こんなことを思ったり。ぼちぼちかんげき。

保護猫と同居人と暮らすアラフィフがビンボーと戦いながら、観劇したものなんかを感激しながら記録。

30年の時を超えて@梅芸「ベルばら45」

2/15(土)12:00~ 梅田芸術劇場

f:id:morton:20190218212227j:image

1980年~1990年代ALL

トーク&ソング 日向薫、紫苑ゆう、杜けあき一路真輝

f:id:morton:20190218212238j:image


宝塚歌劇で「ベルサイユのばら」が上演されてから45周年目ということで、「ベルサイユのばら45」と名づけられたイベントが開催されました。

ベルサイユのばら」の宝塚OGによる大掛かりなイベントはこれがはじめてで、あと5年待てば、切りのよい50周年目だったにもかかわらず、今開催されたのは、「平成が終わる」ということも少しあるのかなあと思ってしまいました。

 

というのも、宝塚歌劇で「ベルサイユのばら」が再演されたのが平成元年の8月のことだったからです。

そして奇しくも、わたしの宝塚歌劇観劇デビューでもありました。

だからこの「ベルサイユのばら45」の上演が決まったとき、「ああ、もうあれから30年も経ったのだなあ」としみじみしたものです。

そして、私が平成元年8月に雪組ベルサイユのばらアンドレとオスカル編~」に足を運ぶ原因となった大好きな杜けあきさまもご出演なされるということで、久々に当時のドキドキした気持ちで劇場に赴きました。

 

平成元(1989)年の「ベルサイユのばら」再演は宝塚歌劇75周年・フランス革命200年を記念して興行されたものでした。初演からは15年経っているとのこと。

さすがに初演は生まれる前のことなので、原作マンガ以外の何の知識もなく劇場に行き、圧倒されて帰宅したことだけを覚えています。

夏だったのに、暑かったのか過ごしやすかったのかとか気温や天気のことは全く記憶にありません。

ただ自分の体中が熱くなって、終わったときにはほてったような状態だったこと(母親は冷房で寒かったと言っていたこと)、補助席ながら前から4番目という良席で見せてもらって、終わったあとの客席のじゅうたんに衣装から外れたであろうスパンコールとふわふわの羽が落ちていたことだけを鮮明に覚えています。

そして機会に恵まれもう一度雪組を、連続公演だった星組の「フェルゼンとマリー・アントワネット編」を一度、さらに翌年春の花組「フェルゼン編」を二度観劇し、「ベルサイユのばら」はもういいやという気分になったころ、ダメ出しのように涼風真世さんトップお披露目公演の月組「オスカル編」に杜けあきさんがアンドレ役で出演されるということで、杜さんアンドレの日に一度見に行きました。

もちろん当時プログラムについていた脚本は何度も何度も読み返し(書き写しw しかも原作どおりの順番になるよう3組分組みあわせた大作ww)、もちろんマンガも文字通りボロボロにまるまで読み倒し、テレビ放映された映像は録画して何度も見ました。

平成元年から2年間、わたしは「ベルサイユのばら」にどっぷり浸かりすぎるほど浸かっていました。

 

あの感動から30年の間に、わたしは一度宝塚歌劇を見ることをやめ、10年ほど前から再度見はじめたのですが、見ていない時期にも、再度見始めてからも「ベルサイユのばら」は下記を含め、3度再演されました。


けれども例え好きなスターさんが出演される公演でも「ベルサイユのばら」であれば、わたしは見に行きませんでした。

最初の感動を上書きしたくない、というわけではありません。

若い頃2年間「ベルサイユのばら」に浸かりすぎたために、もうお腹いっぱいで入れる隙間がなかったのです。

 

なのに「ベルサイユのばら45」は大阪公演の初日に駆けつけてしまった。

それはもちろん杜さんが見たかったというのが一番の理由ですが、「私の平成はベルばらではじまったのだから、ベルばらで終わらそう」という気持ちもありました。

そんなわたしの気持ちに応えてくれるような「ベルサイユのばら45」は、公演として突っ込みどころはたくさんありました。あれから30年経って、それなりの数の舞台を見てきた分、わたしも擦れてしまいました(笑)

それでもあの頃「ただ好きで、ただ憧れた」あの気持ちをよみがえらせてくれるものでした。

 

公演自体の感想は、今週末にもう一度見に行くので、改めてまとめたいと思います。

 

とりあえずこの日のトークショー日向薫さん、紫苑ゆうさん、杜けあきさん、一路真輝さん)のトーク部分だけ、思い出せるかぎり書きとどめておきます。

Twitterにも書きましたが、わたしは瞬間記憶力も耳からの記憶力も低いので、会話はすべてニュアンスとしてとらえてください。会話の順番も曖昧です。すみません。)

 

日向「ご存知ない方もいらっしゃるだろうから自己紹介から」

(4人一斉に一路さんを見る)

一路「あ、下級生順ですね。平成元年の雪組でオスカルを演じました一路真輝です」

杜「平成元年の雪組アンドレ・グランディエを・・・、ってもう平成終わるんですね。あれから30年も経ったなんて。ついこの間のような気がして。あ、自己紹介ですね。え、知らない方います?」

日向「いるかもしれないでしょ」

杜「平成元年の雪組アンドレ・グランディエ、それから今はなんか『全国ツアー』っていうんらしいですけど、わたしたちのときはね、『地方公演』っていってね」

(3人「そうそう」みたいな頷き)

杜「『全ツ』『全ツ』ってなんか電気屋さんみたいですよね。全国ツアーでオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ…ってあってる?(紫苑さん、一路さんに)」

(二人頷く)

杜「あと、涼風真世さん、カナメちゃんのお披露目公演でアンドレを演じました杜けあきです」

紫苑「紫苑ゆうです。平成元年の雪組で特別出演でフェルゼンを演じて、その後ニューヨーク公演で星組には出られなくて、東京公演の星組花組でオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを演じました」

日向「平成元年星組のフェルゼンとアントワネット編でハンス・アクセル・フォン・フェルゼンと月組さんでアンドレを演じました日向薫です」

一路「ネッシー(日向)さん、わたし、今、思い出しました」

日向「そうだよね」

一路「星組さんでも特別出演でオスカルをやらせてもらって、その時のアンドレは今ここにはいないんですけど、麻路さきさん、マリコちゃんで、ネッシーさんとも『ボレロ』を踊らせていただきました」

日向「そう5人代わりでね」

紫苑「代わりって私の代わりって意味ですか?!」

日向「違うわよ。ちゃんと5人って言ったでしょ。あなたの代わりなら4人って言うでしょう」

 

日向「みんな原作(マンガ)は読んでた?わたしは当時連載中で夢中になって読んでた」

杜「私と一路は15年前の初演の『ベルばら』を見て」

紫苑「それなら私だって」

杜「違う、違うの。おとうちゃん(紫苑さんのこと。杜さんは紫苑さんのことをこう呼ぶ)は今黙ってて。私は宝塚を知らなくて、テレビで放映された『ベルばら』を仙台で見て」

