負けて堕ちる。
でも一方で天下を取ったマクベスは「平和で安全な良い世の中」を目指していたりするんです。
だから本当に「Fair is foul, and foul is fair.」なんですよ。

そこで来年の大河の主人公・明智光秀のことをちょっと思い出したのですね。
まあ彼については明らかなことが少なくて、何がどこまで本当なのかわからないのですが、だからこそこのマクベスのように明智光秀を描くことも可能じゃないかなと。
忠実さゆえの反逆。
少しの野心。
より良い世の中をつくりたいという「清らかな目標」。
しかしそのために取った手段は、彼の心には重すぎたのです。

そう思うと「ひかるふる路」

で描かれたロベスピエールにもつながってくる。

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清廉の人が恐怖による政治を行ってしまう。
でもその心はいつも「争いがなくみんな幸せに生きている理想の世の中」がある。
その理想のために汚れる手。血のついた手。
そして狂ったような祭典をやってみたりして、最終的には自らがギロチン台の餌食になる。

 

戦乱の世に起こるだろうことをシェイクスピアは不変のテーマとして描いたのか、人とは何年歴史を重ねようとも変わらないのだろうか、とかいろんなことを考えさせてしまう舞台を作りあげたルーファス・ノリスに完敗な夜でした。

 

ところで「マクベス」という舞台のラストシーンはしようとすれば明るくもできます。
でもルーファス・ノリスはまだまだ混乱の世の中が続くことを暗示するようなどよーんとした閉め方をしました。
これを見ながら思わずかつて見たルーファス・ノリス演出の「キャバレー」を思い出しました。

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 あれより前にもあれから後にもいくつかの演出の舞台版「キャバレー」を見ましたが、ルーファス・ノリス版のあのラストシーンの重さったらなかったですね。
そしてそれが彼の特長なのかな、ああ英国で彼の演出を追いかけたいとか思ったのですが、このNTLiveJapanの一番ありがたい点に気づきました。
そう、字幕です(涙)

とりあえずシェイクスピアの英語が原語で聞き取れ、理解できるようになるまではNTLiveJapanさまの恩恵にこれからもすがっていく所存です。