一路「私は名古屋の一宮市民会館で」

杜「はじめて宝塚を観たの」

紫苑「私は神戸出身なので宝塚はしょっちゅう見に連れられてたんですね。でもあんまり興味がなくて、でも原作の大ファンでそれを宝塚で見て、宝塚にはまったんです。だから今の私があるのは『ベルばら』のおかげなんです」

日向「私はね、初演の星組公演が初舞台でした。だから本科生のころによく見てて。お客様が本当に熱くて」

杜「私たちは再演という恵まれた環境でやらせてもらったんです。もちろん原作のイメージを壊さないようにというのはすごく気を使ったけれど、初演のときは原作ファンの方とのこともあって、大変だったんですよね」

紫苑「原作イメージがあるからね。だって前髪からまつげ出てるんやで。もはや前髪にまつげつけたらいいんちゃうっていう」

日向「そういえば、シメ(紫苑)は鬘を」

紫苑「はい!オスカルの鬘8ツ、ボレロ4ツ作りました!」

 

杜「自分が憧れた作品にとても大きな役で出演できるって本当に運がいいと思います。この後、スターさんたちが衣装つけてやるんですけど、それを見るたびに感動するよね」

紫苑「どうして私たちは衣装が着られないんだーー!」

日向「まあまあ。でもボレロとかね、思わず一緒に踊っちゃうよね」

杜「そう、この4人はみんなボレロをやっているので、実は後ろで一緒に踊ってるんです。もう衰えたから足踏みだけだけど」

一路「そんなこと言ったら、みなさん思い出して笑っちゃうじゃないですか」

杜「大丈夫。そんなこと忘れるくらい素晴らしいから」

 

日向「再演の時の思い出とかも話しておく?」

(3人一路さんを見る)

一路「あ、私からですね。私たちは平成ベルばらの最初の公演だったので、前夜祭っていうのがあったんですね。そこで一場面演じることになったんです。で、今みたいなこういうカーテンの裏でスタンバっていたらですね。あの杜けあきさんがね、緊張で震えてらして。もちろん重圧もあったからなんですけど」

杜「違うの。あのって言うけど。一路さんも。あなたが杜けあきさんっていうから、つられるじゃない。いっちゃん。東京でもいっちゃんがこの話をしたんですけど、私、全然記憶になくて」

一路「そう。記憶にないんですって。」

杜「毒殺?毒殺のシーンだっけ?」

一路「毒の入ったワインを飲ませるところ。持ってたワイングラスがガタガタ揺れてたんですよ」

杜「でも、あの、っていうけど、私は、あ、私とかマリコちゃん(麻路さきさん)はドーンってしてるから緊張してないように見えるだけで、本当はすっごく緊張してるの。でもいっちゃんが東京でこの話をしたときに、ちょうど客席にアユちゃん、鮎ゆうきちゃんがいてね、終わったあとお食事したんですけど、アユちゃん『一路さん、あんなこと言ってましたけれど、一路さんの方がもっと震えてましたよ』って言ってたよ」

日向「あ、そろそろ時間が」

杜「ここ、すごく客席近くないですか。東京のときはもうちょっとこのカーテンも後ろにあってね。でも後ろにレジェンドが控えてるから後ろからの圧もすごくて…」

日向「オーラね」

紫苑さん「(カーテンの間から舞台を覗いて)ショーちゃん(榛名由梨)さんが私のせいにせんといてって言ってはる」

日向「関西のノリね」

というところで、無事にトークコーナーは終了しました。

 

とにかくあの大好きだけが詰まった時代のトップスターさん、2番手スターさんのトークに胸いっぱい、笑いいっぱいで幸せなひとときでした。

切なくなるほどハッピーにしてくれる、それがメリーポピンズだから@メリーポピンズ リターンズ

2/1(金)なんばパークスシネマ

f:id:morton:20190202140633j:image

なぜこんなにミュージカル好きになったか、を考えると、きっかけはメリーポピンズでした。

もちろん

だって、

だって大好きでした。

でも「メリーポピンズ」は特別でした。

その理由を「メリー・ポピンズ リターンズ」を見ながら考えたのですが、それは後にしますね。

 

とりあえず「メリーポピンズ」が大好きなわたしが、この作品のことを知ったのは、リン=マニュエル・ミランダのTwitterでした。

リターンズってついてるってことは、「帰ってきたメリーポピンズ」

帰ってきたメアリー・ポピンズ (岩波の愛蔵版 14B)

帰ってきたメアリー・ポピンズ (岩波の愛蔵版 14B)

 

ミュージカル映画化?とか思ったのですが、どうやら違うらしい。

で、勝手に

リメイクか!

リン=マニュエル・ミランダがバートなら見に行く!

と決めておもむきました。

 

そしてはじまってリメイク版でないことを知りました(^◇^;)

最初に早速リン=マニュエル・ミランダが歌うのですが、この辺りで音楽違う、あれ?とは思ったんですよね。

でもその後のオーバーチュアはみごとにオリジナル版の音楽なんですよ!

そして物語がはじまったらブーム海軍大将が大砲を鳴らして、例の「桜通り17番地」のバンクス家が映って、ジェーンとマイケルという名前が出てくる。

やっぱりリメイクだと思ったら、なんと母親だと思っていたのがジェーンで、父親がマイケルだったのです!衝撃!

 

ま、そういうことでオリジナル版とは全く違うストーリーと音楽の作品だったわけですが、これは間違いなく「メリーポピンズ」が「リターン」する話しでした。

 

子どもの頃、メリーポピンズのどのシーンが好きだったかというと、

①ジェーンとマイケルの歌声と手紙の内容

②チムチムチェリーに乗せて、煙突掃除夫たちが屋根で華麗に踊るところ

③スーパーカリフラジリスティックエクスビアリドーシャスのアニメーションのコラボと美しい衣装、カラフルな絵面

だったのですが、リターンズにはオリジナルに劣らないシーンが全部ありました!

笑い上戸のアルバートおじさんに代わる人物と設定もあったのです!

 

映画館についてから、監督がロブ・マーシャルということも知ったのですが、この時点ですべてのダンスシーンに対する安心感。

ロブ・マーシャルといえば、振付家

しかもフォッシーに憧れた人で、かつミュージカル映画版「CHICAGO」の監督です。

個人的に振付家のつくるミュージカル映画は、ダンスシーンにこだわりがあって見応えがあるので信頼できるのです。

そしてその信頼にきっちり応えるロブ・マーシャル、バンザイ!

フォッシースタイルのショーシーンで、ハットとステッキの使い方がすばらしかったのはもちろんのこと、メリーポピンズのドレスの裾さばきまで美しくて堪能しました。

さらに煙突掃除夫ではなくて街灯点灯夫たちの街灯を使ったダンスシーンは、幻想的かつ迫力満点!!

ああ、このシーンだけでもまた見たい!

そしてそういうダンスシーンがあれば、わたしにとってミュージカル映画は成功です。

 

その上で、この映画はちゃんと「メリーポピンズ」でもあったのです。

オトナになったジェーンとマイケルが生きているのは大恐慌時代のロンドン。

マイケルには3人の子どもがいるのですが、一年前に妻に先立たれ、哀しみが癒えずにいます。そこにたたみかけるように借金の取り立てがやってきて、思い出つまった「桜通り17番地」の家が差し押さえられるかもしれないという大ピンチ。

そんなときにやってくるのです。

そんなときだから、やってきてくれるのです、メリーポピンズは。

 

「Saving Mr.Banks」を見たときに(感想こちら→https://stok0101.hatenablog.com/entry/2016/06/13/121000)

ああ、こうやってどうにもならない現実を無理矢理でも強引でも前に進めてくれる人がほしかったのだな、そしてそれを「メリーポピンズ」として書いたのだなと涙しました。

だからこそ今回の「メリーポピンズ」は「メリーポピンズ」でした。

 

メリーポピンズは魔法みたいなものを使う。

けれどそれが彼らを直接的に助けてくれるわけではないのです。

まあ今回のビッグ・ベンでのシーンでは、ジャックたちがあんなに苦労したのに、それができるなら最初からやってやれよ、とは思いましたが、それ以外は特に何もしてくれません。

メリーポピンズの魔法はもしかしたら思い込みで夢かもしれない。

辛い現実が見せた幻かもしれない。

メリーポピンズは不可思議をいっさい説明しません。

そしてそれこそが、昔も今もわたしを魅了しているのではないかと思うのです。

 

この世は辻褄や説明のつくことばかりではない。

それでもみんなそれぞれの方法でなんとか1日を過ごして生きているのです。

映画のメリーポピンズはそれを少し楽しい方へ手伝ってくれるのです。

その楽しいものに「これこれこういう理由だから楽しい」とかいらないのです。少なくともわたしは。

突然におこる不思議を楽しんでしまいたいのです。

そしてこの映画はまさしくそういう映画でした。

最後の幸福感は「Saving Mr.Banks」を思い出すとまた切なさもあり、ただただ涙でした。

(でもPLトラヴァースは絶対この映画も気に入らなかったとは思いますw ただエンドロールでトラヴァース家への感謝の文字が流れたのが、とてもよかったです)

ぜひとも少し心がつかれた日に見てもらいたい映画です。

メリーポピンズがきっと少しだけ元気をくれます。

 

ところでオリジナル版の「メリーポピンズ」と言えば、ジュリー・アンドリュース

もはやメリーポピンズとイコールで結ばれてる役を新たに演じるというのはけっこうなプレッシャーな気もします。

でもまあ、ロンドンで舞台版ミュージカル「メリーポピンズ」が上演されたのが2004年のこと。その12月にロンドンで舞台版を見ました。

さらに去年日本でも日本版が上演されましたから、メリーポピンズがジュリー・アンドリュースでなくても耐性はできていたように思います。

それを置いておいても、エミリー・ブラントのメリーポピンズ はステキでした!

厳しそうでキツそうなところは、ジュリー・アンドリュースよりも原作のメリー・ポピンズに近かったのでは。

プラダを着た悪魔」でハリウッド進出したらしいのですが、見ているのに全然記憶にない(^◇^;)

しかし舞台と映画のキャリアしか見当たらないのに歌がいいんですよ!

わりと低めの声で、発声が強くて歌声に力があるんです。つまり個人的にとっても好みな歌声でした。なかなか日本人には出せない声質。

これは映画のためにちょっと勉強したくらいでは歌えないだろうと思って調べてみたら、学生時代ミュージカルでエジンバラ・フリンジ・フェスティバルに参加していて、そこでエージェントに見出されたとのこと。納得。

(映画の番宣でジェームズ・コーデンの番組に出てるかも、と思って探したらありました!

エミリー・ブラント、エビータ似合う!)

 

そしてわたしが見に行くきっかけになった、リン=マニュエル・ミランダは文句なくチャーミングでした!

歌も彼の特技を活かしたラップもあったりして、その辺りの進化も楽しかったですね。

ちなみにリン=マニュエル・ミランダは、今や大ヒットミュージカルとなった「ハミルトン」

Obc: Hamilton

Obc: Hamilton

 

の脚本・作詞・作曲家で主演までしちゃうブロードウェイ・ミュージカル界の若きスーパースターです。

 

バンクス家の子どもたちの歌も可愛かったし、

マイケルのソロ曲も切なくてよかったし、最後の最後で「2ペンスを鳩に」も絡まされて、映画「メリーポピンズ」ファンとしては、すみずみまで満喫できる作品でした。

しかしこれ、映画「メリーポピンズ」ファン以外が見たらどう思うんでしょうね。

そして、映画「メリーポピンズ」ファンとしてあるまじきことに、バートを演じていたディック・ヴァン・ダイクが出演していたことにエンドロールで知らされるまで気づきませんでした(^◇^;)

とりあえずブルーレイが発売になったら絶対に買うんですけど、その前にディック・ヴァン・ダイクの登場がどこだったか確かめに、また見に行くべきですかね。

観劇で一年を振り返る2018

あっという間に今年も終わりですね。
気づいたら大晦日なので、恒例の観劇記録をやります。

★11月

KERA MAP「修道女たち」
宝塚雪組「ファントム」

 REON JACK3

★10月

ジャージーボーイズ


★9月

シス・カンパニー「出口なし」

stok0101.hatenablog.com

 宝塚月組エリザベート

stok0101.hatenablog.com

 来日公演「コーラスライン

stok0101.hatenablog.com

 

★8月

シアタークリエ「TENTH」兵庫公演

stok0101.hatenablog.com

 宝塚花組メサイア」「ビューティフルガーデン」

stok0101.hatenablog.com

 ★7月

宝塚雪組凱旋門」「Gato Bonito!!」 

stok0101.hatenablog.com

 ★6月

1789-バスティーユの恋人たち

stok0101.hatenablog.com

 宝塚星組「ANOTHER WORLD」「Killar Rouge」

stok0101.hatenablog.com

 ★5月

ナイロン100℃「100年の秘密」 

stok0101.hatenablog.com

 ★4月

ラ・カージュ・オ・フォール 

stok0101.hatenablog.com

 ★2月

マシュー・モリソン ビルボード大阪ライブ

stok0101.hatenablog.com

 宝塚月組「カンパニー」「BADDY」

stok0101.hatenablog.com

stok0101.hatenablog.com

 劇団四季ジーザス・クライスト・スーパースター エルサレムバージョン」

stok0101.hatenablog.com

 デビット・ルヴォー「黒蜥蜴」

stok0101.hatenablog.com

 ★1月

シアタークリエ「TENTH」ニューブレイン週 

stok0101.hatenablog.com

 宝塚花組ポーの一族

stok0101.hatenablog.com

 まさかの20本ですか!
そりゃあ赤字になるわけだ。
しかもエリザベートは一回台風で公演中止になったからなあ。

あ、REON JACKの感想が書けてないのは、ダンスはすばらしかったのに、構成と公演の趣旨が「柚希礼音による柚希礼音ファンのためのコンサート」だったからです。
本人とファンがあれで納得しているならば、部外者がどうこういうものじゃないのです。
とりあえずすばらしいダンスを見れたことに感謝。そしてすばらしいダンスシーンで手拍子はやめようと思いました(^◇^;)

いやー、わたしもダンスするようになってから手拍子がリズムとずれてることが気になって、必死に1人でドラム音に合わせて手拍子してたんですけど、やっぱりあれ、ダンサーにとってはリズムがずれるのが気になるらしいですよ(SHUN先生談)(^◇^;)

あとは今さらながらケラさまに目覚めた一年でした。
ル・サンクを写真目当てでしか買わないのに、「100年の秘密」も「修道女たち」も戯曲を購入しましたものねえ。
そしてケラさまにハマった元々の下地はどこからくるかというと、「出口なし」だったりするわけですよ。
そんな演劇への夢とかを思い出させてくれた一年でもありました。

ということで、いってみましょう!

★あなたの賞を作ってください(つけたしても可)

作品賞
【黒蜥蜴】


これ、今回本当に難しかったのですけれど、脚本・演出・役者のバランスが最も高かったもの、という基準で選びました。

 

若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇 (岩波文庫)

若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇 (岩波文庫)

 

 



あの三島由紀夫の流麗な日本語を中谷美紀さんが奏でるように口にするのが本当に美しかったです。
そしてルヴォー氏のマイナスの美学なセット。
いいのですけど、ケラさまも宝塚も割ともりもり派なので、引き算のセットに今回は軍配をあげようかと。
そうそうポスターも抽象的で美しかったこともすばらしいです。

脚本賞
【修道女たち】

 

修道女たち

修道女たち

 

 



もうこれしかないでしょう!
なんでこんな世界観が作れるのか、前半だけでケラさまの才能に嫉妬しました。
たぶんわたしは、こういうものが作りたかったのじゃないかと。こういうものを作れる人になりたかったのだと、若い頃の夢を思い出しました。

特に今年は個人的な「BADDY」の呪いにかかっていまして、ショーですらロジカルでないと受け入れてもらえないことにかなりのショックを受けたのです。

そこをね、ケラさまはこの作品でかるーくぶっ飛ばしてくださったのですよ。
作品が素晴らしければ、ロジカルだろうとそうでなかろうと感動できる。
ケラさまの脚本が全くロジカルでない、というわけではないですよ。
でもすべてにロジック、因果関係や理由があるわけではない。そういうことが起こりうるのがこの世の中ではないか、とそう言ってくれた気がしたのです。
「なんでもわかるわけじゃないんですよ」
というセリフは、作品ともあいまって、許しみたいなものを与えてくれました。

演出賞
【藤井大介/Gato Bonito!!】

 

 



脚本賞の前段をふまえて、この結果で。
わたしが宝塚全公演を観ているわけではないので、偶然見ただけで申し訳ないのですが、それでも宝塚観劇復活してから見た新作ショーでは、水さんサヨナラの「Rock on」以来、これ巻き戻してもう一回最初から見たい、永遠に見たい、と思えるショーを作ってくれたことに感謝です。
ちゃんと円盤も購入しました(正しくはリクエストしてプレゼントにもらったのですが)。
楽しいです。キレイです。こんなストレスフリーで楽しいショー、ひさびさでした。

主演男優賞
中川晃教/ジャージーボーイズ】

本当に中川晃教がいなかったら、この公演の日本版なんて作れなかったですよ。
アッキーにとっても、「モーツァルト!」「SHIROH」に次ぐ当たり役じゃないですか?
FNS歌謡祭で「再演します!」的なことをおっしゃってたのを信じて、再々演をお待ちしております!
今度はいい席で2回くらいがんばってチケット取ります!
楽しい楽しい作品ですが、それ以上に中川晃教を見て聞くだけで価値のある作品でもありました。

主演女優賞
【明日海りお/ポーの一族

 

花組宝塚大劇場公演 ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』 [Blu-ray]

花組宝塚大劇場公演 ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』 [Blu-ray]

 

 



トップ男役に女優賞というのもなんですが、少年役なので、あえて明日海さんに。
というくらい明日海さんのエドガーがエドガーとしてスキルで魅せてくれた点をわたしはとても評価しています。
少年役も人でないもの役もとてもスキルのいるものです。
それを明日海さんはなんなくこなした上で、美しくエドガーを魅せてくれた。
感想にも書きましたが、ビジュアルだけでいったら明日海さんよりエドガー向きの人はいくらでもいます。
宝塚だけでなく、今のミュージカル界の2.5次元ミュージカル出身者男性は、めちゃめちゃ美形の人が多い。
それでも明日海さんほどのスキルをもってエドガーを演じられるか、魅せられるかというと別問題だと思うのです。

助演男優/女優賞
ソニン/1789】

もうここの常連ですね、ソニン(^◇^;)
わたしは彼女の主演舞台を見たことがないので、ぜひとも「WICKED」のエルファバを彼女で見たい!
誰かが書いてらしたけれど、もはや「ソニンというジャンル」まできましたものね。
とりあえず来年「キンキーブーツ」再演を見に行くことは決まっているので、またソニンを見られるのを楽しみにしています。

男優賞は成河くんかな。
ミュージカル、演劇どちらもきちんとできるスキルがすばらしいです!

そして照明&セット、衣装デザイン賞はやっぱり「黒蜥蜴」に。日本ってマイナスの美学の国なのに、なかなか演劇でそれを活かせる演出家、セットデザイナーが出てこないのが残念です。

★総括と来年の意気込みをどうぞ
あ、総括を脚本賞で語ってしまってる(^◇^;)
ま、そういうことです。
だからやっぱり「出口なし」が今年はじめて日本語で見られたのも大きかったですね。
そして上演されたのもすばらしいと思います。
演劇は単なる娯楽だけど、でも見るならばそれ相応に勉強するのも一つの楽しみ方で、演劇を勉強するなら、やはり「出口なし」とかは必見の作品です。
ああー白井晃演出の「出口なし」も見たい!
なぜ大阪に来てくれないんだ!
という思いをたくさんしそうな一年な気がします。
でも情報収集して、いい作品が大阪に来たときにらなるべく見られるよう、がんばって働きます!←そこか!笑

不思議が生み出すもの@KERA MAP「修道女たち」

11/23(木・祝) 17:30〜 兵庫県立芸術文化センター 中ホール

キャスト
オーネジー 鈴木杏
シスター・ニンニ 緒川たまき
テオ 鈴木浩介
シスター・マーロウ 伊勢志摩
シスター・ソラーニ 伊藤梨沙子
シスター・アニドーラ 松永玲子
テンダロ/ドルフ/保安官/死神 みのすけ
シスター・ノイ 犬山イヌコ
シスター・ダル 高橋ひとみ
シスター・グリシダ(声のみ) 林原めぐみ

作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ



上演時間が長いよ、と聞いていたのですが、実際はこんな感じでした。


でも見ていると体感時間は一瞬でした。
そのくらい集中して惹きつけられたお芝居は久々でした。
一部終わったあとにわたしがとった行動は、すぐに戯曲を買う、でした。
修道女たち
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
白水社


この本のあとがきによると、事情がありポスターを取った時点では修道女が出る物語、以外のなにも決まってなかったそうです。
そこからあれだけの世界観を創り上げるケラさまにひたすらうなるばかりです。

そんなストーリーはこんな感じでした。
とある国でキリスト教っぽい修道院に入っている修道女たち6人が、毎年恒例の巡礼の旅にでます。
彼女たちが信仰する宗教の聖地はど田舎にあり、その伝説は真冬におこったとされるため、凍てつく寒さの中、雪の降り積もる祠へ向かいます。
その祠では、修道女に憧れるオーネジーとオーネジーにつきあって幼なじみのテオが修道女たちを待っています。
無事、巡礼地についた修道女たちですが、出発前から抱えていた問題は、ここでも彼女たちにせまりきます。


オープニングの教会っぽい背景の前で、修道服に身を包んだ修道女たち6人が交わす会話のおかしさ。この不自然さをまるっと飲み込むものが宗教というものなのかもしれません。
6人のうち1人シスター・ソラーニは母親に連れてこられただけで一向に信仰心などないので、そこに突っ込んでいくのですが、特に緒川たまきさん演じるシスター・ニンニは彼女の指摘こそが不思議という感じなのです。
何か神々しい雰囲気をまとう緒川たまきさんの美しさこそが、シスターというどこか浮世離れした存在を表現していました。

しかしながらシスターたちも浮世と離れて暮らしていけるわけではないのです。
彼女たちを襲った苦難の現実。
それにどう向き合うのか。
どこまで何を信じるのか。
その中で起こる不可思議がみごとに溶け合い、包み込むように1つの世界が出来あがっているのです。
最後のその美しい完結を見るとき、スノーボールの中の世界に引きずり込まれたような感覚でした。

最中の会話は俯瞰者として面白く笑ったり、彼女たちと一緒にドキドキと怯えたり、少しずつ晒されていく事実に納得したり、本当に終始気持ちを引っ張られる舞台でした。
あの美しい完結も、オーネジーの希望が見せたもので、現実は本当に陰惨な絵なのもしれないと思うと震えました。

全てを知った今、またもう一度見たい、そう思うのです。
でもシスター・ニンニは緒川たまきさん以外考えられない。
あの﨟たけた美しさ。
玉を転がすような柔らかくて優しい声。
彼女こそが女神でした。
神に仕えるということの意味を緒川たまきは全身で表現していたのです。

そんなシスター・ニンニだったからこそオーネジーが憧れるのがよく分かる。
オーネジーは少し知恵おくれです。だから難しいことは分からない。けれども純真でだからこそ無邪気に残酷で、純粋な凶暴性も持ち合わせているさまを鈴木杏ちゃんがさすがの演技力で魅せてきます。
ただもし可能であれば、鈴木杏ちゃんの演技力を持ちながら、透明感が出る役者さんでこの役はもう一度見てみたいなと思いました。
昔の羽野晶紀さんのような、藤原竜也くんみたいな透明感。鈴木杏ちゃんの演技力がそれこそ誰もが身につけることができないように、透明感も努力ではどうにもならないのはよく分かっているけれど、緒川たまきさんの浮世離れ感に最終的に一体となっていく感じが個人的には見たいなと。

それにても犬山イヌコさんと伊勢志摩さんの掛け合いの面白さといったら!
絶妙な間合い、絶妙なトーン。
戯曲を読むだけでは笑いまではいかないところをちゃんとおかしく見せるのを見るとき、演劇のすごさを感じます。

そしてシスター・アニドーラの高橋ひとみさんがまた良かった。
悩める母親、1人の女、バカだけど真剣で、でも色気があってチャーミング。
アニドーラ自身が高橋ひとみさんそのものみたいに感じさせたのがさすがです。

もちろん何役も演じたみのすけさんのコミカルさ、鈴木浩介さんのオーネジーに通ずる優しさと残酷性もすばらしかったです。
ただ戯曲に書かれていた最後のセリフが、実際には聞こえなくて、このセリフが聞こえるか聞こえないかでずいぶんと変わってくる気がするのです。それが残念でした。

今回もプロジェクションマッピングを使ったオープニングもセットも照明もとても美しかったです。
でもセットについては、100年の秘密の方が好きでした。木が真ん中にあるのに不自然に感じさせない舞台の強みをドーンと魅せてきたのに対して、今回は美しいけれどまあ普通のセットだったんですね。特に外の降り積もった雪のセットのところはもう少し演劇的な見せ方ができたらおもしろかったかもしれません。

ところで物語はロジカルでいずれはAIが作るだろう、とある人が言っていました。たしか演劇を作る人だったと思います。
でもこの物語はAIでは絶対に作れない。
見ながら「辻褄があわないとイヤな人が見たらイヤだろうな」と思うシーンがいくつかあったのですが、そのシーンが全て戯曲のあとがきにそういうご意見があったと書かれていて納得。
でもケラさまの、シスター・ノイの言葉どおり、世の中は「なんでもわかるわけじゃないんですよ」。
まだまだ説明のできることばかりではない。
説明できないことは「不思議」になる。
そこに信仰が生まれることもある。

理詰めに疲れたわたしを優しく包んでくれるそんな舞台でした。

彼女は逃げない@宝塚雪組「ファントム」

11/17(土) 11:00〜

ファントム 望海 風斗
クリスティーヌ・ダーエ 真彩 希帆
ジェラルド・キャリエール 彩風 咲奈
フィリップ・ドゥ・シャンドン伯爵 彩凪 翔
アラン・ショレ 朝美 絢
カルロッタ 舞咲 りん

脚本/アーサー・コピット 
作詞・作曲/モーリー・イェストン
潤色・演出/中村 一徳 翻訳/青鹿 宏二

アラフォーおといーぬは当時宝塚休憩中ではありましたが、2004年版の初演を見ています。
宝塚宙組DVD「ファントム」和央ようか花總まり安蘭けい悠未ひろ
宝塚歌劇団,宙組,和央ようか,花總まり,出雲綾
メーカー情報なし

ブロードウェイミュージカルの初日本版、という言葉に弱いくらいにはブロードウェイファンなのです。

とは言え、記憶が1シーンしかない。
アンドリューロイドウェバーの「オペラ座の怪人」もロンドンで見ているのですが、面白かったけれど夢中にはなれず、ミュージカル映画
オペラ座の怪人 [Blu-ray]
ジェラルド・バトラー,エミー・ロッサム,パトリック・ウィルソン,ミランダ・リチャードソン,ミニー・ドライヴァー
ギャガ・コミュニケーションズ
もみていないありさまで、ストーリーについてはほぼまるっと忘れた状況で見に行きました。

そんなわたしがまるっと忘れていたストーリーはこんな感じでした。

カルロッタと従者の男がオペラ座の中を探っている。男は地下で仮面を被った男に出会い、そのまま行方をくらませてしまう。
一方、シャンパンで財をなしたシャンドン伯爵は、オペラ座の前で歌いながら自作の曲を売っているクリスティーヌに出会う。
その歌声に惚れこんだシャンドン伯爵は、歌のレッスンを受けられるようオペラ座の支配人キャリエール宛の紹介状を書いてクリスティーヌに渡す。
しかしその頃オペラ座はアラン・ショレ&カルロッタ夫妻に乗っ取られて、キャリエールは支配人の座を下ろされてしまっていた。
キャリエールはオペラ座には幽霊がいるから気をつけるようにと言い残し去る。
その後夫妻の元には「ファントム」からの脅迫状が届き、初公演をめちゃくちゃにされてしまう。
そんな頃、シャンドン伯爵の紹介状を持って現れたクリスティーヌは、シャンドン伯爵がオペラ座パトロンであることを知った夫妻によって衣装係として雇われる。
オペラ座にいられるだけで幸せと歌うクリスティーヌの歌声に魅了された「ファントム」はオペラ座に立てるようクリスティーヌのレッスンを申し出る。
2人のレッスンが進みクリスティーヌは歌声を披露する機会を得て、オペラ座デビューが決まるが・・・


オペラ座の怪人」には描かれない「なぜ彼がオペラ座の怪人になったか」というところを見せる演目なのですが、ここの部分は2部になります。

オーバーチュアの間、オペラ座の地下に潜っていく映像が1部でも2部でも流れるのですが、これが軽いアトラクション気分で作品の世界観を乗せてきたいい演出だと思います。
全体に衣装もセットも豪華で、セリフのある役は少ないけれど、わらわらと人がたくさんいるのが「オペラ座」の裏側っぽいのもよかったですし、クラシックなコーラスも多く、存分に宝塚歌劇の強みは打ち出せたかなと。

さらにファントムとクリスティーヌの歌がめちゃくちゃうまいので、このハーモニーを聞くだけで、作品的には成功です。
もう2人の声が合わさったときの「音」が鳥肌モノの美しさでした。

なのでストーリーについてどうこういうのは野暮でしょう。
けれどもいいたくなる、え、そんな設定だっけ?なキャリエールの、ファントムの過去。
そしてファントムとキャリエールの関係性を考えると、実際はトップスターより年若い二番手がキャリエールを演じなければいけない宝塚制度も苦しい。

この体制でいくならば、2部のキャリエールの昔語りはキャリエール本人に若返らせてやらせてあげたいけれど、それはそれで役が少ないから他の生徒に当てるのも残念です。

ところでわたしが唯一覚えていたシーンというのが、キャリエールとファントムの最後の銀橋のシーンでした。
そのときのキャリエール・樹里咲穂さんのセリフの言い回しがうまくて上手くてそれだけが記憶に残っていたんですね。
それを彩風咲奈(咲ちゃん)がやるってことで、かなりドキドキものだったのですが、セリフ回しはともかく、このシーンの歌い出しの「音」(エリック、のエの部分)がすごく低く柔らかく暖かい音色ですばらしく、今回の「ファントム」は、「歌声」が良かったにつきるなと思いました。

ところで見ているうちになくなっていたと思っていた記憶も、どこからか蘇ってくるようです。
2部の美しく慈愛に満ちあふれ、まるで聖母のようにすら感じたまあやクリスティーヌの「My True Love」を聴きながら、これなら私がファントムも仮面外すわと納得してたんですけど、でも外した後の行動がふっと蘇ってきたんですね。
で当時のクリスティーヌ・花總まりさんのこの歌を「ファントムだまされるな。この女を信じるでない!」と思いながら聴いていたことを思い出したのです。

だから歌としては今回のまあやちゃんがあるべき姿なのだけど、役作りとしては花總さんの方が正しいわけですよ。

とはいえ、まあやクリスティーヌの「My True Love」が素晴らしすぎたのでこれは失くしたくない。
となるとその後の演出を「ガラスの仮面」の「二人の王女」でマヤが演じたアルディスの「ためらいの演技」くらいにしてもらえませんかね?
(分からない方は今すぐ「ガラスの仮面」文庫版16巻を買って読んでください!笑)

せめて鏡のシーンでシャンドン伯爵に「助けて」というセリフを変えるとか、その辺もともとの脚本をいじるのはやっぱり難しいわけでしょうか。

となるとまあやクリスティーヌが「わたしってピュアだからあなたがどんなでも大丈夫って思い込んでいるだけの軽さ」を込み込みで歌ってもらわないといけないわけで、しかしそんなの込み込みで歌われたら、ファントムだって分かってたけど仮面外したよ、にしないといけないわけで、いろいろと難しい演目だなと感じました。

あとは役について箇条書き。
カルロッタ 舞咲りんさん。
いやあ当たり役ですね。コミカルからシリアスまで自由自在。もちろん歌もすばらしい。

シャンドン伯爵 彩凪翔さん。
プレイボーイっぷりが板についた格好良さ。「シャンパンの王様」の肩書きの似合うこと。そして咲ちゃんキャリエールと本物の友だちっぽいところがステキでした。

アラン・ショレ 朝美 絢さん。
よくぞこんな役をきっちりと歌い演じたものです。あーさ(朝美 絢)の演技力の確かさを実感。
こうなるとあーさシャンドン伯爵も見たかったです。

ところで小池先生以外の一本ものを見るのがかなり久しぶりだったので、フィナーレのバリエーションに驚きました(笑)
娘役だけのシーンもあるし、ダンスナンバーの振り付けもいいし、銀橋を色んな人が歌って渡るわでとても楽しかったです。
ショー作家としてのスキルを存分に発揮されたフィナーレでした。

天才役は一級品@ミュージカル「ジャージーボーイズ」

10/27(土)17:00~ 新歌舞伎座

フランキー・ヴァリ 中川晃教
トミー・デヴィート 伊礼彼方
ボブ・ゴーディオ 矢崎広
ニック・マッシ spi

太田基裕
阿部裕
畠中洋

綿引さやか
小此木まり
まりゑ
遠藤瑠美子

大音智海
白石拓也
山野靖博
石川新太

演出: 藤田俊太郎

フランキー・ヴァリもフォーシーズンズも知らなければ、この映画の存在も知りませんでした。
ジャージー・ボーイズ [Blu-ray]
ジョン・ロイド・ヤング,エリック・バーゲン,マイケル・ロメンダ,ビンセント・ピアッツァ,クリストファー・ウォーケン
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント


なのになぜ見に行ったか。
アッキー(中川晃教くん)の歌声が満喫できると聞いたからです。
感想。
なぜ、初演時、東京まで遠征して見なかった、私!
と大後悔するほどアッキーの歌声はすばらしく、ライブ感満載の楽しい作品でした。

ジュークボックス・ミュージカルというカテゴリーにはなるようですが、フォーシーズンズやフランキー・ヴァリの往年のヒット曲に違うストーリーをつけているわけではなく、彼らの物語を描いているので、ボーイ・ジョージニューロマンティック世代を描いたこのミュージカルに近いです。
Taboo: the Boy George Musical [Special Edition]
リエーター情報なし
メーカー情報なし


物語はフォーシーズンズの一人トミーが「天使の歌声」を持ったフランキー・ヴァリを見出すところからはじまります。
そこから起こることは、おそらく多くのバンドやグループが経験することなんだろうなと想像できる内容。
ドン底から成功へ。
そしてそこで起こる価値観の違いと才能と金銭からくる亀裂。
それでも「仕事のため」と日本人にはちょっとわからない「ニュージャージー出身者の連帯感」でグループを存続させていこうとするフランキー・ヴァリ
けれども一度入った亀裂は広がる一方で・・・。


3階建てのセットと、重ねられたテレビに映る映像、1番上に設置された客席が映る鏡に、最初視点をどこに持って行ったらいいのか迷ったのですが、物語がはじまるとすぐに馴染んでしまったのが不思議です。
照明も通常の演劇やミュージカルよりももっとライブ寄りでなかなか面白く、そういう点でも見応えもありました。

またキャストもそれぞれにいいキャスティングで、特に伊礼彼方が個人的には今まで見た役の中でもハマっていて見直しました。
憎めない悪役をできるのは実はなかなかいないのですよね。体格もいいし、王子路線よりもこちら側の役の方が彼に似合っていると思います。
また矢崎広くんをはじめて認識したのですが、かわいらしく、歌も上手でもはや今のミュージカル界の男優はテニミュに感謝しなければと強く思いましたね。
そしてほかのアンサンブルの方々も少ない人数でいろいろな役を演じ分け、好演していました。

でもそんなことよりどんなことより、アッキーなんです!

アッキーは演技は特にうまくはありません。セリフまわしが単調で、ストーリーテラーパートが最後に回ってくるのですが、そこのところは「うーん」という感じではあります。
でもそんなことはどうでもいいのです。

「天使の歌声」というキャッチフレーズをホンモノに感じるあの歌声。
天才を見つけた、という言葉どおりの天性を感じる何か。そしてその天性によるピュアさ。
モーツァルト!」の時のヴォルフガング役がそうだったように、アッキーそのものが「天賦の才能」を与えられた人で、だからこそ「天才」役をやらせると、もう役なのか本人自身なのかわからなくなるのです。

アッキーに与えられたものは歌声だけではありません。
舞台に1人で立って空間を埋めるというのも、努力と環境だけでは身につけるのが難しい能力なのですが、アッキーにはそれがあります。

とりわけ「君の瞳に恋してる」のシーンで、セットがカーテンで遮断され、ミラーボールと照明だけの中で歌い上げ、劇場中を圧倒するとあの華。
物語と伴って、彼はホンモノの天才でスターなんだ、と鳥肌モノでした。
このシーンだけでもこの作品は価値があります。
それにセリフまわしはあれだけど、アッキーって動き方はきれいなんですよね。リズム感が良いせいなんでしょうか。他の3人より振りと歌がバッチリはまってるのが素晴らしいです。

なりより往年のヒット曲が次々と流れて、ショーシーンが多く、楽しい!
観客もライブのノリで盛り上がるし、今年1番楽しいミュージカルショーだった予感がいまからしています☺︎

しかし本当にこの作品、中川晃教がいなければ日本版を作れなかっただろうなあと思うと、彼がミュージカル界にいてくれたことに心から感謝したのでした。

モデル気分は味わえる@台湾変身写真館

間違いなく一番読んでいただいている「宝塚ステージスタジオ」の体験ブログ

stok0101.hatenablog.com

なのに、このブログ、体験してからずいぶん経ってから書いたため、記憶が曖昧なところが多いのです。
本当にすみません。

このブログの内容充実のためにもステージスタジオにもう一度チャレンジしなきゃと思っていたのですが、なかなかステージスタジオに好みの衣装がラインナップされない。
そして自分はどんどん年をとっていく哀しさ…。

そんな焦りをよそに「台北食い倒れ旅行」計画のほうが進んでいきました。
ということであまり主張しない同行者たちをいいことに、旅行計画に半ば強引に「変身写真館」を組み込みました。
そんな「台湾変身写真館」のレポートをお届けしたいと思います。

お世話になったのは「Magic's」という変身写真館。
日本語も通じるとのことで、各種ガイドブックでもWEBサイトでも紹介されている有名店です。
予約もWEBサイトで日本から日本語でできました。
今回わたしたち3人組が選んだのがA(2着)コース。
13時スタートで申し込んだら、だいたい終わりの時間は17時だと返信がきたのですが、実際には3人全員が終わったのが15時頃でした。
なので終わり時間は最大長くても、の時間が見込まれていると思います。

雑居ビルの2階にあるお店なので、ビルに入ったらまずエレベーターで2階へ。
エレベーターがあいた瞬間、こんな空間が出迎えてくれて思わず気後れするわたし(^◇^;)


受付でコースの確認があって、配送と料金の説明がありました。
特別仕様のアルバムを作ったり、写真枚数を増やしたりするとどんどん金額があがっていくシステムです。
オプションはつけず、ただ1枚だけツーショット写真の追加を希望したので、配送料込で6500元(約26,000円)でした。
さてこれが安いか高いか。
まあでも日本でこれやっててても「高い!」となって行かないのは見えているので、海外旅行という金銭感覚の狂ったなかでやるのは正解です。

とりあえずお金の話が終わり、配送用の伝票も書いたら次は衣装を選びます。
タブレット2台が渡されたので同行者2人に渡して、わたしは膨大なアルバムから選ぶことにしました。
といってもWEBサイトでだいたい決めていったので、この辺は時間短縮できたと思います。
お店の膨大なサンプルの中から短時間で選ぶのはかなり難しいと思うので、先にWEBサイトでじっくり見ていくことをおススメします。

わたしが選んだ一着目がこちら。

一応同行人と「ポーの一族

花組宝塚大劇場公演 ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』 [DVD]
宝塚歌劇団,明日海りお,仙名彩世,柚香光,高翔みず希
宝塚クリエイティブアーツ

のイメージで一緒に撮影したかったので、バラのドレスにしてみました。
髪型もこれでいいか聞かれたので「金髪は絶対にイヤ。黒髪にしてください」とお願い。
同行人が選んだ衣装の隣の写真がちょうど黒髪のヘアスタイルだったので「こんな風でいいか」と聞かれ、それで了承。

そして2着目がこちら。

これは事前に選んでいたものではなく、同行人が選んだ衣装の次のページに載っていたものです。
太い二の腕が隠れて、胸は強調できて、足も見せられる衣装がいいなと思っただけの理由で選びました。
こちらは髪型もこれでいいよと言ったのですが、これはちょっと後悔しました。
なぜ後悔したかは追って書いていきますね。

衣装を選んだところで、更衣室に案内され、荷物とアクセサリーなどを預け、携帯とロッカーキーを専用のトレイに入れます。
このトレイはほぼほぼ店員さんたちが管理してくれているので、気にする必要はありません。というか店員さんを信じるしかありません。
衣装が準備されると呼ばれ、カーテンで間仕切られているだけのフィッティングルームで衣装をきます。
わたしはガタイが良い+最近中年太りが激しいため、衣装が入るのか気にしていたら、全く問題ありませんでした。衣装は後ろのヒモでしばって調整するので、太い分には問題ありません。
(同行人が二人とも太れないのが悩みというスリムな体型でして、聞いてみたところ、細い方は衣装を安全ピンで詰められるそうです。大は小を兼ねるのです。でもなんとなくそれを聞いたとき哀しい気持ちになりました…)
そしてやはりブラの肩紐はハンパにおろされるので、こちらでも肩ひもなしブラでいかれる方がベターです。

衣装を着たら次はメイクです。
ガイドブックにすっぴんか下地程度で行くがよい、と書かれていたので、最低限の下地メイク&眉で行ったところ、そんなことは気にもされず上からガシガシ塗られました。
そして目に何かされたな、と思って鏡を見てみると、なんか目元が変になっている。
なんだ、この違和感。
と変な顔になってしまった自分にがっかりしつつ考えてみると、どうもアイプチをされたようです。

ちなみにわたしは二重なのですが、さらにそこからのアイプチ
つまり目とアイプチでできたもう一つの二重の間をメイクを埋めていく方式なのでした。
そうです、宝塚メイクが下まつげを無視して顔面にまつげの絵を描くことで目を大きくするのと逆の発想。
眉と瞳の間を狭くすることで目を大きくする方式なのです。
個人的にはこちらのほうがより西洋っぽい顔立ちになるので好みでした。
さらに嬉しかったのが何をどうしたのかさっぱりわからないけれど、顔のラインがシャープに小顔になっている!
宝塚メイクではここは補正されなくて(というかタカラジェンヌに顔のラインのたるんだ人なんていないので当たり前です)、自分の顔面素材にがっかりしたところだったので、これは嬉しい♪

メイクが仕上がったところで、最初にかぶされた髪ネットの上からウィッグがかぶせられました。
そして「自分の顔のどちらの面が好き?」と聞かれました。
そういえば昔、勤めていた会社の社長からわたしはどちらかの横顔のほうがキレイだと言われたことはあったのですが、どちらか全然覚えてなくて、思わず「え!どっちがいいですか?」と店員さんに聞くしまつ。
店員さんは嫌な顔一つせずにわたしの顔を右左と動かし、真剣に鏡で確かめて右と決めてくれました。ありがたい。
ウィッグをセットし、右側がメインとなるように髪飾りをつけてくれて完了。
この時点で想像以上の仕上がりでした。

さていよいよ撮影です。
カメラマンが紹介されて、名前の入ったホワイトボードを持たされて、間違いを避けるためのスナップを取られてからスタジオへ。

スタジオの中は軽く10セット以上のセットが置いてある比較的広い場所でした。
ゴシックホラーからオリエンタルまでカオスもカオス。広いセットだと4畳くらいのスペース。狭いのだと1畳あるかないかでしょうか。
セットはたぶん衣装を選んだときに決まってるのでしょうね。
カメラマンに連れて行かれるままでした。
ポーズは細かくカメラマンが指定してくれ、でっかいライトに照らされてると、モデルさんってこんな気分なのかな、と思いました。

とりあえず1着目が終わって、2着目の衣装変えへ。この時点では肩の羽っぽいのはつけずさっぱりした印象。普通に我ながら似合ってましたし、店員さんも褒めてくれました。(1着目は褒められなかったのでうれしいわたしw)
さらにメイクも衣装に合わせて濃くされます。
黒のアイラインで目全体を囲うという一度やってみたかったメイク。
さらに宝塚メイクで判明したわたしの口の小ささを補足してくれるリップメイクにも感動。
そしてロングヘアのウィッグをつけてみたら、なんかちょっとだけ、本当にちょっとだけですけど「ビヨンセ」風に。
色白&華奢にあこがれているのですが、わたしの素材は真反対にラテンな感じなので、このメイクとこの時点での衣装は割と似合っていたのです。
最初に2枚とも髪型はアップスタイルでいいかと聞かれたのですが、こっちをダウンスタイルにすればよかったなと思っているうちに、アップにされ、三つ編みのウィッグがさらに上にのせられていきます。
そしてどんどん大きくなる頭…。
さあ、ここで元の写真をもう一度見てみましょう。

彼女は頭小さくて、首も細くて長いからこのヘアスタイルが似合っていることに改めて気づきました。
さらに二枚目のつけまつげをつけられて、より濃くなったアイメイクに肩の羽根っぽい袖をつけると、出来上がったのは、見事なショーパブのママ感。
しかも首が短いので羽根の袖で首が埋まる(涙)

まあでもここまで来たらしょうがない。覚悟を決めて撮影です。
クールな感じで取りたかったのですが、カメラマンにはやたらと「柔らかい顔で」と指示される始末。
そして、一枚目でもそうだったのですが、肩を下げる指示を繰り返されます。
これはダンスでもそうなので、やはり美しい姿勢というのは肩がきれいにおりている状態なのだなと再認識。
ドレスと違って動きに自由が効く分、9センチくらいのピンヒールはいたまま片足を上げたりとなかなかの筋力を使いました。
(そして今、元画像と比べて靴が違っていたことに気づいたよ!元画像の靴の方が甲まであってラクそう)
いやマジでエクササイズ程度とはいえ、ダンスやっといてよかった。

撮影終了したら、メイクを落とすかと聞かれたのですが、メイク直し用のポーチをホテルに忘れていたため、つけまつげだけ外してもらうことに。
その後メイク落としにホテルに戻ったのですが、これがアイメイク専用のメイク落としを使ってもなかなか落ちない。
その場で落とされる方はメイクを落とすためのいろいろなアイテムを持参することをおススメします。

終わったら、お菓子とお茶が出てきました。
2時間の格闘でのどカラカラだったのでうれしい!
しかも口紅がおちないよう、ティーカップなのにストロー付(笑)

ということで、最終の写真はまだできあがってきていませんが、すでにいろいろ反省点が。
そしてこの反省を活かして再チャレンジしたい、と思わせるあたり、「台湾変身写真館」侮れません。

【10/26追記】
変身写真館を体験したのは、10/7だったのですが、アルバムが届いたのは10/24でした。


現地では11月中頃と案内されていたのですが、だいたい約20日後に届きました。
「肌とほうれい線以外に修正したいところありますか?」と聞かれていたのですが、「その2つをしてくれるなら充分」と答えて帰ってきました。

ドキドキと開封


いやー、肌とほうれい線をいじってもらうだけでこんなに違うんですね!
でもとりあえず2着目が濃いアイメイクのはずなのに、ほぼわたしの原型を留めていたのがナゾです。そしてこちら側はドアップの写真もありました。
うん、わたし、体型が1番問題なのね、、、と改めて厳しい現実に気づきました(涙)
ちなみにデータはUSBでこんな形で入ってました。


データ自体は1枚10MBくらいあるので、現地でアルバム作らなくてもこのデータでアルバム作るのはありかなと思います。